マネージャーが向き合うべき6つの現場リスク|経営の方法論2

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マネージャーにとって、リスクを正しく捉え、的確に対応する力が必要です。それは今まで通り「確認する」、決まっている通りに「対策する」、といった機械的な行為であってはいけません。リスクを漠然と認識し、対処を怠れば、マネージャーの地位を追われるだけでなく、組織の崩壊、消滅を招いてしまう恐ろしさがあります。昨今の企業をとりまく、事件、事故事例を見ればわかる通りです。
マネージャーとして気をつけるべき6つの現場リスク
私は、マネージャーとして気をつけるべき現場リスクには、大きく6つの種類があると考えます。マネージャーになったら、まずはこの6つを認識し、放置せずに、自身とチームで対処していくことが求められます。
その1.再発リスク~うちは大丈夫か?同じ事故・トラブルは2度、3度起こる
誰もが気づいている「既知のリスク」に加えて、見えていない「未知のリスク」こそ、最大の脅威です。自分の担当する業務に、思わぬ落とし穴はないか?「これって、うちの会社・チームでもありえるかもな」と新聞やネットで報道されている事故、不祥事を、自社業務になぞらえて考える習慣をつけるべきです。
また、恐ろしい話ですが、企業において、同じような事故・トラブルは、同じような形で2度、3度発生するものです。部長級のマネージャーなら、法務やリスク管理部門を訪問し、過去の事故・トラブル・訴訟事例などを教えてもらっておくのをオススメします。また、元役員など、組織の長老に昔話を聞くのもよいと思います。ここまでやると、未知リスクの類推・発見力は大幅に向上します。
その2.放置リスク~面倒を増やして非難される覚悟
「気づいてはいるけれど、つい後回しにしてしまっている」そんな「放置されたリスク」も、いずれは重大な問題に発展します。定期的に、放置されている業務や課題がないかを見直すとともに、なぜそれが放置されているのか、その背景や構造的な原因にも目を向け対策する必要があります。
「放置リスク対策」をスタートすると仕事の手間が増えることが多く、部下であるチームメンバーは「わざわざ面倒を増やすな」という態度を取りがちであり、マネージャーは嫌われるハメになります。しかし、部下のご機嫌を取るのがマネージャーの仕事ではありません。部下に嫌われても徹底対策が大事です。
新任マネージャーが業務の引継ぎの中で疑問を持ち、新任者の勢いで放置リスク対策に取り組み成果を上げることがよくあります。定期異動の効果は、こんな点にも出るものです。
その3.未徹底リスク~口うるさく指示する、徹底して日常業務化する
一見、対策済みと思われている仕事にも、リスクは潜んでいます。「未徹底のリスク」です。事故・トラブルの対策指示が、役員から部長へ、部長から課長へ、課長から現場担当者へと伝わる中で変質し曲解される、対応がその場しのぎで終わることが散見されます。具体的には、事務処理の厳格化などがこれにあたります。「二重チェックせよ」が「慎重にせよ」と曲解され、現場では今までと何ら処理が変わらない、リスク対策が機能していない、なんてことはよくあります。
未徹底な事項は日常業務化し、習慣化することが一番の対策です。日常指導の中で、マネージャーが最低、10回ぐらいは口に出して指示する、時々、徹底的にチェックするなどをやることです。チームで習慣化できるように指導するのがマネージャーの仕事です。
その4.タブーリスク~自ら成果を上げてタブーを破壊せよ
職場によっては、「これは触れてはいけない」と暗黙の了解で、「語られないリスク」が存在することがあります。例えば、古参社員、部長や役員、時には社長が自ら対応している取引や、経理処理などです。しかし、タブーの裏には往々にして重大な課題、横領、不正会計が隠れているものです。
技術は日々革新され、社内外の環境は変化し、社会通念はどんどん厳しい方向に変化します。なので、10年前、20年前から存在する、タブーや暗黙のルールは「正しくはないのではないか」と常々懐疑すべきです。また、自らのチームにおいては、どんな話題でも議論できる、風通しの良さを作り出す努力が必要です。
企業においてタブーを解消することは軋轢を生みます。その最善の対処方法は、新しいやり方で高い業績を上げるか、コストダウンを成し遂げ、マネージャー自らエンパワーして、タブーを破壊していくことです。
その5.知っているつもりリスク~「知ってる」と「対策できている」は違う
認識はしているものの、実際の対策が追いついていない――これが「知っているつもりリスク」です。身近な例で言えば、インフルエンザやコロナなどの感染症対策、残業など過重労働がこれにあたると思います。表面上、対策の重要性は当然視され、見過ごされがちですが、対策の実効性までしっかり検証されているかを確認する必要があります。リスク管理において、「知っていること」と「対策できていること」はまったく別物です。
こういった場合には、マネージャーがメンバーを引っ張って、リスクに対処するまで粘り強く、アプローチすることが重要です。マネージャーが中心になり、メンバーで実行可能な対策を考え、行動するように仕向けましょう。
その6.システムリスク~システムは突然停止する。対策は打っておく
未知リスクの一つともいえますが、特に現場のマネージャーが疎いのが「システム停止リスク」です。完璧なシステムなど、この世にありません。「システムダウンの影響で云々」というニュースは毎日と言っていいほど流れています。明日、自部署でも発生するかもしれません。
対策は現場マネージャーが「システムが止まったら、どうやって仕事をするか」を考え、準備することに尽きます。重要な書類は「紙」でも保存するなど、コンプライアンス部門から許可されていて、現場でできる対策は打っておくべきです。
もし、経営者のみなさんがお読みになっている場合、システム部門のマネージャーにこの疑問をぶつけ、至急対策を検討し、打たせるべきです。未知リスクから放置リスクを招いていないかを心配すべきです。
マネージャーには懐疑する心と、あえて言う、あえて動く勇気が大事
必要なのは、何よりもまず「懐疑する心」です。たとえ現在、問題になっていなくても、「本当にこれでよいのか?」と問い直す姿勢がなければ、新たなリスクには気づけません。そしてもう一つは、「変える勇気」。これまでのやり方を見直し、よりよい方法へと踏み出すには、常に決断と覚悟が求められます。
さらに重要なのが、「非難を恐れない勇気」です。変化に抵抗する声がある中で、「あえて言う」「あえて動く」ことができるかどうか。正しいと思ったことを貫くには、悪く思われることを恐れない胆力が必要です。どうも、われわれは、これらが苦手なように感じます。場を乱さないこと、空気を読むことが美徳とされてきた文化の中で、「問い直すこと」「変えること」に対する心理的なハードルが高いのは事実です。だからこそマネージャーは、その壁を乗り越えていかなければなりません。
リスクを見過ごすことは、善管注意義務違反であり、役員を含む、すべての管理者にとって、重大な服務規程違反です。一方、勇気を持ってリスクに正面から向き合う姿勢は、チーム全体に安心感と、マネージャーに対する信頼を生み出します。同時にマネージャー個人としての、成長の機会となります。こういった経験を経て、人間的成長を遂げたマネージャーは、転職市場でも高く評価されることは言うまでもありません。
マネージャーに必要なのはリスク管理を楽しい活動に変える能力
そして最後に、リスク管理を楽しい活動に変える知恵です。リスク管理は、とかく面倒くさいことが多く、部下・メンバーから喜ばれることはありません。お客さまの安全を守れたことや、お客さまからご評価されたことを、部下・メンバーと共有しましょう。リスク管理の徹底は、お客さまの喜びにつながることを、何度も何度も語り、「リスク管理対策をしていて良かった」と実感させることがマネージャーの役目になります。
また部下・メンバーに自らの事故・トラブル経験、特に「失敗談」を語ることは効果的です。失敗談を聞くのが嫌いな人は稀なので、楽しく印象に残る経験となり、しかも「リスク管理上」有効です。
なお、当然ながらリスクは重要度と発生頻度をかんがみて対処するのが基本であり、「リスク管理」はマネージャーの思い付き順ではありませんから念のため。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。



