インソース 事業推進室

ルールを守る環境づくり~行動経済学のナッジ理論「EAST」から学ぶ4つの対策ポイント

製造業の現場では、安全規則や品質基準を守ることが企業の信頼と持続的成長を支える重要な要素です。

しかし、現実には「少しくらい大丈夫だろう」「効率を優先したい」といった心理から、ルール違反が起きてしまうことがあります。

本コラムでは、行動経済学のフレームワーク 「EAST」 を活用し、現場で自然にルールが守られる仕組みづくりのヒントをご紹介します。

製造業でルール違反が起きる背景

ルール違反は、従業員の悪意から生じるとは限りません。行動経済学の観点で見ると、人間は必ずしも合理的な行動をするわけではなく、感情や直観で動いてしまうことが多いのです。

  • 損失回避性:慣れた手順を変えることで一時的に時間がかかる
  • 時間割引の心理:「納期に間に合う」といった目先の利得を選び、将来の不利益のリスクを軽視してしまう
  • 同調バイアス:周囲の誰かがやっていると「自分も大丈夫だ」と思い込み、違反を正当化してしまう
  • 正常性バイアス:「事故や発覚は滅多にないし、今まで問題なかった」と都合よく考え、リスクを過小評価してしまう

これらの心理が重なることで、検査の省略や安全具の未着用、品質管理の手抜きといった事態が起こりかねません。つまり、ルール違反は人間の心理構造に起因しているのです。

だからこそ、心理的な弱点を補う仕組みを現場に組み込むことが重要になります。

EASTで「守らせる」から「守りやすい」職場へ

行動経済学を実社会やビジネスシーンで活用するための一つの方向性として注目されているのが、ナッジ理論です。(ナッジとは「ひじで軽く突く」「そっと後押しする」という意味)。

このナッジ理論をより実践的に活用するためのフレームワークが、 EAST(Easy, Attractive, Social, Timely) です。EASTを使ってメンバーが自発的にルールを守るよう促す仕組みを構築します。

EASTの4つのポイント

  • Easy(わかりやすく):誰でもすぐ理解できる形で伝える
  • Attractive(魅力的に):守ることで得られるメリットを提示する
  • Social(社会性を活かす):周囲の行動を共有し、仲間意識を醸成する
  • Timely(タイムリーに):必要なタイミングで声をかける

例えば「安全靴の着用」を徹底したい場合、

  • 写真入りでシンプルな掲示を用意する(Easy)
  • 着用によって事故を防げる具体的データを示す(Attractive)
  • 着用率を現場で共有する(Social)
  • 作業開始直前に管理職が声かけする(Timely)

このようにEASTの4要素を活用すれば、ルールは「義務」ではなく「自然に守れるもの」へと変わります。結果として、誰もが無理なくルールを守れる環境が整い、ルールの定着を効果的に促すことが可能です。

(製造業向け)ルール順守徹底研修~行動経済学を活用しルール定着を図る(1日間)

行動経済学とは、「人は感情で動く」という前提に立ったうえで、人の心理的な傾向を分析、把握し、それを理論的に体系化していきます。

なるべくコストをかけずに相手を動かす手段として、ビジネスでの活用が注目されています。

本研修では、行動経済学(ナッジ理論)を活用して、工場勤務のメンバーに対してルールを周知徹底するためのポイントを学びます。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 工場のメンバーに安全上のルール等を周知させたいが、なかなか守ってもらえない
  • ルールを伝えても、しばらくすると忘れられてしまい、周知が徹底できない
  • メンバーに強制することなく、自然とルールが守られるような仕組みを作りたい

本研修のゴール

  1. なぜルールが守られないのかを行動経済学の観点から分析する
  2. ナッジ理論のEASTのフレームワークに沿って、ルール順守の仕組みづくりについて学ぶ
  3. 現場でどのようにルール徹底を図るかをケーススタディを通じて、実践的に学ぶ

>講師派遣型研修の詳細はこちら

>動画教材の詳細はこちら

セットでおすすめのサービス

コンプライアンス研修~行動経済学を学び、ルールを守れる職場をみんなで作る(1日間)

本研修では、コンプライアンスを守ることができる職場づくりを自分ごととして考えていただくことを目的としています。

まずコンプライアンスについての基本知識を学んだ後、「会社」が実現したいことを踏まえた自分の役割を考え、コンプライアンス遵守はその一環であることをお伝えします。

さらに、近年注目を集めている行動経済学をヒントにしながら、具体的なケースをもとに、会社・組織の一員として自分が何をすべきかを考え、新しい気づきを得ていただきます。

>講師派遣型研修の詳細はこちら

>動画教材の詳細はこちら

部下モチベーション向上研修~行動経済学を具体的シーンの中で活用する

リーダーにとって、部下やメンバーのモチベーションをマネジメントすることは重要なテーマのひとつです。

しかし、いくら権限と正論をもって動かそうとしても、思うようにいかないのが人の心でもあります。

この研修では、行動経済学の理論を一つひとつ紹介しながら、合理性だけではない、感情を持った人の特性を踏まえた、実践的なマネジメントの方法をシーン別にお伝えします。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

【全力解説】行動経済学・ナッジ理論活用研修~コミュニケーション編

ビジネスにおいて、自分の言いたいことを誤解なく伝え、相手を動かすスキルはどの職種であれ必須のスキルです。

行動経済学とは、心理学と経済学を組み合わせた学問で、人の心理を読み解き、相手を動かしたい時に役立ちます。

本研修では、行動経済学の知見を活用することで、相手の心理を理解し、戦略的なコミュニケーションの取り方を習得し、なぜ相手が動いてくれないのかを行動経済学の観点から考えていただきます。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

関連記事

関連研修シリーズ

    • 更新

    【公開講座】課題解決ワークセッション~「学び」ではなく、「実益」を得るためのワークショップを公開講座でも

    • 中期経営計画策定ワークセッション

    • 健康経営アクションプラン策定ワークセッション

    • ブランド戦略策定ワークセッション

    • 教育体系ツールをつくろう!ワークショップ

    • カスハラ対応マニュアル作成ワークセッション

    • 離職防止策策定ワークセッション

    • AI時代のLLMO対策ワークセッション

    • 生成AIとPowerAppsで作る、業務アプリ開発ワークセッション

    • 業務効率を実現するAIエージェント開発ワークセッション

    • システム化に向けたユーザー部門のための要件定義ワークセッション

    • 更新

    コンサルタント養成シリーズ

    • 更新

    【ケースで学ぶシリーズ】入社1~5年目向け問題解決ワークショップ