失敗例から考える効果的なアンケートの作り方~正しい情報を得る3つの秘訣
IT技術が急激に進化し、ビッグデータの蓄積が容易になった現代、ビジネスの成功には、データの存在が欠かせません。特にマーケティングでは、顧客の本音を的確に把握するために「アンケート」が重宝されます。
アンケートを用いて顧客の情報を得るには、質問文を正しく設計すべし
アンケートは、購入のきっかけや満足・不満足のポイントなど、顧客の頭の中を言語化・可視化できる数少ない方法です。しかし、何も考えずに実施すればよいものではありません。質問文が正しく設定されていないと、勘違いや嘘などが発生し、顧客を正しく捉えた回答が出力されません。歪められた意見を意思決定に活用すると、かえって逆効果になる可能性さえあります。
本記事では、アンケート設計時にどのような間違いが発生するのか、どのようにすれば正しい回答を導けるのかについてご紹介します。
3つの失敗例から学ぶアンケート作成時の注意点
失敗アンケート例1:質問内容があいまい
旅行会社がアンケートを実施する例を考えてみましょう。回答者の旅行頻度を調べるために、次のような質問を作りました。
・あなたは、よく旅行しますか?
(はい/いいえ)
上の質問では、アンケートの回答者によって「よく旅行する」の基準が変わってしまいます。年1回で「はい」と答える人もいれば、年3回で「いいえ」と答える人もいます。また、同じ年1回でも、国内旅行であれば「いいえ(あまり旅行しない)」、海外旅行であれば「はい(よく旅行する)」と答える人もいるでしょう。同じ「はい」という回答でも、実際の頻度が違うのは、旅行頻度を的確に示すデータとはいえません。
誰でも同じ基準で回答できるようにするには、以下のようにするのがよいでしょう。
・2024年に国内旅行に行った回数を教えてください
(0回/1回/2~3回/4~5回/6回以上)
失敗アンケート例2:質問が特定の回答を誘導している
次に、IT企業がアンケートを実施する例を考えてみましょう。回答者のAIへの関心を調べるために、次のような質問を作りました。
・近年、AIが非常に注目を浴びています。あなたは、AIに関心がありますか?
(はい/いいえ)
上の質問では「AIが注目されていること」が既に書かれていることで、印象を操作する恐れがあります。本当はAIに関心がない回答者でも「注目されているのであれば」と、「はい」と答えてしまう恐れがあります。また、2択の回答形式にすると、関心の程度がわかりません。同じ「はい」でも、AIに関する書籍を自発的に読んでいる人と、少し気になっているだけの人では、関心の深さに幅があります。
特定の方向に誘導せず選択肢に幅を持たせるには、以下のようにするのがよいでしょう。
・あなたは、AIに関心がありますか?
(関心がある/少し関心がある/どちらともいえない/あまり関心がない/関心がない)
失敗アンケート例3:前の質問の回答に連動する(キャリーオーバー効果)
キャリーオーバー効果とは、前の質問に対する回答によって、後の質問への回答に影響が出ることを指します。たとえば、環境への意識調査を行うためために、次のような質問を作りました。
・あなたは、SDGsを知っていますか?
・あなたは、環境に配慮した商品を購入する意向はありますか?
上の質問の順番では、回答が歪められる危険性があります。「SDGsを知っている」と回答した人が、「環境に配慮する商品を購入する意向がある」を本来より選びやすくなるのです。人は自分の回答に一貫性を保とうとする傾向があり、SDGsを知っているにも関わらず環境に配慮した行動を取らないのは、矛盾していると感じてしまうからです。
キャリーオーバー効果を軽減するには、設定した質問の順序をランダムにしたり、連続する質問で誘導が発生しないよう、中立的な質問を挟んだりするのがよいでしょう。
アンケートデータを活用するマーケティング分析研修
本研修は、アンケートにおける質問の設計方法はもちろんのこと、計画の仕方や実際の分析まで幅広く学ぶことができます。
アンケートは簡単なように見えて、人間心理を理解する必要がある奥の深い調査方法です。質問の言い回しや選択肢、順序によって回答が大きく変わってしまうのは決して珍しいことではありません。アンケートの真髄を学ぶことは、ビジネスにおいてより確かな意思決定を行うための第一歩となるでしょう。
研修のゴール
- アンケート調査を行う目的を明確化することができる
- 適切なアンケートの設問文を作れる
- クロス集計を理解する
受講者の声
- 分析課題と仮説設定について、今後自社で実施するアンケートに生かしていきたい
- ロジカルにアンケートを作成する方法を示してもらったため、大変有益だった
- アンケートの目的と仮説を明確にすることで、ニーズの実態を把握できるようにしていく
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本研修では、統計学の基礎知識に基づいたデータを読み解く力を習得します。身近なデータを扱い、それらを読み解く演習を繰り返し行うことで、実務経験のない方でもデータの読み方を理解できます。
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