人的資本経営は教育、健康、マネジメント|経営の方法論16

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内閣府や経済産業省などが、企業経営の新たな視点として人的資本経営を推進しています。これは、従業員を単なる労働力ではなく、企業の「資本」として捉えるものです。教育訓練や健康への投資が、企業経営の重要な要素であるという見方が広まっています。
インソースは社会人教育企業なので、人的資本の拡充は、他社に後れを取らないように懸命にやっています。その結果、幸いにも、アメリカの評価機関MSCIからESG分野の評価で最高評価であるAAAをいただきました(25年5月30日現在)。
MSCIのESGレーティングは、企業の環境、社会、ガバナンスに関する取り組みや、そのリスク管理能力を分析し、最高位ランクAAAから最下位ランクCCCまでの7段階で評価するもので、ESG投資の世界的な評価指標とされています。今回は私の人的資本経営の取り組みについて書かせていただきます。
投資家の立場から人的資本経営を考えてみると~当たり前のこと
投資家は自らの資金を企業に投資して、できるだけ多くの配当を得ようと考えます。つまり、投資対効果の最大化です。もっと言えば、できるだけ少ない資金で大きなリターンが欲しいと考えるのです。そのため企業は投資家から得た資金を投資して、機械が安定的に動くようにメンテナンスしたり、優秀な新しい機械を買ったりして、生産コストを下げ、利益を最大化させ、投資家にできるだけ多くの配当を支払おうとします。
人的資本経営を投資家の立場から見ると、企業が機械と同様に「人」に投資をして、生産コストを下げ、利益を最大化させ、多くの配当を出して欲しいということです。人間を道具(=資本財)と考えたら、道具を磨いたり、整備したり、新しい優秀な機械を買ってくるのは当たり前。投資家から見れば、人的資本経営はやって当たり前となります。
まあ、話はシンプルです。人的資本経営の結果、売上があがるか、製造コストが下がる(売上総利益を上げる)か、販管費が下がり(営業利益があがる)、利益が増えればいいのです。
教育が大事、その結果一人ひとりの報酬も上がる
ヒトと機械の最大の違いは、機械は、だいたいすぐ一定の成果を出しますが、人は採用しても、すぐ成果を出す人は、まずいないという点です。(時には掘り出し物といわれる人もいますが⋯⋯めったにいません)。できる人ばかりを採用して事業をするのは、まず不可能です。ビジネスを拡大していこうとすると、磨けば光る「人」を集めて育てていくしかないのが現実です。まさに人を磨く行為=マネジメントです。よって、人材育成は人的資本拡充の中核です。
人材を教育すれば、営業活動を活性化し売上を上げる、研究開発を行い新しい商品やサービスを開発することもできます。さらに、業務改善を行って製造コストや販管費を下げることができます。その結果、一人ひとりの報酬水準を上げることができます。また、報酬が上がれば人材が集めやすくなります。教育は自社の事業ながら、改めて大事だと思います。
人的資本拡充のための教育はAs Is/To Be
教育は現状とあるべき姿のギャップを埋める~教育で全社のレベルアップを図る
社会人教育は、現状(As Is)とあるべき姿(To Be)の差を把握し、ギャップを埋める手段です。現状を評価制度やアセスメントで把握し、持つべき知識・スキル・意識、あるべき行動の水準を具体的に定義し、さまざまな教育手段で水準を達成し、業績向上などの成果につなげていくことです。
以前、あるお客様から『人事評価分析の結果、当社は文書作成能力が低いので手伝って欲しい』と言われ、1年間、文書力向上の全社教育のご支援をしました。その後、『文書力が全社で向上し、生産性向上に寄与した』とお聞きしましたが、人的資本経営の好事例だと思いました。ここまでやれば、成果が見えるのだと。
当社での実践的な工夫~テスト、必要最低限の受講、賞与査定項目
研修業ですので、インソースではさまざまな社内教育を実施しています。知識面で現状と、あるべき姿のギャップを埋める教育は動画・eラーニングで実施しています。
Zoomの普及により、社内教育は飛躍的にやりやすくなりました。また、eラーニングはLMS『Leaf』(500万人以上が利用中)を販売していることもあり、社内で積極的に活用しています。ただ、対面ではないのでさぼる人がいたり、参加している「ふり」をする人も出てくるので、少し工夫しています。
- テストの実施
Leafには満点を取らないと終了できない機能があり、これを活用して確実に水準に到達するようにしています - 必要最低限の受講
特定の知識・スキル不足の人のみ受講。研修疲れの軽減 - 賞与査定項目にする
決まった科目を受講しないと賞与が減るというルールが存在
社員の健康を守る~健康経営優良法人認定制度の活用
一人ひとりに目を向けると、心身共に高いレベルで健康であれば、全力で仕事に取り組めるので、企業の生産性は上昇します。健康管理に対する投資は、高いリターンが得られると考えます。人事部門中心に社内でタスクフォースを組成し、健康経営の推進にまじめに取り組んでいます。
経済産業省が推進している「健康経営優良法人認定制度」にも毎年応募しています。これは応募するだけでも意義があります。企業の毎年ランキングが出て、偏差値が公表されます。苦労した結果、「健康経営優良法人」の認定も受けるようになりました。
30代、40代の健康を守る~就業時間内喫煙者の賞与一部カットで喫煙者が10名以下に
喫煙者削減対策に徹底的に取り組むきっかけは、健康経営優良法人認定制度のチェック項目を分析した結果、喫煙者の大幅減でポイントが大きく上がることに気づいたからです。これがスタートになりました。業績向上のためには、社員の中でも稼ぎ頭人材の健康管理は最重要です。当社で言えば30代、40代の管理職、役員層となります。彼らの喫煙、メタボが解決すべき大きな課題となります。
喫煙は本人およびご家族の健康にマイナスの影響を与えるだけでなく、経済面でも喫煙者の負担になっています。2025年2月現在、最も売れているたばこのメビウスが1箱580円なので、1日1箱吸った場合、1年間でたばこ代は21万円にもなります。経済面でも由々しきことです。
熟慮の上、就業時間内喫煙者の賞与を一部カットすることにしました。その結果、当初36名いた喫煙者が、10名以下に激減しました。大きな成果に勇気づけられ、現在は個別栄養指導によるメタボ対策にも取り組んでいます。
人的資本経営は自社のマネジメント力の評価指標
人的資本の重要な評価項目に、社員一人当たり売上高、社員一人当たり営業利益額があります。これを年々増加させることが重要であると考えます。もちろん、市場環境の変化などの要因はあると思いますが、当社のようなサービス業にとっては、重要な経営指標です。
その際、社内のマネージャー全員が、社員一人ひとりの月150時間の労働時間を、いかに効果的に使うかにかかってくると思います。大事なのは、メンバーの1分、1秒を「無駄にしない」ことです。余計な業務を毎日のように見つけ削減する、部下に「指示待ち」時間を作らない、教育と権限委譲で主体的に働いてもらう、DXで業務時間を削減する、トラブル・リスクを未然に防止し、余計な業務を作らない 等々、これらを徹底することがマネジメントではないかと思います。
また、社員のモチベーションを上げ、無理強いするのではなく、気分良く仕事をしてもらって生産性を上げることができれば、マネジメントとしてさらに優秀だと思います。
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研修外商材
人事サポートシステム・LMS「Leafシリーズ」
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。



