人事評価の3つの意義~人材育成につながる評価

人事評価は毎年数か月かけて年に1~2回行われる大きなイベントです。ほぼすべての社員が評価に関わり、少なくない時間を評価のために使います。人事評価の目的といえば処遇を決めるというイメージが強いですが、折角、人事評価をこのような労力をかけて行うのであれば、処遇だけではなく、「人材育成」に結びつけなければもったいないです。

今回は人事評価を具体的にどのように人材育成に活かすか、人事評価制度、評価の仕方について説明していきますので、最後までお読みいただければ幸いです

人事評価とその制度の意義

人事評価は先ほど述べた通り、毎年定期的に行われますが、その意義は以下のように大きく3点あります。

(1)処遇へ反映させる

公正な処遇評価のため、各自が自己評価を行うとともに、その内容を含め、一次・二次評価者が評価を行うため、その作成した評価資料が処遇における基礎データとなります。

(2)人材育成に活用

人事評価制度では、等級や役職ごとに、組織が個々の社員に期待する人材要件(役割、意識、能力)を明確にしています。個々の社員も、その人材要件を通じて、どのような能力を伸ばせば良いか、成長すれば良いかの方向性を知ることができます。評価者である上司にとっても、部下の育成方針の参考となります。

(3)組織のコミュニケーションの活発化

人事評価というプロセスを通じて、上司・部下間の業務における意思の疎通を図り、職場での部下育成環境を醸成します(特に評価面談における部下とのコミュニケーションを通じて)。

業績評価と能力評価について

人事評価は基本的に「業績評価」と「能力評価」で構成されています。それぞれにメリット、デメリットがあり、この2つを組み合わせることで、バランスの良い評価を行うことができます。

業績評価・・・
「職務を遂行し、挙げた業績の評価」 〜業務の「結果」を評価する

図のように、組織のミッション、部、課、チーム・個人とブレイクダウンされ、組織目標とリンクした形で個人の目標を立て、その達成度合いで評価するのが業務評価です。

能力評価・・・
「職務遂行の際に、発揮した能力の評価」 〜業務の「行動特性」を評価する

能力評価は、「相対評価」ではなく、「絶対評価」で行うことが基本です。

人事評価制度導入の流れ

人事評価制度は、評価する側もされる側も正しく理解できることが大前提となるため、公正でわかりやすく、できるだけシンプルなものが求められます。こだわり過ぎてあまりに細かくなると、実際の運用が困難になります。一から作るのは大きな負担となるため、専門家の力を借りることもできます。

人事評価制度導入の流れ

(1)評価基準を策定する

まずは、「業績評価」と「能力評価」それぞれの基準を策定します。どの業務や能力に、どのくらいの比重を置くかは業種や業態、また階層・職責によって異なります。重要なのは評価者ごとにブレが生じることのないよう、数値化された基準を設けておくことです。

業績評価

目標の水準を困難さや組織への貢献、緊急性から「高い」「標準」「低い」等の段階に分け、それに対する達成度を評価していきます。

人事評価制度導入の流れ

能力評価

「指導力」や「調整力」、「企画力」など業務における行動特性を評価項目としてまずは選定します。そのうえで、役職や職種に応じて各項目のウェイト付け及び期待水準はどのくらいであるのかを数値で設定していきます。

評価項目選定においては部署ごとに項目が異なるため、できれば全部署で集まったりヒアリングするなどして、現場に沿った選定を行います。

人事評価制度導入の流れ

なお、現在多くの企業では「絶対評価」が採用されています。社員一人ひとりに対する個別の評価であるため納得が得やすく、その後の育成に対する説得性も高いのが特徴です。特に能力評価は「絶対評価」で行います。

一方で企業によっては、あらかじめ%区分を決めて社員の評価を当てはめていく「相対評価」を採用しているところもありますが、社員の納得を得にくく、説得性に欠けるという課題があります。

(2)評価方法・ルール決める

評価方法

評価方法の多くは「多段階評価」です。一次評価から二次評価へと進み、上司や上長・役員などによるタテの評価を行います。企業によっては多段階評価のほかに、「多面的評価(360度評価)」を加えることもあります。多面的評価は、より公平性を期すために、同僚や他部署の上司、時には顧客などによるタテとヨコの評価です。

さらに、項目別に評価していくのか、あるいはあらかじめ業績評価と能力評価の比率を決め総合的に評価するのかなどについても決めていきます。

評価結果の活用方法を決める

評価結果を出して終わりではなく、それをどう活かしていくかをあらかじめ決めることで、より実のある人事評価となります。ボーナスや昇給・昇格、人事異動といった処遇へどのように反映させるのか、人材育成へとつなげるためどのように面談するのか、本人にはいつ開示するのか等を検討していきます。

評価項目選定においては部署ごとに項目が異なるため、できれば全部署で集まったりヒアリングするなどして、現場に沿った選定を行います。

評価結果の救済制度(異議申し立て)

面談等を経て、最終結果は必ず被評価者にフィードバックします。自身の評価結果に対し社員が納得できない場合、多くの場合は面談の場における話し合いで解決できるのですが、できない場合には異議申し立ても認められます。そのような場合に対処するため、中立な立場で検討する評価再検討委員会を準備しておく必要があります。

(3)策定した人事評価制度の公表

人事評価は定められた期間(多くは1年間)における社員一人ひとりのあくまでも業務行動を評価するものであり、個人の人格や価値観を評価するものではないことを前提としています。そのため、人事評価制度導入にあたっては事前に「評価対象となる行動はどのようなものか」「評価項目にはどのようなものがあるのか」などを公表し、社員の理解を得ておくことが重要です。

評価者に対して

評価者が、制度を正しく理解している必要があるのはもちろんですが、多くの社員には責任が重く難しい仕事です。チームや被評価者の今後に関わることですから、正しい評価のため、評価者研修の実施が有効です。研修のなかで、人事評価の基本を学ぶのはもちろん、ケーススタディ等で実際に評価をしてみることで、具体的に何に注意すればよいのかがわかります。さらに、参加者同士で評価結果をすり合わせることにより、部署ごとに評価のブレが生じにようにすることができます。

被評価者に対して

ただ一方的に評価を受けるのではなく、期初には目標達成のためにどう行動するのか、また評価期間中には目標を意識した行動ができているか等、被評価者自身も評価を意識した行動をとり、面談の際にはしっかりと自身の行動を説明できるようにしておくことが大切です。

上司自身もプレーヤーであったり、日々の業務が忙しくじっくりと部下と向き合うことが難しいため、部下の方から自身の行動については積極的にアピールしていきます。また、もしも評価期間中に結果を出せなかった場合でも、そこに至るプロセスや達成度などの記録をとっておけば、自身の成果をアピールすることができます。

人事評価実施の流れ

続いて、実際に人事評価をどのように実施するのかについて、お伝えしていきます。

人事評価制度実施の流れ

(1)期初面談

まずは期が始まるにあたり、上司と部下で目標を設定します。目標管理シートなどを活用し、目標達成のために具体的にどのような行動が必要か(業績評価)を話し合います。

また上司は部下に、階層・職級ごとに求められる「調整力」や「部下育成」といった行動特性(能力評価)はどのようなものであるのかも伝え、認識をすり合わせておきます。

(2)期中面談

期末面談にいきなりフィードバックをするのではなく、上司はできるだけ評価期間中にも面談を行い、目標のズレや進捗の確認、もし思ったように進んでいないようであればアドバイスをするなど、目標に向けフォローします。

評価期間中に確認することで、結果としてより満足度の高い評価を行うことができ、また部下の成長を促すことにもなります。

(3)評価の実施

評価の基本的な手順は、「①行動の選択」「②評価項目の選択」「③段階の選択」の3ステップです。

行動の選択

当たり前ですが、評価の対象となる行動は評価期間中の被評価者によるものに限られます。評価期間が終了し、評価を実際に行っている際に生じた出来事で評価してしまわないよう、注意が必要です。また、ある部署では親睦会の幹事を評価対象とするが、ある部署では対象としないなど、組織内でブレのないよう統一します。

評価項目の選択

評価項目選択のポイントは、1つの行動事実を2つ以上の評価項目で評価しないということです。何かひとつよい行動があれば、全てがよい行動となってしまい、またその逆もしかりであるためです。

段階の選択

評価者は段階を選択する際、大体これぐらいだろうとつけるのではなく、経営者や二次評価者にも説明できるよう、客観的に行います。

(4)期初面談

評価の結果を被評価者にフィードバックし、今後の改善や来期の目標などを話し合います。被評価者は反省点や改善された点などをアドバイスを受けながら整理し、振り返っていきます。

納得できる人事評価にするために

(1)共通認識

明確であること

評価項目や評価基準、方法や期間など社員にはあらかじめ明確に伝えておきます。これらが曖昧だと、社員は「どのように目標設定するのか」「どのような行動が評価されるのか」が分りません。結果、人事評価そのものや企業への信頼感が低下します。

具体的であること

社員が納得できる、客観的で具体的な評価にすることが大事です。評価には、納得のいく根拠を示し、社員の今後の行動を具体的にアドバイスします。曖昧な評価は、モチベーションの低下を生み、エンゲージメントも劣化させます。

絶対評価であること

相対評価(全体の割合区分でランク付け)を採用する企業もありますが、現在、主流になっているのは絶対評価です。絶対評価は、各社員が設定した「目標に向けた行動」を一定の基準で評価するので、納得性も説得性も高くなります。

プロセス重視であること

数値的な成果だけではなく、プロセスにも注目する能力主義の視点を加えて評価するとよいでしょう。結果以外に目標達成に向けた行動プロセスが評価されれば、評価制度に対する信頼感も増し、エンゲージメントも向上します。

人事評価の心理的エラー

人対人の評価関係では、無意識のうちにエラーが起きやすくなります。評価者は十分に注意して、心理的エラーによる間違った評価に引きずられないことが大切です。

(1)ハロー効果

ハローとは後光のこと。わかりやすい功績や目立った特徴(長所または短所)に影響され、その他の項目まで歪んで評価してしまうことです。「あの人が〜のはずがない」などと思い込んで、評価を変えてしまいます。

(2)第一印象効果

「ハキハキして感じが良い」「地味で暗い」など、第一印象に引きずられて、評価に影響を及ぼすことです。

(3)寛大化と厳格化

評価が甘くなる、または厳し過ぎること。「部下に良く思われたい」「私は自分にも他人にも厳しい姿勢を持っている」など、個人の心情が評価に反映してしまいます。

(4)中心化傾向

評価を標準レベルに集中させ、優劣の差を出さないよう、当たり障りのない無難な中央値に集中する傾向。極端な評価へのためらい、自分の評価に自信がない場合に多く見られます。

(5)論理誤差

「積極的な性格だから、行動力もあるだろう」というように、評価に影響を与えるべきでない要素を、評価項目と論理的関係があると考えて評価してしまう傾向です。

(6)期末効果(近隣誤差)

評価直前に起きた出来事の印象によって、評価に大きく影響を及ぼしてしまいます。「あの時の彼は素晴らしかった」「あのミスは良くなかった」などが思い返される場合です。

(7)先入観エラー

学歴・経歴・年齢・性別などに基づいた先入観で、「すごい学歴だが、かなり歳がいっている」「立派な経歴だから、間違いない」などの思い込みに、評価が影響されてしまいます。

(8)対比誤差

評価者自身を基準として評価すること。評価者自身が強みを感じる項目は辛めの評価となり、逆に弱みを感じる項目は甘めの評価となります。

(9)逆算化傾向

初めに全体の評価を行い、後から各項目のつじつま合わせをします。昇給や賞与、表彰などの予定最終評価から逆算して、評価を決定することです。社内に序列があるときに起きやすくなります。

心理的エラーへの対策

評価者はどのようなエラーがあるのかを理解したうえで、エラーを回避するために必要な対策をとります。

(1)具体的な事実に基づく評価をする

評価者は、社員の日頃の仕事ぶりを記録しておき、具体的な事実のみに基づいた評価を心がけます。

(2)評価基準を明確にする

1つの評価項目の評価結果を、別項目の評価と連動させないことが大事です。「きっと〜だろう」「これも〜に違いない」などの「〜だろう判断」をしないことです。

(3)公私混同しない

普段、気が合ってよく話をする、またはどうも相性が悪い、などの交流や私的感情とは切り離して、企業の目標と人材育成の視点に集中して冷静に評価します。

(4)評価者同士で基準のすり合わせを行う

自分以外の評価者と、あらかじめ認識を共有しておきます。評価後は被評価者の個人情報に留意しながら、評価者同士で交換して2段階チェックで評価を確認します。

(5)速やかに評価する

評価期間に入ったら速やかに評価を始めます。時間をかけ過ぎると、自身の体調や気分、または被評価者の別の側面などの影響を受けやすくなります。

(6)評価者研修を行う

人事評価には、通常のビジネスワークや部下指導とは異なったスキルが必要です。評価基準や評価方法・評価手順などを正しく理解して、エラーのない信頼できる評価制度を運用するためには、研修が必要です。

人事評価の様々な手法

前述の能力評価・業績評価の他、人事評価制度には様々な種類があり、またその評価項目・手法も多岐に渡ります。環境変化を受け、新たな手法も出てきており、企業は業種や業態、規模や人員構成などに応じ、人事評価を策定・改編していく必要があります。

どの制度・手法も、できるだけシンプルな形で適正な使い方をしなければ弊害が起きやすくなります。設計段階で自社の現状・目標の方向性の確認をし、すべての人事評価の目的は「組織目標達成と人材育成」にあることを念頭に置いて検討・選択することが大事です。

(1)年功評価

勤続年数や経験・年齢・学歴などで評価します。人事管理はわかりやすく容易ですが、年功の低い若年層から不満が出やすくなります。経済環境や会社業績が安定成長期で、社員の年齢構成がピラミッド型である場合には有効です。

(2)職務評価

社内の職務内容を比較し、各職務について組織内でどの程度重要かを相対的な価値をもとに決め、それをもとに評価します。職務価値は役職に伴うことが多いため、職位が低いと評価が低くなる傾向があります。また、環境変化が激しい時には、不向きです。

なお、近年では、パートタイム労働者の公正な待遇を実現するため、パートタイム労働者と正社員の職務及び待遇を比較・検討するためのツールとしても、推奨されています。

(3)行動評価(プロセス評価・バリュー評価)

仕事の結果・成果に至るまでの、過程や行動・プロセスを評価します。多くは、業績評価や能力評価と連動させます。過程を細かく設定するため、社員の長期的な育成に有効です。

(4)目標管理制度 (MBO評価)

社員個人が能力開発・職務遂行・業務改善・業績などの目標を立て、期末終了後に自己評価と上司評価によって総合評価するもので、現在の日本では主流です。

(5)コンピテンシー評価

職務上高い成果に結びついた実際の思考・行動を分析して整理し、評価項目に設定します。成果に向けた行動が明らかになって評価しやすくなります。

(6)360度評価(多面的評価)

上司と部下のようなタテの評価だけでなく、同僚・部下・他部署の上司・顧客などによって、被評価者自身が認識していない部分をヨコからも客観的に評価します。

(7)リアルタイム・フィードバック

1年に1回や半年に1回面談を行うのではなく、2週間に1回や1週間に1回など高頻度で部下にフィードバックを行い、記憶が鮮明なうちに改善につなげる手法です。頻度が高い分関係者の負担は増えるものの、環境変化が激しい現代において、注目が集まってきています。

(8)パフォーマンス・デベロップメント

年間を通して頻繁にフィードバックし、そのなかでキャリアプランなども話し合い、成長促進を図る手法です。「評価」と「改善」を短いサイクルで繰り返すため、スピード感をもって成長を促すことができます。

(9)ピアボーナス

近年増えている、社員同士が目標以外の協力や支えに対して報酬を贈りあう評価手法です。評価されにくい職種にも陽があたるため、社員のエンゲージメントが向上します。

(10)ノーレイティング

ランク付けをしない評価制度で、外資系企業の導入が多く見られます。ビジネス環境の急激な変化に対応するために、1 on 1やコーチングで頻繁なフィードバックを行います。

<まとめ>

適切な人事評価制度の運用は大企業にとってはもちろん、中小企業にとっても企業目標の達成と人材育成の効率化を進めるうえで重要な企業活動です。環境が激しく変化するなか、人事評価を単なる処遇を決めるものではなく、人材育成のツールとして活用することがますます重要になってきています。

人事評価を活きた制度とするため、評価者には部下の成長へとつなげるフィードバックや公平性の高い評価を行うことが求められています。また、組織としても人材育成へとつなげるため、より運用しやすいルールの設定や納得性の高い評価実施に向けた研修などの取組みを行って改善していくことが重要です。

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