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言いにくいことを伝える力を身につける!アサーティブコミュニケーションを使った職場での良好な人間関係の保ち方

職場で「本当はこう思っているのに言えない」「お願いされたことを断れず、無理をしてしまう」と悩んだ経験はありませんか。

こうした悩みは、業務の効率やチームの雰囲気にも影響を及ぼします。しかし、言いにくいことを伝える力は、自己主張だけでなく、相手を尊重しながら関係性を保つための重要なスキルです。

本記事では、アサーティブコミュニケーションが注目される理由と職場での実践方法を紹介します。

社会の変化で注目されているアサーティブコミュニケーション

近年、相手を尊重しつつ自分の意見を建設的に伝えるアサーティブコミュニケーションが注目されています。その背景には、社会や職場環境の変化が深く関わっています。

価値観やライフスタイルの多様化

以前の企業では社員は組織に従属する存在とみなされ、上司の指示に従うことが重視される傾向がありました。しかし、現在は個々の価値観やライフスタイルが多様化し、社員一人ひとりの意見や能力を活かすことが組織の競争力に直結する時代となっています。

職場の多様性やインクルージョンへの対応が求められる現代においては、性別や国籍、価値観の異なる人々が共に働く環境で、単に指示に従うだけではなく、相互理解と尊重を前提とした対話が不可欠です。

また、リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方が広がる中で、自分の意思や考えを適切に伝える力がますます求められるようになっています。

誤解や衝突を減らし、心理的安全性を向上

職場で成果を上げるためには、意見やアイデアを安心して出せる環境、いわゆる心理的安全性が不可欠です。

アサーティブコミュニケーションは、相手の立場を尊重しながら自分の意見も伝えることを可能にするため、心理的安全性の向上に寄与する手段として注目されています。加えて、自己の意思や感情を適切に表現できることは、誤解や衝突を減らし、ストレスを軽減する効果もあり、個人のキャリア形成にも役立つと考えられています。

このように、個人の意見を適切に伝えながら相手も尊重する能力は、働き方の多様化、心理的安全性の重視、ストレスマネジメント、多様性への対応といった現代の課題に応えるスキルとして、これまで以上にアサーティブコミュニケーションは重要視されているのです。

なぜ「言いにくいこと」を言えないのか

多くの人が伝えたいことをためらう理由は心理的な障壁にあります。具体的には以下のような状況が挙げられます。

  • 相手に嫌がられることが怖く、本音を言えない
  • 自分の意見ばかりを主張してしまい、反発を受けやすい
  • 依頼を断れず、無理をして引き受けてしまう

こうした行動パターンは、自分と相手の立場を同時に考える思考が不足していることが多く、無意識のうちに遠慮や防衛的態度が生まれます。加えて、伝える方法や心構えを学んでいない場合、同じ課題が繰り返されやすくなります。

アサーティブコミュニケーションの基本

アサーティブコミュニケーションは、相手の意見や感情を尊重しながら、自分の思いや考えを正直に伝えるスキルです。その特徴は以下の通りです。

  • 相手を否定せず、事実と感情を分けて伝える
  • 自分の主張を明確にしつつ、相手との関係性を保つ
  • 双方が納得できる解決策を目指す

このスキルにより、誤解や摩擦を減らし、建設的で円滑な対話を実現できます。特に現代の多様な職場環境では、単なる自己主張ではなく、相手との信頼関係を前提としたコミュニケーションが求められます。

自分のコミュニケーションパターンを把握する

まず自分の課題を客観的に把握することが重要です。次のステップを試してください。

① 言いにくかった具体的な場面を書き出す

まずは、実際に「うまく言えなかった」「つい我慢してしまった」など、コミュニケーションでモヤモヤした場面を思い出して書き出します。

例えば、「同僚の作業ミスを指摘したかったが、関係が悪くなるのが怖くて言えなかった」「上司に業務量の多さを伝えたかったが、『できない人』と思われそうで黙ってしまった」などです。

ここで大切なのは、「思い出すだけで少し気まずい場面」をできるだけ具体的に書くことです。状況(いつ、どこで、誰に、何を)を詳しく書くほど、自分の傾向が見えやすくなります。

② 自分の反応パターン(遠慮、回避、攻撃など)を整理

次に、その場面で自分がどんな反応をしたかを振り返ります。反応パターンは以下のように分類できます。

  • 「相手を気遣いすぎて言葉をのみ込んだ」→ 遠慮型
  • 「話をそらして問題に触れなかった」→ 回避型
  • 「つい強い言葉で相手を責めた」→ 攻撃型

など、自分の「クセ」を客観的に整理します。たとえば、製造部のCさんは後輩の作業ミスを見つけた際、「今注意したら落ち込むかも」と思い、黙って自分で修正してしまいました。これは遠慮型の典型です。

一方で、営業のDさんは上司に提案を却下されたとき、「どうせ話しても無駄」と話題を避ける回避型の反応をしていました。こうして自分の反応パターンを整理すると、同じような傾向が繰り返されていることに気づきます。

③ どの場面でアサーティブになれなかったかを確認

最後に、どんな条件のときにアサーティブにふるまえなかったかを分析します。「上司の前では緊張して意見が言えない」「相手が感情的になると怖くて黙ってしまう」「期限が迫ると焦って強く言いすぎてしまう」などです。

たとえば、総務課のEさんは「普段は穏やかに話せるのに、部長の前だと緊張して言葉が詰まる」と振り返り、自分が「上下関係に弱いタイプ」だと気づきました。このように、アサーティブでいられない場面を特定することで、どんなスキル(例:感情整理、Iメッセージ、事実の伝え方)を重点的に磨くべきかが明確になります。

この3つのステップを通じて、自分のコミュニケーションの傾向を客観的に把握できるようになります。「なぜ言えなかったのか」「どんな時に崩れるのか」を理解することが、アサーティブコミュニケーションを実践するための第一歩です。

相手を尊重しながら伝える方法

事実と感情を分けて伝える

例えば「昨日の会議で提案が取り上げられなかったのが残念です」を、事実と感情を分けて整理すると次のようになります。

  • 事実:「昨日の会議で自分の提案が議題に上がらなかった」
  • 感情:「取り上げられず、残念・悔しいと感じた」

このように区別することで、冷静に状況を捉え、自分の気持ちを整理してから建設的に伝えることができます。

そして、伝え方は「昨日の会議では、私の提案について話し合う時間がなかったようですね。私はこの提案を大切に考えていたので、少し残念に感じています。次回改めてご意見をいただけると助かります。」といった内容にします。

「Iメッセージ」を使う

「私はこう感じました」「私はこう考えます」と主語を自分に置くことで、相手に攻撃的に聞こえず、自然に意見を表現できます。

相手の話を受け止める

相手が話す内容にうなずきや返答を示すことで、「聴かれている」と感じてもらえ、対話がスムーズになります。

解決策を共に考える

不満を述べるだけでなく、「こういう方法も考えられます」と代替案を提示することで、建設的な会話になります。

断る力を身につける

依頼を無理に引き受けてしまう場合は、断るスキルが重要です。基本の手順は以下の通りです。

  1. まず相手の依頼を理解し、感謝を示す
  2. 自分の状況や理由を簡潔に伝える
  3. 代替案や妥協案を提案する

例:「お声がけありがとうございます。ただ、現在の業務が立て込んでおり、すぐに対応することが難しいです。○○さんにお願いするか、来週以降で調整できれば助かります」

このように、自分の立場を明確にしつつ相手を尊重することで、長期的な信頼関係を保てます。

日常的に練習する

アサーティブスキルを定着させるには、日常の小さな場面で意識的に練習することが大切です。

  • 家庭や友人との会話でIメッセージを使う
  • メールやチャットで事実と感情を分けて表現する
  • 小さな依頼や意見から伝え方を工夫する

継続的に練習することで、自然に相手を尊重しながら意見を伝えられる習慣が身につきます。

アサーティブコミュニケーションのメリット

スキルを身につけることで得られる効果は大きく、以下の点が挙げられます。

  • 誤解や摩擦を減らし、円滑な業務遂行が可能
  • 自分も相手も納得できる解決策を導きやすくなる
  • チーム内の信頼関係が向上し、心理的安全性が高まる
  • ストレスの軽減と自己効力感の向上につながる

特に管理職やリーダー層では、部下との関係性を良好に保ちながら、指示や改善提案を行うために不可欠なスキルです。

アサーティブコミュニケーション研修~自他尊重のスタンスで言いにくいことを伝える

本研修では、「言いにくいこと」を伝えるアサーティブコミュニケーションの手法について習得します。アサーティブとは、相手の状況・気持ちを尊重しながら、自分の主張を正直に伝えることです。

講義と豊富なワーク・ケーススタディを通じて、アサーティブであるための心の持ち方を理解し、具体的なコミュニケーションスキルを身につけていただきます。

本研修のゴール

  1. アサーティブコミュニケーションとは何か、その考え方や心構えを理解し、具体的なノウハウを習得する
  2. 相手の置かれている状況や気持ちを尊重しながらも、自分の意見をきちんと伝えることができるようになる
  3. 「相手の話を聴いている」ことを示す手法を学び、相手との良好な関係性を作ることができるようになる

よくあるお悩み・ニーズ

  • 相手に嫌がられることが怖くて、本音がなかなか言えない
  • 言いたいことを言ったら相手を怒らせてしまった
  • 相手の気持ちに配慮して伝えられればもっと仕事が円滑に進むと思うのに、なかなかうまくいかない
  • お願いをされたら断れない。無理をしてでも引き受けてしまう

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セットでおすすめの研修・サービス

部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る

本研修では、部下とのコミュニケーションの仕方を工夫することで、どのように心理的安全性を高めていくのか習得します。

言いたいことを伝えるためのアサーティブコミュニケーション、本音で話せる環境を作るための1対1面談の活用方法を実際によくあるケースをもとに実践的に学びます。

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