株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

業績の上げ方~再現可能な方法|経営の方法論6

業績の上げ方~再現可能な方法|経営の方法論6

※上記画像は生成AIで作成|AIのビジネス活用ならインソースのAI・DX推進サービスへ

リーダーにとって、業績を上げることは一番の課題です。特に売上を上げることは、どの企業においても最も重要なことです。私も、毎年、毎月、そして今日も業績拡大には苦労しています。

幸いなことに、インソースは創業時の売上ゼロから、コロナ禍の2020年を除いて、22年間増収を続け、現在、売上は146億円を超え、営業利益も45億円を超えています。爆速とはいきませんが、着実に業績を上げる方法、再現可能な定石があると私は考えています。次に示す業績改善4つの手順こそ最善手です。

業績改善4つの手順

  1. 業績悪化の理由を直感で判断するのをやめる
  2. 今までと違った見方で売上数字を見る
  3. 弱点を見つける
  4. 弱点を即座に一つ一つ解消していく

手順1.業績悪化の理由を直感で判断するのをやめる

どんな人でも、業績が悪い時、その原因をつい、社内外の環境変化や営業リーダーなどの人的要因、自社商品の弱さ、と直感的に決めつけてしまうところがあります。しかし、「××のせい」という大雑把な問題把握は、小さなチャンスを潰す元です。また、業績は稀に、大型新商品やM&Aの成功で、ドラマチックに回復することがありますが、都合の良いタイミングで実現するのは、神に選ばれた幸運かつ天才経営者しかできないでしょう。

ごく普通の私は、直感を廃し、改めて売上数字を分解したり、取引1件1件の確認や、営業担当者の一日の動きのチェック、一週間の全社の動きの確認、自らお客様へ訪問し現状確認するなどして、課題や改善の余地を探します。

改善点はゴキブリと同じ、1つみつけると300件は同様の事象がある

最近の例では、一つひとつの取引金額を確認すると、難易度の高い研修と比較的容易な研修では開発コストが異なるのですが、同一金額で受注し、売上・利益確保が疎かになっていたので、開発難易度別のサービス価格表を改定しました。

また、営業担当者のキャリア別の顧客訪問件数を調査すると、ベテラン営業担当者の訪問件数が月間わずか20社(1日1社)であることに愕然とし、毎週訪問件数をチェックすることにし、行動を促しました。

改善点を1件見つければ、だいたい全社で300件は同じようなことが発生しています。よって、小さな業績改善対策を実施しても成果は300倍になります。環境や人のせいにしている場合ではありません。

手順2.今までと違った見方で売上数字を見る

営業リーダーには売上を分解し、直して欲しいと考えます。今までと違った切り口や角度から売上を分析して欲しいのです。「売上なんて、何度も何度も穴のあくほど見ているよ」とおっしゃる方もいると思います。でも、顧客ニーズが変化しているのに、売上数字の見方や集計方法は10年ぐらい変わっていないということはよくある話です。

分解する、数え直す、再計算する

当社では創業以来、23年間、売上集計が講師派遣、公開講座など提供手段別でした。講師派遣も公開講座も過去3年間、15%程度の成長率でしたが、新人・採用分野、経営支援、人事部支援など、サービスドメイン別の成長率は7~46%までばらついていました。また、サービスドメインが同じでありながら、提供手段が異なるためシナジーが出ていない事例が散見され、びっくりするぐらい多数の課題が浮き彫りになりました(図1 サービスドメイン別業績)。

図1 サービスドメイン別業績(インソース25年9月期 第3四半期(累計)連結業績説明資料 より)

サービスドメイン別業績

数字は手で拾う~1,000枚ぐらいの伝票チェックなら1日でできる

こういった話をすると、「システム部門が、多様な売上数字の資料を作ってくれない」とか、「経営企画や営業企画部門が、数字を出したがらない」とか、おっしゃる方が出てきます。

そういった時は、労を惜しまず、伝票一枚一枚から数字を拾って「数え」「再計算」し、改善点を把握すべきです。銀行のSE時代、システムトラブルの際、1万件の数字チェックを1日で実施するようなことを何度もやっていましたし、銀行の窓口担当時は500枚ぐらいの手形チェックは、20分ぐらいでやっていました。1,000枚伝票があっても、1日あればチェックできます。要はやるかやらないかです。すぐやることは、先ほど申し上げた成果300倍への近道です。

手順3.弱点を見つける

人は誰もが、成果を誇りたいものです。がんばった事を糧に次に進むのは悪い事ではありません。とかく営業担当者は自分の業績を誇大にアピールする一方、弱点や失敗を隠し、軽視しがちです。しかし、誰でもできる業績向上のカギは、弱さ探し、悪さ探しです。

成果を誇るより、弱い点や課題を沢山、例えば30個、みつけ出し、ひとつでも解決し、その成果を全社に共有する営業担当者を育成できれば、業績向上は簡単に実現できます。自分の弱点から語れる営業担当者が増えれば業績向上は容易でしょう。

リーダーが勝ちにこだわると同時に失敗を認め、克服する努力を見せる~米軍に学ぶ

インソースには、米国海兵隊に取材し開発した管理職研修があります。その中で、米軍には「将軍の失敗を二等兵まで共有するカルチャーがある」ことを伝えています。勝利のためには自らの弱さを認め、失敗を語り、その情報を共有し、チームで克服しないと、まず勝てないという共通理解があるのです。

こういった共通理解を醸成するためには、まず、リーダーが徹底的に、勝つことにこだわることが重要です。次にリーダー自らが失敗を率直に語り、克服するために努力している姿を見せることだと思います。率先垂範でカルチャーを作るのです。カッコ悪い話ですが、私は常に間違いばかりで、結果的に朝礼朝改になり、率先垂範せざるを得ない状況に陥っています。その結果、自ら弱点を語ってくれる部下がとても多くなっていると感じています。

分析と課題解決の実際

インソースでは、コロナ以降、5期連続で売上成長を続けていたので見逃していましたが、成長率を年単位で見てみると、21年は45%、22年は25%の大幅増収になった一方、ここ3年間は15%程度の増収に留まっており、問題があったのは明白です。多くの株主からはお叱りを受けています。(MBOする上場企業の経営者の気持ちがわからないでもありません)

インソースでも担当者ベースの売上を企業規模、販売先業種で見直してみたところ、見たくもない事実を突きつけられることになりました。数字の見方を変えることで、大きな弱点が発覚したのです。(図2、図3をご参照ください)

図2 業種別業績(インソース25年9月期 第3四半期(累計)連結業績説明資料 より)

コロナ以降、売上が製造業に偏っており、得意分野であったITサービス業、官公庁の売上の伸びが鈍化、ほかにも過去の成長分野である学校法人、病院など医療機関向け売上が、鈍化している

業種別業績

図3 顧客セグメント別業績(インソース25年9月期 第3四半期(累計)連結業績説明資料 より)

既存客の売上増が成長をささえている一方、新規客、特に中堅中小企業の顧客流入が鈍化している

業種別業績

手順4.弱点を即座に一つ一つ解消していく

  • 鈍化している業種の営業体制の見直し
  • 新規顧客の流入が鈍化=新人営業の提案力を強化(教育)
  • 販促用のWebページの増加=300ページほど追加

分析の結果を受けて、迅速に弱点対策を実施しました。早速、ITサービス業、官公庁の営業体制の見直しをしたところ、官公庁売上は、この四半期で増加に転じてきました。また、新規顧客の流入が鈍化した理由は2点あり、まず1点目は入社1年以内の営業担当者の売上成長が、遅くなっていることが理由であると分かったので、大至急、提案力アップの教育強化をスタートしました。

さらに中期目標として、生成AI活用の提案支援システム開発に着手しています。また、2点目は販促用のWebページの、ページ数が少ないことが原因であったので、拡充方針を取り、四半期で300ページほど追加したところ、新規客からのお問い合せが、目に見えて増加しました。結果的にWeb拡充が最速で成果が出ました。

ただ、インソースの営業担当者は教育コンサルタントでもあり、一定期間の実務経験が必要ですので、急いで教育していますが、強化にはもう少しかかりそうです。いつもながら、教育は早めが肝心だと感じてます。

当たり前を着実にやる「凡事徹底」「オペレーショナル・エクセレンス」

イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏の著書『凡事徹底』にも、慣れたやり方の課題に気づき、毎日毎日僅かずつでも変えていく、気づく人になりなさいという内容のことが書いてありました。まさにおっしゃる通りだと実感しています。また、経営学用語では、このような業績拡大手法を「オペレーショナル・エクセレンス(Operational Excellence)」と言うそうです。

インソースの場合、「オペレーショナル・エクセレンス」は徹底した標準化です。常に新しい人材が加わるので、仕事において誰がやっても同じ結果が出るような仕組みを構築することに腐心しています。標準ルールは策定するだけではダメで、毎日、毎日徹底を呼び掛け、チェックし続け、数ヶ月、数年を要します。でもやれば効果絶大です。もっとも効果的だったものは、ファイル名の共通化です。創業当初より、ファイル名の標準ルールを決めたことです。

ファイル名:251221海兵隊式マネジメント研修(〇〇産業様)(舟橋作成).pptx
       日付 → 内容 → お客様 → 作成者

こんなささやかな標準化ですが、新任の営業担当者でも容易に提案書を探すことができ、提案コストの削減に絶大な効果を上げています。業績向上にお悩みであれば、営業担当者でなくても、ぜひ試してみてください。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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