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ストレスコーピング
ストレスコーピング(Stress coping)とは、仕事や日常生活などにおけるストレスの基(ストレッサー)に対する対処方法のことです。米国の心理学者ラザルスの「ストレス理論」によって提唱されたのが始まりで、メンタルヘルスケアの概念として広く知られています。
■労働者が抱えるストレスの内容とは
現代人の多くは、精神的・肉体的に負担となる様々なストレスに晒されて生活しています。厚生労働省の調査(※1)によると、労働者の半数以上が仕事や職業生活に関する強いストレスを感じていて、その内容は「仕事の量・質」「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係(パワハラ・セクハラを含む)」が多くなっています。
それらのストレスに対応できないと、イライラする、疲れやすくなるといった心身の変化が現れます。これがいわゆる「ストレス反応」です。何の準備もなくストレスを受けるとダメージが大きくなります。何がストレッサーとなっているのかできるだけ早く気づき適切にケアすることで、早期の回復が可能となります。
■2つの代表的なストレスコーピングの方法
ストレスコーピングの方法は、大きく分けて2つあります(※2)。
- ① 問題焦点型:ストレッサーそのものに働きかけ、それ自体を変化させて解決を図る
(例)長時間労働をなくすため、タイムマネジメントのスキルを身につける
上司などに相談し、バックアップ体制を取ってもらう - ② 情動焦点型:ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変える
(例)誰かに話を聴いてもらい、ネガティブな感情を発散させる
問題に対する考え方、捉え方を前向きに変化させる
仕事や人間関係における問題が発生した場合、自身のスキルアップやコミュニケーション能力の向上、あるいは周囲への働きかけ(ラインケア)によって解決をはかり、ストレスを回避するのが問題焦点型の特徴です。情動焦点型では、物事を柔軟に受け止める考え方や、過去の経験をポジティブに切り替えるレジリエンス(=精神的回復力)、雑念を取り払って今の瞬間に集中するマインドフルネスなどのセルフケアを身につけることが求められます。
■ストレスを組織的に予防する
安定した成果を求められるビジネスパーソンにとって、ストレスコーピングを学ぶことは、ストレスから自分の身を守り、ベストパフォーマンスを発揮するために必要不可欠です。
また人事担当者には、セルフケアやメンタルヘルスについて学びたい社員を積極的に支援するとともに、相談窓口の設置や定期的なストレスチェックの実施、メンター制度の導入やハラスメント防止研修などを通じて、管理職の意識改革や職場改善をはかり、ストレスコーピングを組織的に機能させることが求められます。
ストレスを組織的に予防し、人的資本の強化を促すことで、持続的な組織成長につなげていきましょう!
※参考
※1 厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_gaikyo.pdf
(最終アクセス:2023年5月17日)
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレスコーピング」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-068.html
(最終アクセス:2023年5月17日)
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