采配力~役割分担を考える|経営の方法論9

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役割分担をして仕事をすることは、古代中国、秦朝にさかのぼる官僚制度の中で、確立され発展してきました。我々は小学生のころから「いきもの係」や「給食係」といった役割を与えられ、小さな仕事をしながらやり方を学んできました。
役割分担は生産性と効率を高める方法として、まさに基本中の基本です。ただ、重要な課題を今、片付けようとする際、担当業務や役職ばかりに囚われるとうまくいきません。ここはマネージャーの采配力が求められる場面です。
システム部門でのトラブル対処で学んだ「采配力」
私が所属した銀行のシステム開発部門には「システムは作らない、直さない」という格言がありました。新しいシステムを作れば必ずトラブルが起こり、一部修正すれば大きな事故につながるがゆえに、この格言ができたのだと思います。まさに至言。
そんな状況ですから、トラブル対応は日常業務でした。定期的に、誰かが担当するシステムがトラブルに遭遇しており、周囲のメンバーが現状告知、原因調査、修正、テスト、緊急V-UP手配、等々を実施します。大きなトラブルの時は、取締役システム部長が自ら現場指揮をし、総勢1,000名以上のメンバーが自分の業務に関わらず、対処を分担していました。
この戦場の様な現場で学んだのが、重大な事態では「担当者任せにしない」ことです。管理職であっても、優秀な担当者であっても、一度に対処できる業務は1つであり、問題の解決を急ぐのであれば、マネージャーが采配し役割を決め、パラレルに仕事をしていくしかないということでした。
インソースでの実践~重要だけど面倒なことは全員で実施する
「業務遂行におけるグレシャムの法則」が当社でも働き、過去からある無難な業務が優先され、本来優先すべき難しい重要業務が、なかなか実行されない現象が発生します。また、1つ1つの部署のメンバーは、そう多くはないので、重要な課題を一部署でこなそうとすれば、時間がかかりすぎます。
そのため、定期的に全社や多数のメンバーで、一緒にひとつの課題を解決しようとする取り組みを実施しています。具体的には、マーケティング上、極めて重要な顧客データベース整理を社員全員で実施することなどを行っています。数名の担当者では、できない規模の整理が可能になります。
マネージャーは采配力を発揮して、的確な業務分担を指示すべき
マネージャーの中には、いちど決めた業務分担を崩すのを、どうも嫌がる人が多いように思います。部下が他者の仕事を手伝うことや、他者に自分の仕事を任せることに不満を持つのを恐れたり、問題を早く解決したいと考えていないからかもしれません。日常業務であれば、時間をかけて分担を是正していけば良いですが、緊急時はそうはいきません。
どんな組織でも2割ぐらいの余裕はある
「今の仕事でいっぱい、いっぱいです」と言う人がいます。これは事実でしょう。その人は忙しいのです。しかし、全員常にフル稼働で忙しい組織はまずありません。私の経験で申し上げれば、だいたい組織には2割ぐらいの余裕があります。特定の人が常に暇だったり、人によってタイムラグはあるが余裕があったりするものです。マネージャーは各メンバーの繁閑を把握し、重大な仕事は早めに分担指示をすべきです。
特定の人への業務集中は「心身の不調リスク」も存在
むしろ緊急、重大な仕事が特定の人に集中することがダメだと思います。課題の解決に時間がかかるのは当然として、担当者が心身の変調をきたすリスクもあります。こういった点も考慮すべきです。後から考えれば、メンタル不調の原因が「担当者任せ」ということが多い気がします。
役職でなく、実践力で抜擢する~緊急時は日常の序列に囚われない
人の問題解決能力は基礎力、経験、意欲の掛け算でできており、個人差が大きい事実をよく認識する必要があります。組織においては、高い役職でも能力の低い人もいれば、役職のない若手でも能力の高い人もいます。よって、日常の序列を越えて、問題解決能力に応じて重要な仕事に抜擢するのが早道です。
采配力のために必要なこと~部下の仕事を知る、交差訓練
まず、部下の仕事をよく知ることです。「私は重要な仕事をやっており、手が離せません」と言う部下も出てきます。もっともなこともありますが、後回しにできる場合も多いものです。日常から部下の仕事内容、仕事の仕方、納期などをよく知っておけば、強く的確な指示ができます。
次に重要なのは、担当替え、交差訓練を日常的に行うことです。仕事がうまく回っている状況で、担当替えや、役割分担を越えた交差訓練をやろうと考えるマネージャーは、まずいないと思います。緊急時に迅速に動けるためには、意識してこれらを行う必要があります。また、多様な業務を経験させることは、部下のキャリア開発にもなります。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。



