K氏インタビュー【最終回】営業のヒケツ
K氏インタビュー【最終回】営業のヒケツ
K氏
現在、大手IT企業監査役。 銀行でたくさんの勘定系システムを設計・開発。その後、支店長となり営業を指揮し、卓越した数字を残す。スーパーSEであり、かつスーパー営業マンという稀な存在。
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とにかく『はしご』をして会う
ー 銀行時代、急な営業担当への配置転換があったにも関わらず、高い成果を残し、支店長になられたご経験をお持ちですよね。ずばり営業で成果を出すための良い方法があればぜひ教えていただけないでしょうか。
(K氏)
正直なところ、私には営業なんかできないと思っていましたよ。他の営業担当から「トップたる者はとにかく客に会え」という言葉を教わったので、それを忠実に実行していました。「会う」にも自分のペースで会う顧客と、部下に同行し付き合いで会う顧客の2種類ありますが、どちらのパターンであっても、とにかく数を重ねました。
「営業は『はしご』をして会え」という言葉があります。
例えば、こちらのトップが顧客の会社に行けば社長が出てきますね。こちらの課長が行けば、むこうの部長クラスが出てくる。また、こちらの営業担当が行けば、むこうの課長クラスが出てくる。というように、こちらから行く人間によって、むこうも違う立場の人間を出してきます。当然、得られる情報が違ってきます。営業担当が毎日足繁く通えば、情報を取ってこれるというわけではないんです。
営業では、こちらのいろんな立場の人間が『はしご』をして攻めていかなければいけないと思っています。
ある名営業マンの話です。彼はマネージャーになったとき、自身で営業先の社長と話をつけてしまいました。その後、部下に「○○君、あの話はどうなったっけ」とそしらぬ顔で話をふるんです。「いや、なかなか難しくて」と答える部下に、「いいから先方に行って、部長と話してみてごらん」と指示をします。部下が先方に行ってみるとうまく行くわけです。当然ですよね、すでに話はついているのですから(笑)。「取れました!」と喜ぶ部下に、「よかったねえ」と。
本当に"ワル"ですよねえ。
顧客を知り、好きになっていただく
(K氏)
それから、顧客を知ることも大事ですね。いつでも顧客の情報を書き込めるように手書きのノートを持ち歩いている人もいました。顧客の誕生日、子ども、孫などの家族構成、好きなものなど、訪問して新しいことを聞くたびに継ぎ足し、顧客ファイルを作っていました。カレンダーは孫用に3本持っていく、とかね。
こういう細かい気遣いというか、心遣いが営業には重要なんですよ。それが、あなたを大事に思っているんですという証になるんですから。恋愛と一緒です。
もちろん顧客の会社についても調べないといけません。部下には、1ヶ月に1業種勉強しなさいと言っていました。そうすれば1年で12業種は勉強できます。また、会社自体についても、調べて分からなければ、顧客に直に聞いてみればいいんです。
例えば、中小企業の社長は、若い営業担当者に、「創業何年になるんですか」とか、「どんな歴史があるんですか」と聞かれたら、大概喜びますから。
例えば、私の経験でこんなことがありました。地方のローカル経済紙に、機械加工業の会社の社長さんで、自分で会社の掃除をするのが大好きという、変わった社長さんの話が載っていました。そこで、私は、20代の若い部下に、「新聞に載っていたので来てみました!」と言って訪問するように指示しました。もちろん私にそう言われた、という話はさせませんよ(笑)。先方にしてみれば、若い行員がローカル経済紙の記事を見て、飛んできてくれたというので大喜びです。すぐに取引が取れました。もっとも大きな会社ではなかったので、金額は膨らみませんでしたが。
営業は商品でなく、自分という人間で勝負すると言いますが、その通りです。どうやったら相手に好かれるか。
好かれるためには、まず相手を知るしかありません。