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「それでもルールを守れない」人の心理~行動経済学から考えるコンプライアンス

近年、企業・団体におけるコンプライアンス違反が社会的に大きく取り上げられる機会が増えています。中には明らかな悪意や不正の意思をもって行われた事例もありますが、多くの場合は「ちょっとした油断」「周囲の空気に流された結果」といった、日常の延長線上で発生していることが少なくありません。

たとえば、社内の備品を私的に使ってしまう、交通ルールを軽視する、上司や同僚に対して不用意な発言をしてしまうといった事例です。いずれも、個々の行動が企業の信頼や職場の風土に少なからず影響を与える行為ですが、当人には強い悪意がない場合もあります。

その背景には、「人間は必ずしも合理的な判断をするとは限らない」という事実があります。本コラムでは、こうした"人の非合理性"に焦点を当て、行動経済学の知見を活かした新たなコンプライアンス教育の方向性をご紹介します。

行動経済学から考える「なぜルールを守れないのか」

マスクやトイレットペーパーの買いだめ騒動を思い出してください。

「供給が止まるわけではない」と頭の中では理解しており、買いだめせず普段通りに購入するのが合理的判断となりますが、実際には多くの人が感情に突き動かされて店頭に殺到しました。

このように、私たちは日常の中で無意識に「非合理的な選択」をしています。コンプライアンス違反も同様で、冷静に考えれば「ルール違反はダメだ」とわかっていても、心理的バイアスや職場の空気、損得の感情により、つい逸脱行為をしてしまうことがあるのです。

◆よくある"非合理な心理"の例

  • 損失回避性:得をするより、損を避けたい気持ちが強くなる
  • 時間割引:今のメリットを優先し、将来の不利益を軽視する
  • フォールス・コンセンサス効果:「みんなもやっているはずだ」という思い込み
  • コンコルド効果:引き返せないという心理から行動を続けてしまう
  • 確証バイアス:自分に都合の良い情報ばかりを信じてしまう

こうした心理メカニズムを知ることで、ルール違反に至る過程を理解し、職場全体での予防や対策に活かすことができます。

組織でコンプライアンスを守るためにできること

「コンプライアンス教育は定期的に実施しているが、どうも形骸化している」「研修をしても実践につながっていない」。こうしたお悩みを持つ組織も多いのではないでしょうか。以下のような取り組みを通じて、"守れる職場づくり"を目指すことが重要です。

◆組織で取り組みたい具体的ToDo

  • 研修内容に「人の心理」を取り入れる
    単にルールや法律を説明するだけでなく、「なぜ人はルールを破ってしまうのか」という視点から解説することで、受講者の理解と納得が深まります。
  • 実際のケースを使ってディスカッションする
    職場で起こりうる事例をもとに、「自分だったらどうするか」「周囲にどのように働きかけるか」を考えるワークを導入します。
  • 「見て見ぬふり」を防ぐ組織風土をつくる
    誰かがルールを破っていると気づいた時に、「言いにくい」「関わりたくない」と思わせない、声を上げやすい雰囲気を作ることも必要です。
  • "べき論"ではなく"共に考える"スタンスで伝える
    「不正は絶対にダメ」と押しつけるだけでは反発が生まれます。実際の職場に即して、一緒に考える姿勢を持つことで、納得感をもって受け入れられます。

ケーススタディで"その場面"を疑似体験する

当社の研修では、以下のようなリアルなケースを用いて、参加者が当事者意識を持って考える機会を設けています。

事例1:備品の私的利用に気づいたら

ある社員が会社の文房具を頻繁に私用で使っていることに気づきました。あなたが備品管理担当者だった場合、どう対応しますか。直接注意する、上司に報告する、本人に確認するなど、対応には選択肢があります。それぞれの行動がもたらす影響を考えます。

事例2:営業中の交通違反を報告しない社員

ある社員が営業中に交通違反で警察に注意されたことを雑談で話していましたが、正式には報告していないようです。「これくらいなら黙っていても問題ない」と考えているようですが、放置してよいのでしょうか。対応の選択肢とその後の影響を考察します。

「その場になったら対応できる」人を増やすために

多くのコンプライアンス研修では、ルールや法律の知識を学ぶことが中心になりますが、実際にルール違反の現場に居合わせたときに「行動できるか」は別の問題です。

当社では、「行動経済学×ケーススタディ」により、現実に即した判断力と行動力を育むことを目指しています。研修を通じて、自分自身がルール違反をしないだけでなく、周囲の違反行動にも適切に対処できる人材を増やすことが、組織のリスクマネジメントにつながります。

コンプライアンス研修~行動経済学を学び、ルールを守れる職場をみんなで作る(1日間)

行動経済学を踏まえ、なぜルールを守れないのかという背景から考えます。

コンプライアンス担当部署任せではなく、職場全員で行うことが重要です。自分事としてコンプライアンスを守るための職場づくりを前向きにみんなで考えます。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 実際にコンプライアンス違反が起きている、またはコンプライアンス違反のヒヤリ・ハットがあった
  • コンプライアンス違反を防ぐため、一般職層も含めて自分事として考えてもらいたい
  • コンプライアンス研修をしても、知識が定着しない、結局ルールを守れていない

本研修の目標

  • コンプライアンス遵守を自分事として捉えられるようになる
  • コンプライアンスに関する基本知識を習得する
  • 行動経済学を学び、ルールを守れない心理を知る
  • 自分の行動を変え、コンプライアンスを守る職場づくりを意識する

>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

【レンタルセットプラン】コンプライアンス詰合せ

本サービスは「コンプライアンス」をテーマとした講座を下記の4本セットでレンタル受講可能なパッケージプランです。

  1. コンプライアンス講座~組織における不祥事防止
  2. 個人情報保護法~事業者編
  3. 気をつけたいSNSの使い方
  4. ハラスメント防止講座~誰しも無自覚に相手を傷つけないために

受講者の法令遵守能力と企業のコンプライアンス風土の構築を目指します。

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コンプライアンス研修  管理職向け(2時間×4回)

忙しい管理職の方々にも取り組んでいただきやすいように、1回あたり2時間で設計されています。

管理職の方が、コンプライアンスの基本知識とコンプライアンス違反を起こさない組織作りについて継続的に学ぶ研修です。

>講師派遣型研修の詳細はこちら

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