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響かないプレゼンテーションの元凶は「ドキュメント脳」にあった

システム導入やデジタルツールの説明をしていると、「正しく説明したはずなのに、相手の反応が薄い」「便利になると言っているのに、なかなか前向きになってもらえない」と感じることがあります。

その原因は、説明内容が「読む資料」をベースに構成されているからかもしれません。本コラムでは、IT人材が陥りがちな「ドキュメント脳」でのプレゼンテーションから抜け出し、聞き手に価値が伝わる伝え方についてお話しします。

「ドキュメント脳」と「プレゼン脳」とは

IT担当者がシステムやツールの説明をする際、機能、仕様、手順、注意点といった「取扱説明書」のような並びで説明することが少なくありません。もちろん、これらは重要な情報です。

しかし、聞き手が最初に知りたいのは、「何ができるのか」よりも「自分の仕事がどう楽になるのか」です。手練れの営業なら、最初に相手の問題意識に働きかけつつ、「このシステムがあればすべて解消してくれます!」と大風呂敷を広げて話すところですが、「奥ゆかしい」IT人材には、なかなかそうした芸当はできません。これは、IT人材のアタマが「ドキュメント脳」になっているからであり、営業のような「プレゼン脳」に切り替えられないことが原因と考えられます。

資料として読むなら、網羅的で正確な説明は有効です。一方、プレゼンテーションでは、聞き手の関心を先に動かす必要があります。まず伝えるべきは、機能ではなく価値です。「この機能があります」ではなく、「月末の集計作業が半日で終わるようになります」と言い換えるだけで、聞き手の受け取り方は大きく変わります。

不特定多数ではなく「あなた」に向けて話す

IT担当者が作るマニュアルや手順書といったドキュメント類は、不特定多数に通用するように作られます。そのため、説明会でもつい、万人に通用するように公平に話そうとしてしまいます。しかし、誰にでも当てはまる説明は、誰の心にも深く刺さらないことがあります。大切なのは、聞き手の業務、立場、不安を具体的に想定し、「あなたの仕事にどう関係するのか」を示すことです。

たとえば、営業部門に対しては「入力項目が増える」ではなく、「商談後の報告にかかる時間を減らし、次の提案準備に時間を回せる」と伝える。管理職に対しては「データが見られる」ではなく、「案件の停滞や偏りを早めに把握し、部下への支援に使える」と伝える。相手の文脈に翻訳して伝えることで、説明会は単なる「システムリリースのご案内」から、「改革を啓蒙するための『布教活動』」に変わるのです。

「順番に話す」よりも「最初に美味しいものを見せる」

ITツールの説明では、どうしても、ログイン方法、メニュー構成、基本操作というように作業の時系列順に話したくなります。しかし、聞き手が最も見たいのは、操作手順ではなく「使うとどうなるのか」です。

プレゼンテーションでは、最初の「つかみ」が大切です。聞き手の集中力が高い、開始から数分の間に一番価値が伝わる場面を見せて惹きつけることが重要です。たとえば、「こんなふうに未対応案件が一目で見られたらよくないですか」「このボタンひとつで面倒な精算作業が完了できるんです」といった、変化後の世界を先に示してしまうのです。そのうえで、「では、それを実現するための流れを説明します」と展開すれば、聞き手は目的を理解した状態で話を聞き始められるのです。

「でも、難しいんでしょ」と言わせたら勝ち

聞き手から「便利なのはわかるけれど、難しそう」と言われると、「一生懸命説明してきたのに......」と残念な気持ちになってしまうかもしれません。しかし、これは相手が関心を持って聞いていた証拠であり、「難しそう」という障害を乗り越えさえすれば、積極的なユーザーとなってもらえるということでもあるのです。価値を感じたからこそ、実行面での不安が出てくる。まさにチャンスです。

このタイミングで必要なのは、さらに機能を説明することではありません。「最初はこの操作だけで大丈夫です」「まずは1日1回の確認から始められます」と、スモールステップを示すことです。導入直後に小さな成功体験を設計できれば、聞き手の不安は徐々に期待へと変わります。

消極的な反応には「論破」ではなく「共感」で向き合う

デジタルツールの提案には、必ず不安や抵抗感が伴います。「今のやり方でも問題ないではないか」「新しいツールの使い方を覚える時間がもったいない」「結局、現場の負担が増えるのではないか」といった反応は、変化を前にした時に人が見せる、ごく自然な警戒心です。そのため、消極的な反応に対しては、正論で押し切るよりも、まず共感を示すことが重要です。

「確かに、今のやり方のままでもできないわけではありません」「今の業務が忙しい中で、新しいことを始めるのは簡単ではないですよね」と受け止めたうえで、短期的な負担と長期的なメリットを整理します。相手を打ち負かすのではなく、一緒に不安をほどいていく姿勢が、活用を進める土台になります。

ただ、そこで引き下がっては「エバンジェリスト」にはなれません。そこを乗り越えてもらったその先に素晴らしい世界があることを伝え、「私たちがしっかりと伴走します」と全面的な支援の姿勢を示すことが、聞き手の気持ちを動かすことにつながるのです。

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情報システム部門の方、組織においてデジタル推進を担う方、システム導入を推進する立場の方に向けた研修です。

IT人材とユーザーの思考のズレを理解し、機能中心の説明から、聞き手の不安や関心に寄り添った価値訴求型のプレゼンテーションへと転換する方法を学びます。システム導入やDX推進を、説明で終わらせず活用につなげたい組織におすすめです。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 「何言ってるのか全然分からなかった」と言われることがある
  • もっと前向きに話を聞いてもらえるようなスキルを身に付けたい
  • 経営層向けの説明の際、冗長な話しぶりにヒヤヒヤすることがある

本研修の目標

  • エバンジェリストの使命について肚落ちできる
  • IT専門家である自分たちとユーザーとの思考のズレが理解できる
  • デジタルに対する不安や拒否感を抱く相手に寄り添った話し方ができる

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