無理して働く疾病就業「プレゼンティーイズム」とは?〜疲弊する現場のケアで休職連鎖を防ぐ

少子高齢化により労働力が減少し、働き方改革に加えダイバーシティや人的資本経営という考え方が普通になってきた今、従業員の心身の健康が、今まで以上に重視される世の中になりました。
2024年4月には精神障害の労災認定基準にも新たに改定が入るなど、すべての企業において従業員の心身の健康阻害を未然に防ぐことが強く求められています。
職場における他者との関わり方や考え方にも注意を向けることが当たり前となり、従業員個人にはセルフケア、管理監督者にはラインケアといったメンタルヘルスの王道の研修が人気です。
一方で、日本社会におけるメンタルヘルス対策は不調者に焦点を置いた支援になりがちです。心身ともに不調に陥り精神障害を発症してしまった社員には、まずは休養と適切な治療、つまり「休職」させることが最重要です。仕事のことや今後のことをじっくりと考えるのは二の次。まずは自宅療養を行い、うつ状態の寛解(かんかい)に努めてもらえばよいのです。
しかしそうなると、貴重な戦力を欠いてしまった現場に残る社員には、どのような弊害が予測されるでしょうか?
蔓延する疲労、低下する職場の士気
基本的には、休職者が担当していた業務は通常業務に加わる形で現場に分担されるはずです。ただでさえ職場でメンタルヘルス不調が理由による休職が起きた際は、
「いつもと違う様子に気づいてあげられなかった...」
「あの時自分が何かしてあげられていたら...」
という不安や懸念といった心理的な負荷が職場全体にかかりがちです。この時、組織として起きたことに対する可能な限りの状況説明や、サポート要員に対する適切な配慮がないまま業務を分担するだけでは、精神的な負荷まで現場に引き継がれる恐れもあります。
そこでメンタルヘルス不調の予防や対策を考える際、「プレゼンティーイズム」(疾病就業)という観点で問題を整理していくのがおすすめです。
アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムとは
アブセンティーイズムとは、「健康問題による仕事の欠勤」、いわゆる病欠や休職状態を意味し、勤怠面で明らかに健康を害していると目に見えるフェーズです。
「メンタルヘルス不調」と聞くとこちらをイメージする方が多いでしょう。うつ病や適応障害といった精神疾患を発症し主治医の指示のもと休職となり自宅療養中の社員がこちらに当たります。
一方、プレゼンティーイズムとは欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。
出勤はするけどもちょっとした遅刻や早退が目立つようになってきた、勤務中に居眠りやぼーっとしている様子が多く、仕事に支障をきたしているなど、仕事や私生活上で気がかりごとを抱え心身共に疲弊し続け、集中力や注意力の低下から、パフォーマンスが落ちている状態を指します。
経済産業省の『企業の健康経営ガイドブック』※によると、健康関連総コストのうちプレゼンティーイズムによる損失は、約78%とも言われています。つまり、人出不足の現場で疲弊しきった従業員は、新たな「不調者予備軍」になりえます。
個人のモチベーション低下や休離職のリスクは、企業としても職場全体の士気・モラル低下が懸念されます。企業の業績・生産性低下を防ぐためにも、この不調者予備軍への介入も重要です。
※参考文献:『企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~』 経済産業省(最終アクセス:2025/10/23)
メンタルヘルス対策の真の目的は「職場の生産性向上」
つまり、これからのメンタルヘルス対策とは、セルフケア教育を前提としていかに管理職のリーダーシップを発揮させることが重要です。具体的には、職場内における人員管理や適切な声掛け、ねぎらいや承認といった情緒的なサポートをはじめとする、チームワーク向上や他者への配慮・思いやりある態度が強く求められるでしょう。
これまで曖昧だった個人の健康問題による職場の士気低下に対して、管理職として自信をもって毅然とした対応を行うことで、職場内における社員間の不平不満や不公平という感情を緩和し、安心・安全な職場を実現させることが出来ます。
サポート要員として精一杯、業務遂行にあたる健康社員の精神衛生も明るくなり、組織への忠誠心やエンゲージメント上昇といった効果も期待できます。
管理職向け従業員エンゲージメント向上研修~働きがいのある職場づくりでチームの活性化をはかる
チームの活性、生産性向上、ひいては離職防止への一手として「従業員エンゲージメント」が注目されています。
本研修では管理職のみなさまに、部下のエンゲージメント向上の3つのポイントと具体的な方法をお伝えします。働きがいのある職場をつくり、チームの活性化を目指します。
本研修のゴール
- 「風通し」「見通し」「一体感」の3つの観点から、働きがいのある職場づくりを学ぶ
- 現状を把握し、前向きに自部署と管理職としての自身のあり方を考える
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よくあるお悩み・ニーズ
- 部下との関わり方、コミュニケーションの取り方で悩むことがある
- メンバーの離職や休職を減らすために管理職として取り組めることを知りたい
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職場のメンタルヘルス不調を減らすためにも、1人1人が丈夫な「精神的回復力」=レジリエンスを身に付けることも有効です。
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部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る
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本研修では、職場のメンタルヘルス対策を行う上でも欠かせない部下とのコミュニケーションの仕方を工夫することで、どのように心理的安全性を高めていくのか習得します。




