インソース マーケティング&デザイン室

「聴いているつもり」が信頼を遠ざける~部下の本音を引き出す傾聴力とは、相手の世界を理解しようとする姿勢

部下との面談で、「何を考えているのか分からない」「悩みを打ち明けてもらえない」と感じた経験はありませんか。リーダーやマネージャーにとって、部下との信頼関係を築くうえで欠かせないのが「傾聴力」です。

しかし、多くの上司が「ちゃんと聴いているつもり」になってしまい、実際には部下が話しづらさを感じているケースが少なくありません。

本記事では今なぜ傾聴力が注目されているのか、その背景と実践のポイントを中心に紹介します。

なぜ今、「傾聴力」が求められているのか

多様性の時代に求められる「共通の目的を見出す対話」

かつての職場では、「上司が指示し、部下が従う」ことで成果が上がる時代でした。しかし現在は、価値観も働き方も人それぞれの時代です。「仕事は生活の一部」「働く意味を大切にしたい」と考える人もいれば、「まずは成果を出したい」という人もいます。

こうした多様性の中で求められているのは、「共通の目的を見いだす対話」です。そのために欠かせないのが、相手の考えや背景を丁寧に聴く姿勢、つまり傾聴です。

現場では、「忙しくて話をゆっくり聞く時間がない」「短時間で結果を出さないといけない」というプレッシャーが、上司の耳を塞いでしまいます。

面談の場でも、「この件、どうなってる?」「じゃあ次はこうしよう」という「確認と指示」で終わってしまい、対話ではなく報告の場になってしまうことが多いのです。

傾聴力はマネジメントにおける最高の競争力

さらに、テレワークやオンライン会議の普及により、表情や間の取り方など、これまで自然に拾えていたコミュニケーションのサインも見えにくくなりました。そのため、リーダーが「聴いているつもり」でも、部下の心の中では不安や疑問が膨らみ、信頼関係が築けないまま時間だけが過ぎることがあります。

心理学的な視点でも、傾聴は重要です。心理的安全性の高いチームでは、上司が話を「評価ではなく理解するために聴く」姿勢を持つことが共通しています。この姿勢があると、部下は安心して意見を出せるようになり、生産性・創造性・エンゲージメントが向上します。近年はAIや自動化が進み、業務効率の改善は一定の限界に達しつつあります。

だからこそ、人の感情を読み取り、信頼を築く力――傾聴力こそ、これからのマネジメントにおける最高の競争力なのです。

「聴いているつもり」を生む3つの落とし穴

傾聴が難しいのは、誰もが「自分はできている」と思い込みやすい点にあります。上司として日常的に部下と面談していると、「ちゃんと話を聴いている」と感じているものの、実際には部下が本音を話せずに終わってしまうケースは少なくありません。

ここでは、現場でよく見られる「3つの落とし穴」を、より具体的な状況とともにご紹介します。

1. アドバイスを急ぐ ----「助けてあげたい」が空回りする

製造部門のリーダーAさんは、面倒見がよく部下からも信頼されているタイプでした。ある日、若手社員のBさんが面談で「最近、作業が思うように進まなくて...」と切り出しました。Aさんはすぐに「手順を見直したほうがいい」「時間の使い方を工夫してみよう」と答えます。

本人としては前向きなアドバイスのつもりでしたが、Bさんは「はい...」と小さく返すだけ。目線は下がり、そこから会話は広がりません。面談後、Aさんは「せっかくアドバイスしたのに、反応が薄いな」と感じていました。

しかしBさんの胸中はこうです。「また"こうすればいい"って言われた。自分の気持ちは伝わってない気がする」「どうせ話しても理解されないかも」――Aさんは、相手の話を聴いているつもりで、実は「答えを出すこと」に集中していました。

アドバイスを急ぐほど、部下の「聞いてほしい」という思いは置き去りになり、結果的に本音を話せない空気が生まれていたのです。

2. 決めつけてしまう ----「経験があるからこそ」見落とす落とし穴

営業部のベテランCさんは、部下に頼られる存在でした。部下のDさんが「顧客からの要望が多くて対応に迷っていて...」と相談に来たとき、Cさんは間髪入れずに言いました。「そういうときは、"まず先方に確認してから動く"が鉄則だ。昔の自分もそうしてた」

Cさんは自分の経験から「正解」を伝えたつもりでしたが、Dさんは少し困ったような表情を浮かべました。実はその顧客は特殊な事情を抱えており、「すぐ確認できない」ことが悩みの核心だったのです。

しかしCさんはそれに気づかず、さらに続けます。「若手のうちは失敗を恐れず行動だよ。悩むより動け!」Dさんはうなずきながらも、心の中ではこうつぶやいていました。

「この状況、分かってもらえてないな...」「また"自分の時代"の話だ」――Cさんは「指導している」つもりでしたが、実際には部下の状況を聞く前に自分の経験で答えを決めてしまっていたのです。

この「決めつけ」は、相手が自分の考えを話す余地を奪い、本音を引き出すチャンスを失わせます。

3. 沈黙を恐れる ----「間が怖い」リーダーの心理

面談の中で、部下が少し黙り込む瞬間があります。しかし多くのリーダーは、この「沈黙」を不安に感じます。人事課のリーダーEさんもその一人でした。

若手社員との面談中、Eさんが「最近の業務どう?」と聞くと、相手は「うーん...」と数秒間黙りました。Eさんはすぐに「忙しいよね?」「無理してない?」と畳みかけるように質問を続けます。

結果、相手は「はい、まあ大丈夫です」と無難な答えしか返さなくなりました。沈黙を恐れて話をつなごうとした結果、逆に部下が考えを整理する時間を奪ってしまっていたのです。

Eさん自身は「ちゃんと気を使ってあげた」と思っていましたが、部下の心には「話をゆっくり聞いてもらえなかった」「焦らされた」という印象が残りました。

現場では、沈黙が生まれると「気まずい」と感じる上司が少なくありません。「自分の質問が悪かったのか」「間が持たない」と焦ってしまい、つい言葉を重ねてしまうのです。

しかしその結果、部下は「考える時間を与えてもらえない」と感じ、本音を隠す方向へと向かっていきます。

傾聴力が生み出す変化とチームへの波及効果

傾聴を実践することで、リーダー自身の意識も変わります。「自分が話すより、相手の話を引き出す方が難しい」と実感し、指導よりも「対話」を重視するようになるのです。

ある製造部門のリーダーは、以前は「部下の問題は自分が解決する」と考えていましたが、傾聴を意識した結果、「部下自身が気づき、行動できるよう支援すること」の重要性に気づきました。そうするとチームの空気も変わり、意見の対立が減り、部下同士も「まず相手の話を聴く」という習慣が生まれました。

別の企業では、傾聴研修を全管理職に導入して半年後に社員アンケートを行ったところ、「上司に話しやすくなった」と答えた割合が78%となりました。発言の量だけでなく、チーム内の信頼関係や雰囲気そのものが変化しました。

傾聴は単なるスキルではなく、組織文化を変える習慣化の出発点です。「聴くリーダー」が一人増えるごとに、職場の風通しは確実に良くなります。

(2時間研修)傾聴力向上研修~部下の本音や考えを引き出す

上司として、部下の本音を引き出せるかどうかはとても重要です。例えば、お互いの真意をもって話をすることができなければ、部下のやりがいにつながる指導・育成やキャリア支援は難しいといえます。

そこで本研修は、前提として必要な「傾聴力」に焦点をあてます。傾聴の基本原則や姿勢、避けるべき聴き方などを学び、ロールプレイングを通して実践スキルを習得します。

本研修のゴール

  1. 部下とのコミュニケーションの取り方を振り返り、傾聴力の必要性を理解する
  2. 3つの原則をおさえ、目線やうなずきなどの傾聴の姿勢を身につける
  3. ロールプレイングを通して、部下との関わり方に自信をもてるようになる

よくあるお悩み・ニーズ

  • 面談時のコミュニケーションの取り方に悩んでいる
  • 部下の本音や悩みがわからない
  • 改めて傾聴のポイントを知りたい

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セットでおすすめのサービス

部下モチベーション向上研修~アドラー心理学を活用し、部下を勇気づける

本研修では、アドラー心理学を活用して部下のモチベーションを向上させ、勇気づけるためのコミュニケーションのポイントを学びます。

受講者自身と部下との関係性を改めて振り返っていただき、上司が部下の上に立つ縦の関係から"横の関係"になることの有効性について理解していただきます。

また、部下の課題に介入しすぎず、いかに部下の自律的な行動を促していくのかを学びます。研修の最後には、部下を勇気づけるためのトレーニングを行い、学んだスキルを現場でも実践できるようになることを目指します。

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心理的安全性を高める研修

心理的安全性が低ければ、否定や失敗を恐れ、新たな一歩を踏み出せません。また1人ひとりが持っている力を十分に発揮できない状況は、組織の中でダイバーシティ推進が進まない理由になりかねません。

インソースでは、「心理的安全性」を高めるために必要となるコミュニケーションスキルやチームワークを向上させる研修や、1人ひとりの力を最大限に発揮させるためのダイバーシティ推進の研修などをご用意しております。

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