株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

創業ピンチをどうやって乗り越えたか|経営の方法論13

創業ピンチをどうやって乗り越えたか|経営の方法論13

※上記画像は生成AIで作成|AIのビジネス活用ならインソースのAI・DX推進サービスへ

インソースが営業開始してちょうど一年後、2003年12月、年末に預金口座には3万円ぐらいしかなくなりました。12月の月次売上はわずか150万円、借入金は1億円、社員4名をかかえ、絶体絶命な状況に陥りました。

なぜこんな窮状に陥ったのか理由~思い返せば

1.そもそも見通しが甘かった~自分の力を過信した

こんな窮状に陥ったのは、そもそも私の見通しが甘かったからにほかなりません。大企業で億単位の仕事をしていた意識が残っており、まあ4名位の社員は養えるのでないかと甘く考えていました。

僅かな額であっても、創業間もない企業が売上をつくることはすごく難しいことが良くわかっていませんでした。会社を維持するには自分のお給料を含め人件費、家賃、電気代、創業資金を借り入れで調達していれば、その返済金と想像以上にコストがかかります。売上以上の支払いがあれば、会社は持たないという当たり前もわかっていませんでした。

2.会社の体裁を整えるのに資金を使いすぎた~必要なもの以外は導入しない

インソースを会社らしくするために様々なものを揃えました。今でも社長室で使っている机や椅子などは中古で揃えましたが、コピー機やシュレッダーは、銀行時代の取引先から新品をリースで購入しました。「会社にはコピー機があるもの」と安易に考え購入しましたが、わずか数名の会社にはオーバースペックでした。

当時のリース料が5万円、急に返す訳にはいかず、返却資金が貯まるまで数年間、リース料を払い続けました。結局、創業1年目は「会社ごっこでしかなかった」を象徴する出来事でした。

3.稼ぎ手は私中心

売上は私のコンサルティングが中心であり、これ以上増えていきそうにありませんでした。会社であるならば、全員で取り組んで業績を上げていける「事業」でなければならないと気づいていませんでした。

倒産危機からの脱出と反省を踏まえた対策

12月末に、窮状を訴える1千件のメールと、この方々なら仕事をくれるかもしれないと考えた先10社に営業電話をかけ、コンサルの仕事をなんとか2件獲得し命脈を保てました。

1.販促の強化~名刺データベースを作りセールスメールを打った

創業直後から名刺情報を活用した簡単な顧客データベースをすでに作っており、危機の脱出にはこのデータベースに救われました。危機回避後は一層メールによる販促を強化しました。メールの内容は、文才のある大学院生のアルバイト社員(今では執行役員に出世)に書いてもらいました。セールス臭くない、軽妙な内容で好評を博し、今でも続けています。

ピンチの時は販促メールを打って切り抜ける

この経験から、顧客データベース作りは絶対必要であり、売上不振時はメールを活用して支援してもらうのが、手軽な割に効果が高いと思っています。何と言ってもピンチですから「期末なので、ぜひご支援ください」と素直に窮状を訴えるのもありだと思います。支援できる人は支援してくれます。カッコ悪いですが、売上優先で会社と社員を守りましょう。

創業から少したった会社だったら、社内に1万枚ぐらいの名刺はあるものです。この名刺から簡単なデータベースを作って、自らセールスメールを作って送ってみるのです。最近は高性能のOCR機能付きスキャナーもあるし、名刺登録サービスが、1件50円ぐらいで名刺をデータベース化してくれるので、1万枚だったら50万円かかりますが、試してみる価値はあると思います。

メールの内容は、新商品についてでも、最近の販売事例でも、「期末なので、ぜひご支援ください」でも良いと思います。私の経験では、初めて1万通の販促メールを送ると、200件程度の返信が期待できます。「頑張れ」や「ご無沙汰ですね」という返信もありますが「こんな提案が欲しい」と商談に結びつくものが、20件はあるのではないかと思います。このデータベースは今ではPlantsという名前を持ち、20万件以上のお客様情報が入っており、インソースの中核システムに発展しています。

2.Web強化~全員でWebサイトを作成

危機の後、少しでも売上を確保しようと皆でWebサイトを作りました。前述のようにメールを出して、Webを見てもらい、商談の機会を得るという方法を編み出しました。いわゆるインサイドセールス体制を20年以上前に確立できました。これは今でもやっていますが、売上不振がなければやっていなかったと思います。

インサイドセールス体制は営業力増強に有効

営業担当者以外がWebを作り、セールスメールやDMを送ったりするのがインサイドセールスです。全社で営業活動を担うことで、営業戦闘力が増強されるだけでなく組織の一体感も出ます。実際、Web制作は製品やサービスをよく知っている、研究開発の担当者のほうが得意だったりします。また、経理の担当者が顧客と親密なこともよくあり、経理担当から声をかけてセールスする方法もあります。全社営業体制があれば売上挽回も早まります。

3.営業人材を中心に採用~皆に営業マインドがあれば乗り越えられる

この危機を乗り越える際、幸いだったのは、営業活動をやりたくないメンバーがおらず、みんな売上確保のため、動けたことです。今はいろいろな人材を採用していますが、会社規模が100名を超えるまで、SE以外は、営業がやりたくない人材を採用することは控えていました。この採用戦略は上場直前までかなり有効でした。

4.事業を研修に絞り込みシンプルにした~皆で力をあわせると急成長

先に書いたように、創業1年目はコンサルティング売上が大半でしたが、創業2年目からは研修中心に事業を絞り込みました。研修は手がかかる割に価格が安く、最初不安でしたが、全員で研修事業の拡大に取り組めたので、成長スピードは急激に上がりました。つくづく、会社はシンプルが一番だと思います。

5.始業時間の繰り上げで売上増加

翌年から会社の始業時間を繰上げました。銀行の始業が8時20分だったので、ちょっと楽をしようと創業当初は9時始業でした。顧客訪問の時間を確保するため、始業を8時半にすると売上が増加、8時にするとさらに売上が増加、図に乗って7時半スタートにするとみんな遅刻。結局、創業から10年間ぐらいは8時始業で会社を運営していました。

働き方改革の文脈で伊藤忠商事では、働き方を朝型にしたようですが、理にかなっていると思います。業績が厳しい時は参考になさってください。

6.営業活動管理を強化~30マス週間行動計画表の活用

この対策は創業10年目ぐらいからスタートしたものですが、売上拡大には、実営業時間を増やすことが重要です。

業績の上がらない営業担当者の商談時間は勤務時間の25~30%程度

実際に調査してみると、営業担当者が顧客との商談に使っている時間は、勤務時間のわずか25%~50%程度です。特に営業成績の悪い担当者は、社内調整や事務処理、提案書作成に時間を取られ顧客アプローチの時間は25~30%程度です。(ベテラン営業や成績の良い営業は、この2倍ぐらい営業活動に使っています)よって、チーム全体の商談時間を50%以上に引き上げることができれば、売上は確実に伸びます。

30マス週間行動計画表を活用し行動量を増やす

これは1日を6つのマスに分け、1週間を30マスに分けた「小学校の時間割」みたいに見える、営業活動の時間割です。営業チーム全体でスケジュールを同期し、同じ時間帯に訪問、事務処理、会議などを行います。こういった活動時間の制御で、営業生産性は飛躍的に高まります。

例えば営業メンバーが、みんな集まって事務処理をやれば、要領の悪い担当者も、すぐに同僚に相談でき、無駄な時間を使わなくて済みます。優秀な先輩作の提案書をタイムリーに入手すれば時短になります。また、訪問や架電も皆が同じ時間帯にやれば、無意識のうちに競争心が芽生え、全体の行動量が増えます。優秀なリーダーがコントロールすれば、売上も上昇していきます。

営業生産性の上げ方➁30マス週間計画表

営業生産性の上げ方➁30マス週間計画表

7.その他~コストダウンの徹底、業務のシステム化など

創業1年目の危機は脱しましたが、役員報酬は低く抑えられていたので、本当に貧乏でした。冬に新しいコートが買えず、穴の空いた古いコートを着ていたのを目ざとく見つけられ、もうダメなんじゃないの?と知り合いに言われたこともありました。ただ、割と早く貧乏には慣れたので、人件費以外は節約しながら上場まで突っ走りました。また、ミスばかりする営業社員が多かったので、徹底したシステム化も実施しました。

「誰か」「何か」のせいにしてはいけない~ピンチの鉄則

経営者や営業トップにありがちなこととして「誰々が悪い」「製品・サービスが悪い」と考えることは厳禁です。これは思考停止の最たるものです。犯人捜し、部署間に非難合戦をしても、多分業績は良くなりません。

大体において、売上不振の理由は1つではありません。会社全体に散在する課題を一つ一つ洗い出して改善するしかないのです。
また、一方で業績不振は強くなるチャンスです。もし、創業1年目のピンチがなければ、インソースは今でも小規模なコンサル会社だったかもしれません。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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