研修を語る

極意シリーズを語る

2025/06/11更新

極意シリーズを語る

昨今、IT技術の活用は、システム部門だけでなく、営業・事務・企画等のあらゆる部門で喫緊の課題となっており、プロジェクトによる横断的な開発の重要度が増しています。
インソースグループでは、2020年11月以降、高度なシステム開発のプロジェクトマネジメント研修「極意シリーズ」を開発・提供しており、25年4月現在、ラインナップ数は全50種以上にのぼります。今回は、「極意シリーズ」について、株式会社インソースデジタルアカデミーの最高技術責任者・小川隆が存分にお伝えいたします!

〈 小川隆 プロフィール 〉
三菱UFJ銀行グループ(MUFG)のシステム部門(企画・開発・運用)で約37年間 、運営関連から国内・海外の大規模システム開発のプロジェクトマネージャーを歴任。内外の各種危機管理にも従事。 (株)インソースデジタルアカデミーでは、最高技術責任者を務める。

先人たちの「極意」を模擬体験から体得する

―極意シリーズのネーミングの由来を含め、シリーズ誕生の背景を教えてください。

小川:

僕はもともと教育について思いがあって、教職に就きたかったんです。試験は通ったものの当時採用募集がなく、やむなく銀行に入りました。3年間、銀行業務をしっかり覚えた後、配属されたのがシステム部の外為班でした。
理系でもなく希望したわけでもありませんでしたが、勉強してプログラマー・SEとして多くの開発経験を積み、管理職として海外システム全体を任されることにもなりました。その後さらに国内外の多方面にわたる仕事を経験し、結果的に約40年近くシステム開発とプロジェクトマネジメントに関わってきたことになります。
その間、業務として指導する立場でもありましたが、当社で研修に関わるようになって初めて最初の志・教育と具体的につながることになったのです。

といっても、多くの学校教育の現場は、知識をインプットすることが中心ですが、社会人が参加する研修は得た知識を仕事現場でアウトプットするための要点を学ぶ場です。
実際の仕事は知識だけでは動かない。仕事は良いこと悪いこと含む、多くの経験によって得られる「気づき」で動くものです。しかし、高齢化によって社会から急激に経験豊富なベテランが退き、受け継がれるべき気づきの情報がなくなっています。
だから当研修の受講者には、先輩経験者として仕事に活かせる気づきを伝えたい。「僕の仕事の極意のようなものですね」と言ったら、社長が「いいですね。極意シリーズとして発表しましょう」と。それでこのネーミングになりました。

―なるほど、そこからまた受講者それぞれが気づいていくのですね。従来のプロジェクトマネジメントの研修とは、具体的にどこが違うのでしょうか。

小川:

これまでは「こんなことができたらいいなあ」という発想から開発が進められたのですが、DXの時代は目の前のことだけでなく広い視野をもって、システムを自ら考え出すことが必要になっています。また昔は、システム開発はシステム部門だけがやっていたけれど、今はそうじゃない。課題によっては、誰もが関わる可能性があります。
そのためにITの知識だけではなく、経験から得た様々なヒントが役立ちます。しかし経験が重要だといっても、急に経験を積めるわけではない。

そこで仕事の中で経験するであろう様々なこと、技術だけではなく非システム面のメンタル・後方の兵站(へいたん)ロジスティクスなども含めて模擬体験していただくことにしました。演習や高度なケーススタディを通して、受講者自身が深く考えて気づき、実際の仕事に活かせるというわけです。いわばビジネススクールのシステム版といえます。

システムと料理は同じ!
~二刀流で相手の要望に応える

―受講者は、業種も職位も委託・受託の立場も異なる様々な方々だと思いますが、どんな課題や悩みをもたれているのでしょう。

小川:

お互いに話が通じていないことです。どういうことかというと、様々な人がそれぞれ自分の立場でものを見ているということです。家庭でも互いに想定している「アレ」がずれていることがありますよね。同じことが仕事でも起きます。

課題が違うままに仕事を進めようとしても進まない。お互いに自分が正しいと思っているわけですから。どちらが正しいか間違っているかではなく、相互の主張を理解して解決を目指さなくては進まない。つまり、業務のことも理解してないとシステムが作れない、ということです。
例えば誰かのために料理を作る時は、相手の希望、体調や避けるべき食材、予算や時間・時季を考えます。DXも同じです。攻守すなわちシステムとビジネスを理解する二刀流じゃなきゃ、互いに意思は通じません。まずは、相手の話を直接、よく聴いて必要な事柄を理解することです。

―本当にそうですね。受講者はどの程度システムやプロマネに精通した方が多いですか。

小川:

レベルは様々です。極意シリーズでも初級・中級・上級と選べるようにはなっていますが。公開講座は多種多様な状況の方が参加されますから、研修の理解度や進行をまとめるには講師の資質によるところが大きいですね。うちには経験豊富な講師が多くいるので、大きな問題はありませんけれど。ただ、公開講座のように不特定の人の集まりでは、受講者自身が普段の業務では得られない新たな視点に気付く機会になるともいえます。

一方、講師派遣型の研修ではカスタマイズができますから、より各組織のレベルや課題に沿ったきめ細かなテキストや事例を用意できることが大きなメリットになります。

経験したからこそ見える景色がある

―最近は職種を問わず、「管理職になりたくない若手・中堅社員が多い」と聞きますが、エンジニア職は以前から特にその傾向が強いように感じます。若手・中堅エンジニアがプロジェクトマネージャーや管理職になりたくないのはなぜか、どうすればなりたいと思えるでしょうか。

小川:

確かにプロジェクトマネージャーをやりたくないという人は多いですね。昔から、マネージャーとスタッフとで、エンジニアのキャリアは明確に分かれていました。管理職になるより、スタッフとしてコツコツ自分の好きな仕事を続けたい人も多いのです。管理職になれば確かに、技術以外の問題にも時間が割かれ、心身のストレスも大きくて疲れます。

しかし、プロマネをやってみた人にしか分からない面白さ・楽しさがあります。それを知る前に嫌がって避けるのはもったいない。やらずに嫌がるのではなく試しに一度チャレンジしてみて、そこで初めて新しい景色が見えるのではないかと思います。

お弁当にバリエーションをつけられるか
~技術が進化しても、非IT要素の重要性は不変

―様々なリソースを集結してチームを運営するのは大変な仕事だと思いますが、システム開発プロジェクトマネジメントの特有の難しさはどんなところでしょうか。逆に、この「極意シリーズ」は、システム開発以外のプロジェクトには適さないのでしょうか。

小川:

もちろんシステムを開発する技術的な難しさはありますが、プロジェクトの運営自体の難しさは他の部署と変わりません。テクニカルな面ばかりが強調されがちですが、非IT部分の人間の観察、メンタル・モチベーションなどのケアがチーム運営に欠かせません。それはどんなプロジェクトでも同じです。
私の場合は、朝好調なメンバーや夜集中するメンバーなど個々の特性や通勤距離など状況によってタイムスケジュールを調整することもありました。また、残業時に支給する弁当もメニューのバリエーションや業者の変更など、飽きさせない工夫もしました。めちゃくちゃ人間的な仕事ですよ。

―そうですね。ちょっとしたことで気分は変わりますね。世の中の変化は急ですが、今後システム開発は、どのように進展していくとお考えですか?

小川:

そうですね、一昔前と違って世の中がどんどん変わっていきますから、予測は難しいですね。ITのことだけを考えて済む時代じゃなくなっていますから。カーボン・ニュートラルや経済安保・防災・人手不足、法改正やサイバーセキュリティなど、みんな繋がっていますから、幅広く学ぶ必要があります。
受講される皆さんもアップデートが必要ですが、我々コンテンツ開発の側も一歩先を見てIT法務やアーキテクチャを取り入れてアップデートした企画を立てています。社会課題や産業イノベーションも含めて全体の仕組みを知ってシステムを考える時代ですし、その傾向は今後も続くと思います。

―システム開発の進展によって、プロジェクトマネージャーに求められることも変わるでしょうか。

小川:

いや本質的には、今までお話したことと同じだと思います。進歩を続けるIT技術を遅滞なく学び技術的な向上を目指すこと、そしてプロジェクトメンバーに対しては人間的な観察と配慮を忘れないことです。しかしそれだけではなく、今後はさらにITだけでクリアできることが減って来て、法律・経済・文化や社会などあらゆる分野にITが関連してくるので、やはり一つのことに偏らずに幅広く学び感じることが必要だと思います。

「好奇心」を大切に、
見慣れたことにも疑問を持ち続ける

―すべてについてある程度、あることについては深く理解することが大事ですね。これから社会を担う方々に何か一言ありますか。

小川:

重要なのは「好奇心」ではないかと思います。毎日が新しい体験だった小学生の頃は、好奇心に満ちていて、一日が長かったですよね。年を経ると一日がアッという間に過ぎてしまって、それだけ好奇心が希薄になっているんだと気を付けています。いくつになっても、見慣れたことにも疑問と好奇心を持ち続けることが大切だと思います。

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