3つの思考法~クリティカル・ラテラル・ロジカルシンキングの活用

仕事を取り巻く環境は激しく変化し、求められる知識やスキルも変化しています。ビジネスモデルも複雑になり、合併や買収など予想しなかったことが起きるのも普通なのが現状です。

このような中で、顧客やマーケットのニーズを的確にとらえ、最適な商品やサービスを開発・提供するべく知恵を絞ることは、企業組織の持続的な活動のためには不可欠になってきました。

そこで、脚光を浴びるようになったのが、”考える葦”である人間の「思考法」です。

今回は、ビジネスにおいて役立つ様々な思考法の種類や意味、使い方のコツ、留意点などについてお伝えいたします。ぜひご一読ください。

多様な思考法の背景 ~トリプルシンキングの浸透

(1)シンキングの洪水・思考法のインフレ

〇〇〇シンキングと名の付くものが、21世紀になって、多々出てきました。ビジュアルシンキング、システムシンキング、オリジナルシンキング、インテグラルシンキング、レバレッジシンキング、ソーシャルシンキングなど、まるでシンキングの洪水です。

あるいは、アナロジー思考、仮説思考、5W1H思考など〇〇〇思考法というのも星の数ほどあり、思考法のインフレ状態です。

ネーミングこそ違いますが、思考法は「発想思考」と「論理思考」の2つのカテゴリに整理できます。思考をオープンにするか(広げるか)、クローズドにするか(絞り込むか)の違いといえないこともありません。それにしても、我こそはという思考法が多いのは事実です。

(2)支持を集めるトリプルシンキング ~正しく疑い、正しく発想し、正しく考える

このような状況で、クリティカルシンキング、ラテラルシンキング、ロジカルシンキングという3つの思考法(トリプルシンキング)は、ビジネスパーソンからも支持されるものになりつつあります。

なぜでしょうか?

おそらく、日頃の業務で起こる問題・課題の解決や新しい企画の立案など、いろいろと考える場面で、人は知らず知らずのうちにこのトリプルシンキングを使用しているからだと考えられます。

一般的にビジネスパーソンは、例えば、物事や情報を疑い(クリティカルシンキング)、新たな視点からアイデアを出し(ラテラルシンキング)、それを実行するため周囲の賛同が得られるよう整理し説得する(ロジカルシンキング)というような使い方をしています。

そこで、これらトリプルシンキングへの理解を深め、より意識しながら、思考対象を多面的にとらえつつ、それぞれを適切な思考場面で効果的に使うことによって、より本質的・実践的な問題・課題解決や企画構想に導くことができます。

▼トリプルシンキング

トリプルシンキングとは、クリティカルシンキング、ラテラルシンキング、ロジカルシンキングの3種のことです

クリティカルシンキング ~10の思考のバイアス

Critical Thinking(クリティカルシンキング)は直訳すると、「批判的思考」です。物事や情報に対してまず疑問をもつ、という思考法です。しかし、何でもかんでも批判するということではなく、また、否定するということでもありません。

クリティカルシンキングを活用することにより、常識やバイアスに気づき、視野を広げ、できることの幅が広がります。どんな人も多かれ少なかれ思考に偏りがあり、自由な思考を阻害します。例えば、次のような「10の思考バイアス」から自由になるためには、意識してバイアスから逃れることが大事です。

▼10の思考バイアス

10の思考バイアスには、結論ありきで考える、新しいものを軽視する、新しいものを重視する、自分の記憶に依存する、初期情報に依存する、相関関係と因果関係を取り違える、経験が邪魔をする、他責で考える、希望的観測で考える、不確実性を過小評価するがあります。

ラテラルシンキング ~5つの発想法

Lateral Thinking(ラテラルシンキング)は直訳すると、「水平的思考」です。英国の医師であるエドワード・デボノが提唱しました。ラテラルシンキングとは、既成の理論や概念にとらわれず、様々な異なる角度から物事を見たり、物事の新しい組合せを考えることで、自由なアイデアを生み出すための思考法です。

論理的にタテ掘りして解を導き出すロジカルシンキング(別名:Vertical Thinking、垂直的思考)に対して、発想をヨコ(水平)に広げていくことで解を求めていく方法のため、水平的思考と呼ばれます。

代表的なラテラルシンキングのやり方としては、次の5つの発想法があります。

▼5つの発想法

5つの発想法とは、改善法、翻訳法、マトリックス法、定点観測法、合体法です。

ロジカルシンキング ~考え方に筋道を通し、主張と根拠を論理的に説明するフレームワーク

Logical Thinking(ロジカルシンキング)は直訳すると、「論理的思考」です。論理学(学問)でいうと、古代ギリシア以来、三段論法に代表される「演繹法」、個々の例から共通項を見つけ出し結論を得る「帰納法」、テーマが間違っていると仮定することで最終的にそのテーマの正しさを証明する「背理法」などが代表的な思考法です。

論理学で使用される場合と異なり、ビジネス上、「ロジカル(論理的)である」とは、「考え方に筋道を通し、主張と根拠を論理的に説明するフレームワーク(枠組み)」のことをいいます。物事を因果関係(原因・結果)、相関関係、包含関係などに整理し矛盾なく考える思考法です。また、ビジネス上では、「相手が納得できること」がポイントになります。

ビジネスにおいては、考え方の筋道が通っているだけでは不十分で、相手からの視点も意識することが不可欠だからです。筋道を立てて話を展開すると同時に、相手が共感できる流れに近づけていくことが必要です。

なお、ロジカルシンキングという言葉は、英語圏ではLogical thinkingではなく、Critical Thinkingと呼ばれることが多いともいわれています。日本では、あるコンサルタントたちにより、ロジカルシンキングのための様々なツールや手法が企業向けに提唱され、21世紀になり、ビジネスにおいてブームとなりました。

代表的なフレームワークに、MECE(ミッシーあるいはミーシー、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭字を取ったもの)があります。「全体像を捉える」ために、「モレ」や「ダブり」がないように要素を洗い出すことをいいます。

MECE

  • M:Mutually(お互いに)
  • E:Exclusive(ダブりなく)
  • C:Collectively(全体的に)
  • E:Exhaustive(漏れがない)

あるいは、「だから?(So what?)」と「どうして?(Why so?)」というフレームワークも有名です。手持ちの情報を「根拠」として「主張」を引き出すのが「だから?(So what?)」、「主張」を「根拠」とする情報で検証するのが 「どうして?(Why so?)」です。つまり両者は逆方向の、背中合わせの関係にあります。

▼「だから?(So what?)」「どうして?(Why so?)」

手持ちの情報を「根拠」として「主張」を引き出すのが「だから?(So what?)」、「主張」を「根拠」とする情報で検証するのが 「どうして?(Why so?)」です

思考法の使い方のコツと留意点

ロジカルシンキングはフレームワーク(枠組み)という点で、限界があります。

(1)ロジカルシンキングのフレームワークの限界

前提次第で結論が異なる

ロジカルシンキングでいうロジカル(論理的)というのは、前提に基づき推論し結論を導くこと、論証ともいいます。前提が違えば結論は異なります。

根拠の選択次第で主張が異なる

ロジカルシンキングの「だから?(So what?)」と「どうして?(Why so?)」も、「根拠」の選択次第で「主張」が異なります。無数にある根拠の中からの選択は、ある面において、人それぞれの恣意的なものです。したがって、根拠の選択が違えば、主張も異なります。

要素の分解(因数分解)のしかたにより対策が異なる

MECEの要素も、ビジネス上、一義的に決まることは少ないです。例えば、「売上を増やすにはどうしたらよいか」という点で、要素を分解する場合、業種などにも左右され、年代別あるいは地域別、さらに商品別など、いろいろ分解できます。年代別売上合計=地域別売上合計=商品別合計となるはずですが、どの要素を選択するかによってビジネス上の対策が違ってきます。

このように、ロジカルシンキングに限りませんが、フレームワークには限界があります。あくまでも、思考経済上の効率化のために意味があり、万能ではない点には注意を要します。

(2)ロジカルシンキングを補完するクリティカルシンキング ~本当か、他にないかと疑う

ロジカルシンキングには限界があり、それを補うのが、クリティカルシンキングです。前述の「①前提次第で結論が異なる」ということであれば、「前提」を批判的に検証して、前提の内容を入れ替えるのがクリティカルシンキングの役割になります。

あるいは、前述の「②根拠の選択」や「③要素の分解(因数分解)」も、クリティカルシンキングの活用により精度が高まるかもしれません。

「売上を増やすにはどうしたらよいか」という点でいえば、もしかしたら、既存顧客と新規顧客に要素分解するのが妥当かもしれません。ちなみに、売上高の因数分解の仕方も次のとおり数多くあります。このうち、自社においてはどれが妥当か考えてみましょう。

売上高の因数分解の例

  • 売上高 = 数量 × 客単価

  • 売上高 = 顧客数 × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

  • 売上高 = 販売数量 × 販売単価

    販売数量に着目

  • 売上高 = ( 顧客数 × 購買頻度 ) × 購買単価

  • 売上高 = 顧客数 × 購買単価 × 1回当りの購買個数 × 購買頻度

  • 売上高 = 総訪問件数 × 受注率 × 受注単価

    営業に着目

  • 売上高 = ( 顧客数 = 席数 × 満席率 × 回転率 ) × 客単価 × 営業日数 × 店舗数

  • 売上高 = 来店客数 × 客単価

    来店客数に着目

  • 売上高 = 来店客数 × ( 購入率 × 購入点数 × 商品単価 )

    購入率に着目

  • 売上高 = 販売数量 × 1品当り単価 

    販売数量に着目

  • 売上高 = 売場面積 × 坪効率

    売場面積に着目

  • 売上高 = ( 既存顧客数 + 新規顧客数 ) × ( 1品単価 × 買上点数 )

  • 売上高 = 商圏内需要額 × 地域シェア

    商圏・シェアに着目

結局、ロジカルシンキングにおいては、「それは、本当か(妥当か)?」「他にないか?」など疑う視点をもつことと、思考のバイアスから極力自由になるよう意識的に働きかけることが必要です。

(3)ロジカルシンキングを補完するラテラルシンキング ~イノベーションを呼ぶ

同様に、ラテラルシンキングも、ロジカルシンキングを補完する機能があります。前述のロジカルシンキングの「①前提次第」ですが、前提の選択肢を広げるのがラテラルシンキングです。既成概念や常識にとらわれず、新たな前提を選択することになります。これが、新たな商品やサービスを生みやすいことは想像できることでしょう。

例えば、「丼も箸もない米国で即席ラーメンを食べるとしたら」という前提を置いてラテラルシンキングで考えたのが、紙コップに麺を割って入れ、お湯を注いでフォークで食べるようにしたカップ麺です。あるいは、「食べた後のカップというゴミの収集をなくすとしたら」という前提を置いてラテラルシンキングで発明されたのがカップ(コーン)自体も食べられるソフトクリームです。

その他の思考法 ~仮説思考、アナロジー思考、デザイン思考

ビジネス上、トリプルシンキング以外で、意識して身につけておいたほうがよい思考法は「仮説思考」と「アナロジー思考」と「デザイン思考」です。

(1)仮説思考

仮説思考とは、今ある限られた情報だけで現時点で最も妥当だと思える結論を導き出す思考のことをいいます。

最近、ビジネスでは特にスピードが重要視されており、「100点満点でなくてもよいから、まず70点を目指す」というスタイルが一般的になってきたこともあり、試行錯誤において役立つ思考法の代表例です。仮説を迅速に立てて素早く検証し、フィードバックして新商品・新サービスを完成させるという点では、後述のデザイン思考ともよく似ています。

なお、仮説を迅速に立てる(仮説推論)とは、どのようなことかというと、次の例で比較するとわかりやすいと思います。ちなみに、この3つが伝統的な論理学における思考法です。

  • 演繹法:「雨が降ると、土が湿る。雨が降っている。その土は湿っている」
  • 帰納法:「これまで、雨が降ると、土が湿ってきた。雨が降ると土は湿る」
  • 仮説推論:「土が湿っている。雨が降ると、土が湿る。つまり雨が降ったに違いない

(2)アナロジー思考

自分が知っている情報や経験を「未経験の分野」にあてはめるという思考法を、アナロジー思考(類推)といいます。ビジネスにおいては、非常に簡単で効果があります。

他の国、同業他社、他業界にあるものを自分の業界にあてはめるということですから、ラテラルシンキングの発想法のひとつ「翻訳法」もアナロジー思考の一種とも言えます。また、プレゼンテーションなどで使う「比喩(たとえ話)」も近しいものですが、似て非なるものです。

(3)デザイン思考

最近で有名なのは、デザイン思考(Design Thinking)です。問題発見や解決のために、デザイナーが実践してきた手法を体系化したものです。スタンフォード大学のハッソ・プラトナー・デザイン研究所(通称d.school)が提唱する、『デザイン思考の5段階』という思考モデルがあります。

▼デザイン思考の5段階

デザイン思考は、共感、定義、発想、試作、試行の5段階で行います

終わりに ~思考内容の見える化の基本

最後に、トリプルシンキングをはじめとした各種思考法を使いこなすための基本を確認しておきます。

(1)思考内容の文字化

当たり前すぎて言及されていないのが、思考内容の文字化です。いろいろな思考法の前提として、まずは文字にして見えるようにすることが大切です。その効能として、次の4点ほどあるでしょうか。

  • 自分の考えが整理される
  • 自分の考えが俯瞰でき問題点や欠陥を見つけやすい
  • 自分の考えの範囲(スコープ)が明確になる
  • 他者との思考プロセスを共有しフィードバックを受ける

(2)5W1Hの順番

また、思考法の前提として、フレームワークの王様が5W1Hです。当たり前すぎますが、事実を記述するのにも重要ですし、ビジネスの進め方を考えるときにも看過できません。

調味料の「さしすせそ」をご存知でしょうか?「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」そのまま酢、「せ」醤油(せうゆ)のせ、「そ」は味噌のそになり、この順番で使用することが良いとされています。

実は、仕事の5W1Hにも順番があります。

まず一番に決めるべきなのは、理由(why)です。なぜ、何のためにやるかをしっかり決めておけば、自分のやりたい内容がブレません。

次に、どうやって実現するのか、方法(how)を決めます。

理由と方法が定まれば、それを実現できるのは誰か(who)が決まります。

ここまで決めると、何をするか,何をできるか(what)が具体的になってきます。

どういう理由で、どういう方法で、誰が、何をやるかまで決まれば、あとは実現可能で有効な範囲で、いつ(when)、どこで(where)やるかを決めるだけです。

この順番を間違えて仕事の手戻りを経験し、痛い目にあう人が多いものです。

(3)視点・視野・視座のバランス

思考するにあたって、どこを見て考えているかという視点、どこ(場所、時間)を見て考えているかという視野、どこから見て考えているかという視座についても、確認しておく必要があります。同じテーマでも、視点・視野・視座が違えば、考えた結果は異なります。

この点で、フレームワークというのは、視点・視野・視座を絞り込み、思考の支援をしている面もあります。フレームワークを上手く使えるようになることは重要ですが、例えば、課長と部長の視座の違い(限界)も意識しないといけません。

合わせて、鳥の目・虫の目・魚の目で見て考えることも重要です。

▼視点・視野・視座

視点・視野・視座のフレームワークは、考える際に、対象のどこに注目するか、範囲をどこまで広げるか、どの立場から見るかを確認するために用います

▼鳥の目・虫の目・魚の目

鳥の目・虫の目・魚の目とは、それぞれ、マクロで見て考えること、ミクロで見て考えること、時代や市場の流れを読むことです。

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