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「ここで働くことが幸せ」になる職場づくり~従業員の幸福を生み出す3つの要素と人事の実装ステップ

多くの企業が人材定着やエンゲージメントの向上に課題を抱えています。給与を上げても離職が減らない、福利厚生を拡充しても組織の雰囲気が変わらないなど、単一の施策では思ったような効果が出づらい状況があるのではないでしょうか。

従業員が長く働きたいと思える組織には、心身の健康・信頼関係・成長の実感が揃った環境が必要です。これらを3つの幸福として捉え、そのバランスを整えるための人事施策を整理します。

参考図書:樺沢紫苑『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』(飛鳥新社)

セロトニン的幸福を高める人事施策

心と体の健康、心理的安全性を整えるために最初に着手する領域です。

心身の健康を日常的に守る仕組みをつくる

従業員が安心して働ける職場は、心理的安全性と身体的健康が両立している状態です。日々の業務で不安や緊張が続く環境では、自律的な行動や創造性は生まれません。人事としては、ストレスを溜め込ませない仕掛けを日常レベルで整えることが求められます。

例えば、相談先が一つしかない体制では、相談が集中し対応が滞りやすくなります。産業医や外部カウンセリングといった専門窓口に加え、ラインマネジャーが日頃から状態を把握できる関係づくりを支援することで、悩みを早期に拾える組織に近づきます。

労働時間の偏りをなくす取り組みも欠かせません。短期的な繁忙は避けにくいものの、偏りが慢性化すると疲弊が蓄積し、最終的に離職を選択しやすくなります。人事部が定期的にデータを可視化し、組織全体で改善に向けた対話ができる環境をつくることが重要です。

心理的安全性を損なう要因を丁寧に除去する

心理的安全性は単に指摘や質問を許容する文化ではなく、安心して試行錯誤できる環境の総称です。「質問がしづらい」と若手が不明点を放置することで生じる叱責、曖昧な指示が続いて衝突が起きたりする状況は、見えにくいストレス要因となります。

人事部は、マネジャークラスのコミュニケーションを安定させる教育や、部下が安心して仕事に向き合える1対1面談の仕組みを導入するなど、職場ごとの対話の質を高める取り組みを計画的に行うことが効果的です。セロトニン的幸福は、組織全体の基礎として後述する幸福の土台にもなります。

オキシトシン的幸福を高める組織づくり

つながり、信頼、チームワークをつくる施策がエンゲージメントを強化します。

信頼関係を育てるコミュニケーションの設計

従業員同士の関係性が弱い組織では、いくら制度を整えても成果が出づらくなります。人が安心して協働するためには、日常的に信頼が積み重なる場が必要です。部門間の壁が厚い、刺激し合える相手がいないといった状況は、孤立や不満を覚えやすくなります。

そこで、人事部が担うべきはコミュニケーションの仕組み化です。全社ミーティング、タウンホール、オンボーディングプログラムなど、同じ方向を向くための場を定期的に設けることで、従業員の不安は減り、互いへの理解が広がります。特にオンボーディングは信頼関係の基礎を築く時期であり、部署間で行うべき説明や接点を体系化することが大切です。

チームワークを価値に変えるマネジメント

チームワークは自然に育つものではなく、マネジメントによって方向づけされる要素です。メンバーが互いの強みを理解し、補い合える状態にするには、上司が適切に役割を定義し、進め方を揃えるサポートが必須です。

チームが同じ目的を共有しているかを定期的に確認する場をつくることは、オキシトシン的幸福を育てるうえで効果的です。メンバー同士が努力を認め合う環境が整うと、協働による前向きな感情が生まれ、離職抑止にもつながります。

ドーパミン的幸福を適切にデザインする

昇給、賞与、表彰といった成長実感が働く評価制度が満足を高めます。

公正で納得感のある評価制度の整備

従業員が成長を実感し、組織に対して前向きな感情を持つためには、成果や努力が適切に認められていることが大切です。ドーパミン的幸福は、目標達成の達成感や期待感を生み出す要素であり、制度設計の透明性がそのまま信頼につながります。

評価基準が曖昧だったり、期待行動が共有されていなかったりすると、努力が成果として反映されにくくなります。その結果、心理的安全性が損なわれ、配属先や上司との相性に依存した不公平感が生まれやすくなります。基準を定量化し、評価者研修を定期的に実施することは、組織の納得感を高めます。

表彰やフィードバックを日常化し成長を実感させる

表彰制度はモチベーション向上に寄与しますが、特別な場で大きな成果だけを讃える形に偏ると、全員の行動変容にはつながりづらくなります。日常の小さな改善や地道な努力を認める文化を育てることで、成長の実感は大きく広がります。

フィードバックを習慣化することで、従業員は自分の強みや改善点を把握し、次のステップを描きやすくなります。短期的な刺激だけに依存しないモチベーション設計は、健全なドーパミン的幸福を維持するために不可欠です。

3つの幸福を統合して「ここで働くことが幸せ」を生み出す人事部門に

セロトニン、オキシトシン、ドーパミンのバランスをとれた施策を行います。

3つの幸福を人事戦略に落とし込む

働く人が長期的に幸せを感じるには、心身の安定/信頼関係/成長実感がバランスよく保たれている状況が必要です。いずれか一つだけに偏ると、満足度は長続きしません。セロトニン的幸福で土台を整え、オキシトシン的幸福で関係性を深め、ドーパミン的幸福で意欲と成長を支える流れが理想です。

人事部は、これら3つの幸福を測定可能な指標に落とし込み、年間施策として体系化することで、従業員体験の質を高めることができます。研修、制度、コミュニケーション施策を一貫して設計することで、働く人の幸福が組織文化として根づきます。

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