株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

コロナ禍の乗り越え方~ピンチは続くよいつまでも|経営の方法論14

コロナ禍の乗り越え方~ピンチは続くよいつまでも|経営の方法論14

※上記画像は生成AIで作成|AIのビジネス活用ならインソースのAI・DX推進サービスへ

多くの企業がコロナ禍で大きな打撃を受けましたが、インソースも例外ではありませんでした。20年の初めは大きな騒ぎにはならなかったものの、4月7日の政府による、7都府県に対する緊急事態宣言で、集合して受講するのが基本の研修事業はトドメを刺されました。

2020年4~5月におけるインパクトが特に大きく、本来新人研修の最盛期であるはずの4月の連結売上高は前年比4割減。5月は5割減で単月赤字は2億円にもなりました。株価も3月23日には年初の半値以下になってしまいました。以下、対応策を時系列で書きます。

1.オンライン研修市場に参入を決断(3月)

年初から「これは研修ができなくなる。ヤバイ」と焦っていましたが、3月2日に全国の小中高で臨時休校要請があった同日、グループ会社のミテモが、オンライン新人研修の提供を開始しました。続いて3月16日、急遽オンライン教育営業部を設立し、4月3日よりオンライン研修の本格実施を開始しました。4月7日の緊急事態宣言を受け、対象地域で4月・5月開催予定の公開講座400日程を、全てオンラインに切り替えました。

2.オンライン研修管理システムを迅速に開発(4月)

対面型研修のオンライン化はZoomのミーティングID送付など、オンライン特有の運用管理の手間が膨大にかかりましたが、社内のITエンジニアたちが、オンライン研修管理システムをわずか2週間で開発し、4月13日から利用開始し、劇的に楽になりました。その結果、4~6月で約1千200回のオンライン研修が実施でき、2万5,000名の受講者に対応できました。

結果的に、わずか1カ月程度で一気にオンライン研修を開始、開始できなければ4月の売上予測は、実に8割減という状況だったので、4割減に抑えられたのは、スピード対応のおかげでした。また、4月以降、株価も上昇傾向に転じました。

3.営業担当者の異動とコストダウン(5~6月)

営業訪問ができないので、40名の営業人員を、一時的に他部門に助勤に出しました。その後12名をコロナ禍の影響を受けにくいLMS提供部署に異動し、少しでも売上を確保するため、非対面サービスを強化しました。

また、1万円以上のキャッシュアウトはすべてチェックすることで、徹底的なコストダウンをはかりました。当社はコスト管理に厳格だと思っていましたが、消耗品費、交通費、不要不急の諸雑費など、驚くほど冗費が出ていました。

4.社員教育で「働く力」を強化(5~6月)

外部に対して研修サービスが充分提供できないので、ここぞとばかり社内研修を実施しました。5~6月には、パート社員から部長級社員まで、全階層において生産性改善を目的とした階層別研修を実施しました。ITスキルでは要件定義力やExcel、PowerPointなどパソコンでする事務作業のレベルアップを行いました。また、決算書の中身まで把握できるように、お金の教育も行いました。

次の成長に向けて~コロナ禍が残した2つの成果

1.eラーニング・動画に本格参入(20年6月~)

eラーニング・動画は、子会社で他社同様の「サブスクモデル」で細々と提供していましたが、本格参入は遅れていました。eラーニングの推進が、研修事業の売上減につながるのではないかと、私を含め、大多数の社員がなんとなく恐れていたためです。しかし、売上が厳しく、何より、コロナ禍で必要とされている非対面サービスであり、背に腹は代えられず参入しました。

追い詰められていたので、通常時では絶対にあり得ないことをやりました。それは「eラーニングの売り切り」です。目先の売上のために、コンテンツビジネスのタブーを犯したのでした。一度インソースの売り切りeラーニングを購入すれば、劇的に廉価に教育ができます。

しかし、実際には研修サービスと、動画・eラーニングが食い合うことはありませんでした。どうも短時間のeラーニングと、じっくり受講する研修は別物だったのです。結果的にeラーニング・動画売上は「売り切り」開始前の10倍以上になり、グループ全体売上の1割弱を占めるまでに成長しています。また、急遽拡大したため、さまざまな部署からの寄せ集めチームでスタートしましたが、彼らは本当に頑張ってくれました。この事業は、新たな人材発掘の機会にもなりました。

2.研修コンテンツ開発体制の強化(20年4月~)

研修売上がない中、コンテンツ開発チームが暇にならないように、新しい研修開発を徹底的に推進しました。コロナ前までは、顧客の課題を伺った後に、研修を開発するスタイルでした。しかし、新しい仕事が入ってこないので、社会課題から仮説を立て、新しい研修を開発し、実際のお客さまごとに、アジャストしていくスタイルも取り入れました。

たっぷりと時間が取れるので、開発メンバーも鍛え上げました。その結果、21年9月期以降、研修ニーズが戻って来る中で、在宅勤務、DX人材育成などをタイムリーに提供でき、業績回復をリードしました。

最終的に、20年9月の決算では売上、営業利益共に落ち込みましたが、何とか黒字を死守することができました。

「好況よし、不況なおよし」松下幸之助翁の言葉~コロナ禍後の新課題

21年9月期は売上が45%、22年9月期は25%と大きく成長しました。この言葉通り、社会情勢の大きな変化をチャンスと捉え、需要が一気に伸びるタイミングで業績を伸ばし、不況から好況に突入したのです。ただ、23年以降、15%成長は続けていますが、コロナ禍直後と比べると成長率は鈍化しています。また、コロナ禍後の好況のゆるみを正常化する絶好の機会のようです。「不況なおよし」この言葉を噛みしめつつ、がんばるしかないようです。

私のピンチの乗り越え方~ピンチの状況打開に没入する

ピンチそのものの恐怖に支配されるのは最悪です。「失敗したらどんな辱めを受けるんだろうか?」とか、「キャリアが終わった」と考えるのは止めておくべきだと思います。まず、冷静に状況の分析と、今できることは何かを考えるのが最初でしょう。

「失敗」は短時間で消える、少なくとも忘れられる

私はインソースを経営する上で、今思い出しても数えきれない、数々の失敗をしてきました。経験から申し上げれば、ピンチを乗り越えられず失敗しても、非難される時間は想定より短いものです。人は他人にそんなに関心がありません。失敗は想定以上に早く忘れ去られます。

そもそも、そんなに評価されていない

また、よく考えれば、もともと私は周囲から高く評価されていたわけではありませんでした。そうです、下がるほどの評価はないのです。ピンチを乗り越えられなくても、生きている限り、挽回可能です。悩んでいるより前進すべきと考えています。

挑むべきは創造的破壊の実現へ~生成AI、組織強化、教育強化でイノベーション実現

成長を再び加速させるためには、経済学者 ヨーゼフ・シュンペーター が提唱した、創造的破壊をイノベーションで実現することが必要です。シュンペーターは、イノベーションを5類型で定義しています。インソースにあてはめると右側のようになります。

  1. 新しい財(製品・サービス)の創出:生成AI活用による、従来にない価値を持つサービス
  2. 新しい生産方法の導入:生成AI活用による、業務変革
  3. 新しい市場の開拓:これまで取引のなかった顧客層・地域への展開
  4. 新しい供給源の獲得:新コンテンツ調達ルート確保、新しい提携先確保
  5. 新しい組織・産業構造の実現:採用強化、教育強化によるインソースの強靭化

人材確保・育成と生成AI事業のスピードアップが重要です。急がなければなりません。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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