株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

利害関係者の損得に配慮する~仕事を進める基本|経営の方法論8

利害関係者の損得に配慮する~仕事を進める基本|経営の方法論8

※上記画像は生成AIで作成|AIのビジネス活用ならインソースのAI・DX推進サービスへ

マネージャーになると、会社や上司からの指示は抽象的であいまいなものになります。どうやってやるか?を細かく指示されることは、まずありません。なので、自ら目標や、やり方を考えて、実行していく必要があります。

その際、独りよがりで目標に向けて邁進しても、必ず失敗します。まず簡単な仕事は与えられないのです。難しい仕事をうまく進めるためには、関係者の利害への配慮や気配りが、成果を大きく左右します。

値上げは1年前から準備する~アミューズメント施設の配慮

昨今、円安、原材料高による値上げラッシュですが、値上げは難問です。値上げにより増益になっても、大きく客離れを起こしては元も子もありません。そんな、難しい値上げに関して、なるほどなと思ったことがありました。

顧客のその先にも配慮する~修学旅行生の楽しみに想いをはせる

あるアミューズメント施設の偉い方から聞いた話ですが、入場料の値上げをする際、旅行代理店への通知は1年前に実施するそうです。修学旅行は1年前から計画するため、子どもたちが予算不足で訪問できないリスクを避けるのが理由です。直接のお客さまである旅行代理店、その先の修学旅行生に早期に調整時間を提供することで、客離れを最小限にしつつ、値上げによる増益も確保する。これはすごい配慮だと感心しました。

損得リストを作る~利害関係者を洗い出し、彼らの損得を考える

さきのアミューズメント施設の値上げ対応がうまくいったのは、旅行代理店の事情と、子どもたちの行動や心情が整理され、認識できていたからです。そこで、私がちょっと複雑な調整をしなければならない時に作っていた損得リストを使って、本件を整理してみました。

関係者 損(避けたいこと) 得(希望、気持ち)
アミューズメント施設 値上げによる客離れは困る。また、値上げによるもろもろイメージ悪化も困る すぐに値上げできないとしても、値上げの結果、収入や利益を増やしたい
旅行代理店 値上げで施設訪問がなくなると、他社に修学旅行を取られるかもしれない 自社にクレームが来るのが避けられればうれしい
学校 急に入場料が上がると追加費用を生徒から徴収する必要が出てくる 学校にクレームが来るのが避けられればうれしい
修学旅行生 楽しみにしていた施設にいけないのは残念。追加料金は困る この施設はどうしても訪問したい

早期に値上げを伝え、旅行代理店や学校に、修学旅行の内容を調整する「時間を提供する」ことで、客離れやイメージ悪化リスクを避けつつ、難しい値上げを実現できたと考えます。

損得リストを作るために~3つの方法論

こういった損得リストを作る際は、企業や組織の損得や気持ち、そして利害関係者個人の損得や気持ちを考えなければなりません。多くの人と関わる仕事をしたことがないと、ちょっと難しいものです。こういった発想をするための方法論を簡単な順に考えてみました。

方法論1:いろんな人の話を聞く~課題、価格、ビジネスモデルを頭に入れる

過去にいろんな上司に仕えてきました。また銀行員をやっていたので多数の企業を訪問しました。また、研修業という仕事柄、数千人、数万人の悩みに接してきました。その中で学んだことが発想のベースです。

話を聞くことは難しくないので、マネージャーのみなさんはぜひ、今日からでもスタートしてください。その際、業界の課題や問題、さまざまな製品の価格や販売状況、どんな風にビジネスをやっているのか、など伺ってください。これが損得判断をする上で役に立ちます。

「どんな業務の流れでお仕事されているのですか?」と切り出すと教えてくれる

業務フローと登場人物を頭の中で整理しつつ、上記のように切り出して、話を聞いています。ほとんどの人は自分の業務について語るのが好きなので、楽しく聞かせてもらっています。

その際、プロセスにおける課題や面倒なこと、面白い点や、差し障りない範囲で価格や原価率の変化など、いろいろ聞いています。ビジネス雑学的な知識を頭の中に貯めることを続けていくと、損得リストがだんだん作れるようになっていきます。

方法論2:社外の人とビジネス交渉をする~身にしみて損得を学ぶ

可能であれば、仕事で社外の人と何らかの交渉をすることが、発想の近道になります。世の中には多様な組織や人がいます。

予算が多い企業、予算がない組織、きっちりした人、緩い人、厳しい人など、多様な組織や人と真剣にビジネスを通じて交渉することで、それぞれの損得が身にしみて学べます。

事前準備が大切~真剣なビジネス交渉のコツ

社外の人とビジネス交渉をするコツは、自分なりに事前調査をすることです。ネットや生成AIで市場価格や業務の難易度などを調べておくことです。加えて、「物知り」の知り合いを3名ぐらいは作っておいて聞いています。インソースにも物知りな元役員がおり、事業の拡大に大いに貢献していただきました。今も「物知り」な方と知り合うのが楽しみであります。

交渉においては、当方にとって最高の状態と、妥協できる最低の状態の2つをイメージしておきます。当然、最高の状況はまず実現できないので、この間で妥結するしかないですが。

方法論3:新しい事にチャレンジする~無理難題を実現しようとして人に揉まれる

「新しいことをやる」のは、利害関係者にとって、ほとんどの場合、無理難題であり、ある種の攻撃に映ります。なので、新しいことをなんとか実現しようと、勇気を奮ってさまざまな人にアプローチして反発されたり、相手にされなかったり、交渉しても話がかみ合わなかったりする中で、考え、悩み抜く中で、発想が洗練されてきます。そして、行動力がついてきます。

これは、人を選んで伝えるべきことで、全員がやらなくても良いと思います。でも、心身がタフなマネージャーは、自分とチームや組織の将来を拓くために、チャレンジして欲しいと思います。どんな老舗企業であっても「新しいこと」ができないと続きません。

損得への配慮は公務員、教師、フリーランスにも必要とされるスキル

損得判断は何も企業人だけに必要とされているものではありません。組織や人が存在する限り、誰にでも必要とされるスキルです。ぜひ、公務員であっても、教師であっても、フリーランスでも身につけていって欲しいと考えます。

私の父は用地買収などを担当する地方公務員でした。「法律などで規定されている職務権限を踏まえた仕事だが、『法律だから、決まったことだから』では、住民の皆さんはまず納得しない。地域の気持ちや心情を踏まえ、何か役に立とうと思って接しないと何も進まない」と、昔よく言ってました。民間で働く私となんら変わらないと、今思います。

また、フリーランスの皆さんにも、よく仕事を依頼することがありますが、頼りになる方々は同じコストで期待以上の成果を出そうと、さまざまな提案をくれます。「そこまで考えてるんだ」と感銘を受けます。まさに損得配慮のプロですね。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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