「本物の戦略とは、自社の事業に精通し、自社の問題点を把握していれば自ずと具体化するものです」と、すでに説明しました。それでは、この行動指針をいかに実践すればいいのでしょうか。方法は2つあります。
一つは、導入した商品やサービス、あるいは、導入した営業モデル・管理モデルの収益性を徹底して追求することです。つまり、PDCAを徹底的に回すことです。この結果、皆さんは、自社の事業に精通し、自社の問題点を把握して、次なる戦略につなげることができるのです。
もう一つの方法は、「尊い利益」に着目することです。"尊い利益"を増やすために、また、減らさないためにという観点から自社の事業に精通し、問題点を把握して、戦略につなげるのです。
前項で説明した2つの方法のうち、前者(=PDCAを徹底的に回すこと)については、皆さんも、会社のなかで好事例をたくさん見てきているはずです。ここでは、後者(=「尊い利益」に着目すること)について内容を深めます。以下に、8つポイントを掲げます。
【なぜ、わが社は存在しているのか
(なぜ、わが社は売上高を立てることができるのか)】
利益を確保するためには、十分な売上高が必要です。売上高がなければ、利益も生まれませんし、会社も存続できません。この点、会社が、なぜ、売上高を立てることができるのかを知ることは重要です。
ある製薬会社の社長が、「わが社は、特許があるから存在している」と言っていました。つまり、製薬会社は、新薬開発→特許取得という図式のなかで、売上高と利益が確保されているというのです。このように、製薬会社にとって、いい特許を取得することが生命線であるわけですが、社長は、もちろん、その前提として、新薬開発に競争力がなければ会社は存続できないといっているのです。
会社の存在理由がわかれば、つまり、なぜ、売上高があるのかを知れば、必ず戦略が描けます。たとえば、皆さんの会社の売上高がたった5社の顧客で8割構成され、100社の顧客で2割構成されているとしましょう。この5社のうち、2社が他の業者に取引をくら替えするとしたらどうするのですか。
【マーケット分析の3要素(=規模、成長性、競合の状況)を知ることは基本中の基本)】
損益分岐点分析が示すとおり、利益は、売上高の少しの変化によって、相対的に大きく変化します。このため、会社は、損益分岐点売上高を超えて、売上高を少しでも多く伸ばすことを基本動作においています。
この観点から、皆さんは、まず、マーケットの規模、成長性、そして、競合の状況をしっかりと掌握しなければなりません。売上高をどれだけ伸ばすことができるのか、また、それがどれほど容易いのか、難しいのかは、これらの3要素に大きく左右されるからです。
マーケット分析の3要素を理解したあとは、自社の商品やサービスに目を転じます。自社の商品やサービスは、その仕様や売り方を少し改善することによって、売上高をどこまで伸ばすことができるのだろうか。ライフサイクルの延伸についてはどうだろうか。また、未進出の地域や国への進出についてはどうだろうか。
このように、自社の商品やサービスについて、時間、空間、文化を超えた拡大可能性を探ることは、既存投資の有効活用になるばかりではなく、新商品や新サービスの開発の引き金にもなるのです。
新車を購入するとき、ディーラーから「これはニューモデルだから値引きしません」とよく言われます。彼らも強気です。この背景には、ニューモデルに要した莫大な開発費を早く回収したいとするメーカーの思惑があります。それにしても、彼らは、なぜ、ニューモデルに販売単価を高く設定できるのでしょうか。それは、ニューモデルが競合する他社の既存モデルよりも機能やデザインにおいて優れているからです。いい商品・サービスの提供は価格設定を有利にします。そして、営業を楽にさせます。皆さんの会社の商品/サービスの内容や、開発体制は、この点を十分ふまえているでしょうか。
家電製品やOA機器などの販売は、すさまじい価格競争にさらされています。マージンが圧迫され、損益分岐点を確保することがやっとというメーカーや量販店も多いはずです。消費者が一回限りの購入で長く使用する商品は、価格競争が激化しやすく、会社の利益が圧迫されがちです。
このような中で、価格競争と利益確保を分けて考えるというビジネスモデルが生まれてきました。たとえば、プリンターは安く売っても、プリンターの購入後に消費されるインクと用紙の販売で利益を確保しようとするものです。いわば、"損してもと取る"的な発想です。この手法は、携帯電話の販売にも使われました。
このような動きが、実は、広がりをみせています。昨今、どの銀行も住宅ローンの金利優遇販売に躍起になっています。これは、住宅ローンが成約すれば、その後に、給与振込みや公共料金の引き落しが獲得できること、また、ゆくゆくは、退職金の運用ビジネスにつながるからです。
ある自動車メーカーは、傘下に、証券業務が可能な金融会社を有しています。これは、高級自動車の購入者に、富裕層向けの投資信託を販売することを目論んでいるからではないでしょうか。皆さんも、自社の事業について、どこで競争し、どこで利益を確保するのかを、 是非、検討してみてください。
利益を確保するうえで、コスト面に目を向けることも忘れてはいけません。損益分岐点分析は、この点についても、大いに示唆的です。たとえば、マーケットが拡大し、売上高が増加すると予想されるとき、どのようなコスト戦略を取ればいいのでしょうか。
この場合、売上高が増加しても、総費用が増加しないように、変動費を固定費化することが得策です。高度成長期に、積極的な設備投資が行われたのはこのためです。
一方、マーケットが縮小し、売上高が減少すると予想されるときはどうでしょう。売上高の減少に歩調を合せる形で、総費用が減少することが望まれます。このためには、逆に、固定費を変動費化することが得策です。バブル経済の崩壊後、会社は挙って人員を削減しました。また、外注化も積極的に活用されました。これらは、固定費を変動費化するためのものです。
皆さんは、以上を踏まえて、マーケットの成長性を掌握した後、コスト戦略についてもしっかりと検討してください。
会社は、なんとしても生き残らなければなりません。このための条件は、プラスの利益を確保することです。皆さんの会社は、売上高を何割失うと損益分岐点売上高をヒットするのでしょうか。まず、この点をしっかりと掌握してください。そして、この状況を引き起こすリスクが何かをしっかりと洗い出してください。
利益が少ない会社は、ちょっとしたことでも損益分岐点売上高をヒットします。また、好業績を維持している会社でも、工場で大事故が起これば、操業度が低下し、これを起因にして売上高が大幅にダウンすることがあります。コンプライアンス違反を起こせば、顧客離れが起き、売上高が一気に減少します。国内マーケットでの急速な高齢化が、売上高減少に拍車をかけるかもしれません。競合他社の新しい技術が、自社の主力商品の売上高を直撃するかもしれません。
会社は、生き残るために、どれほどの売上高を最低限維持しなければならないのでしょうか。そのために、どのようなリスクを想定し、どのような手を打たなければならないのでしょうか。損益分岐点分析を、このようにリスク管理に役立てることも大切です。
事業に精通するための8つのポイントの最後として、皆さんに、どのような戦略や施策を打てばいいのかがすぐに分かる方法を伝授します。その方法とは、売上高を正しく因数分解することです。皆さんも、これに「なるほど」と思えるのではないでしょうか。
たとえば、わが社の売上高が営業人員比例型であるとします。
つまり、因数分解の姿として
「年間売上高= 商品単価×営業人員1人あたり年平均販売数×営業人員数」
という式が成り立っているとします。
これが正しい因数分解の姿であれば、「売上高を5%伸ばす」ために打つべき戦略や施策は、自動的に決まります。「一つは、営業人員を5%増やすことであり、もう一つは、営業人員一人あたりの年平均販売数量を5%アップさせるための手を打つこと」です。
現下の因数分解モデルを改善して得られる効果に限界がある場合には、このモデルを刷新することも必要です。「店舗販売ではなく、インターネットを活用したセールスモデルを導入しよう」などは、まさに、因数分解モデルの入替えにあたります。
因数分解モデルを入替える際には、くれぐれも、現下のモデルがもつ収益性を徹底的に追求したかをチェックしてください。これによって、新モデルの構築に役立つ情報が数多く得られるからです。
人材に関するお悩み
ダイバーシティ
人的資本経営
アセスメント
採用・離職防止
リーダー・管理職
組織風土・マインド
営業・マーケティング
組織運営
部門・組織向け
サービスラインナップ
講師派遣研修
公開講座
DX教育推進
動画教材
通信教育
セミナー運営
Web制作
人材アセスメント
人事コンサル
最新WEB
講師派遣研修
公開講座
動画百貨店
最新ニュース・記事
あなたにおすすめの読み物
発想力
ChatGPTはアイデア出しの優秀なパートナー!~上手く使いこなすコツとは?
3分でわかる!TRIZに学ぶ問題解決プロセス~2ステップで「発明」の原理をビジネスに応用する
理系思考と文系思考の融合が導く問題解決~論理力だけでなく想像力・発想力が問題解決の秘訣
役に立つ逆転の発想法~理論アプローチと歴史アプローチ
「もっと広い視野で」「もっと高い視座で」を実現するには~批判的思考・バイアス排除・俯瞰で物事の本質を捉える
「尊い利益」を生むための発想術
顧客ニーズを掴み、「儲かる仕組み」を築く~現代に求められるラテラルシンキング、デザイン思考と企画力
AIが幅を利かせる今、クリエイティビティは人に残された「最後の砦」となる
採用される企画はここが違う!企画の成功率を高める3つのベーシックスキルを強化する
企画書づくり - インタビューで聞く成功した人の「リアル」ノウハウ
製品3層モデル、デザイン思考、アンゾフの成長マトリクス~「売れる」製品開発のために知っておくべき3つのこと
思考力の使い方~クリティカル・ラテラル・ロジカルシンキング入門
ラテラルシンキング研修を語る~新たな発想を生み出す力を養う
ラテラルシンキング研修 体験談
クリティカルシンキング研修を語る~本質を見抜く力を養う
ロジカルシンキング研修を語る
イノベーションが起きる組織づくりとは~多様性を力に変え、変化に対応し続けるには
イノベーション人材をどうやって育てるのか - 三分間研修学
アイデアを発想する方法
応用が利くように指導する ~新人・若手を育てる2
生成AI/データ分析
ChatGPT×PowerPoint~生成AIで美しいスライドを生成できるようになるまで

1人から始められる業務効率化~Copilot Chatで事務作業のコストを削減する
無料で始める生成AI導入~Copilot Chat商用データ保護機能とChatGPT学習データ利用の停止申請(オプトアウト)
AIO・LLMOで成果につなげるWebマーケティング戦略
文系職員でもできる!生成AI活用による自治体向け業務の効率化とは
DXの最新トレンドと今後の展望:生成AI、パーソナルDX、全員参加型のDXへ
生成AI時代のコンテンツマーケティング〜LLMOとUX向上を見据えた、発見・選択・信頼のポイントをおさえる
「生成AIの上司」たれ!部下指導スキル(ティーチング)に学ぶ、生成AIでの記事作成力向上
ChatGPT利用の情報リスクとは?「自治体における生成AI導入状況」の調査結果と、組織が取るべき対策を解説
生成AIに代替されない3つのスキル~生き抜く鍵は?
文書作成がデキる人の5つの特徴~スピードと質を高めるコツと、生成AIの活用
生成AIと文書作成は相性抜群!令和の時代のスタンダードを身に付ける
実践ワーク2倍!「もっと学びたい」という声から生まれたChatGPT×マクロのレベルアップ研修
英会話初心者におすすめ!ChatGPTを味方に、英語力を強化する
メール作成に時間がかかってしまうあなたへ。ChatGPTという最強の時短パートナー
ChatGPTはアイデア出しの優秀なパートナー!~上手く使いこなすコツとは?
ChatGPTを活用してExcelの達人に~最短距離でマクロの技術を身につける
あなたにおすすめの公開講座
発想力
生成AI/データ分析
ChatGPT×Excel研修~知識ゼロからマクロを作る

ChatGPTのはじめ方研修~触って学び、明日の業務を効率化する(半日研修)
業務効率化のためのChatGPT活用研修(半日研修)
ChatGPTを活用したビジネス文書研修~文書作成の新スタンダードを学ぶ
ChatGPTを活用した発想力強化研修(半日研修)
ChatGPTプロンプトエンジニアリング研修~使いこなすための応用手法を学ぶ
Copilotのはじめ方研修~生成AIを仕事で頼れるパートナーにする(半日研修)
Microsoft 365 Copilotの使い方研修~Excel・PowerPoint操作を効率化する(半日研修)
業務効率化のためのCopilot研修~文書・Excel業務のコツをつかむ(半日研修)
Geminiのはじめ方研修~Webブラウジング機能で業務を効率化させる(半日研修)
あなたにおすすめの講師派遣
発想力
生成AI/データ分析
ChatGPT×PowerPoint研修~デザインとレイアウトを高速化する

ChatGPT×Excel研修~Excel初級者でもAIの力で使いこなす
ChatGPT×データ分析研修~AIドリブンな課題解決
ChatGPT×マクロ研修~レベルアップ編
ChatGPT×Pythonプログラミング研修~Excel・Web操作自動化編(3日間)
新入社員向けDX入門研修~ChatGPTに触れ、業務効率化のマインドを獲得する
生成AIで業務自動化研修~AIエージェントを自分専用の部下にする(半日間)
行政向け生成AI活用研修~役立つプロンプトの作り方
デザイン業務内製化のための画像生成AI活用研修(半日間)
あなたにおすすめの動画教材
発想力
生成AI/データ分析
Microsoft 365Copilotの使い方講座~Excel・Word・PowerPoint操作を効率化する
Claude活用講座~長文処理ができる生成AIで業務を効率化
ChatGPTを活用したビジネス文書講座~文書作成の新スタンダードを学ぶ
Geminiの使い方講座~Webブラウジング機能で業務を効率化させる
営業のためのデジタル活用講座~効率化して活動量をアップ
操作画面を見ながら学べるMicrosoft PowerPoint講座
デジタル時代のリテラシー向上講座~データの扱い方入門
【Excelすごい改善シリーズ】最初に知っておくべき7つのポイント
ChatGPT×Excel講座~知識ゼロからマクロを作る
Power Automate Desktop入門講座~定型業務を自動化する
あなたにおすすめのサービス
発想力
おすすめの研修シリーズ
情報活用
生成AI/データ分析
発想力
インソースからの新着メッセージ
業界随一の研修開発力を誇る
インソースの最新プログラム
250種類以上のコンサル事例!
組織の「したい!」に全力で応える
おすすめリンク
PICK UP
Web制作・プロモーション
人材育成
システム・ツール
コンサルティング
採用ソリューション
行政向けサービス
福祉団体支援