
新入社員研修などと並んで、新人や若手への教育方法としてまず挙げられるのが「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」です。先輩から後輩への現場指導は、単に業務を教えるだけでなく、仕事を継承し、組織の文化を引き継ぐためにも有益な教育方法です。
しかし、「実際にいざ自分が教えるとなると、難しさを感じる...」というOJT指導者さまの声もよくうかがいます。
そこで本日は、当社が年間19,219名(2018年4月~2019年3月実績)のOJT研修を実施する中で、実際に受講者の方からうかがったお悩みと、研修内で議論された意見などをご紹介します。OJT指導者の方だけでなく、その監督者の方や人事ご担当者さまも「OJT現場のあるある」を知っていただき、今後の教育にお役立てください。
こういったケースは、OJT指導者としてはショックなものです。「あれだけ教えたのに!」と愚痴のひとつも言いたくなりますよね。
OJT研修では、こういった場合にどのように対応するか、チームでディスカッションします。
例えば、このお悩みに対しては、ただ教え込むだけでなく「どうしてできなかったのか」「なぜミスが起きたのか」など、背景を丁寧に聞き、整理してあげるのが良いのではという意見が出ていました。
一緒に考えてあげるという姿勢を見せつつ、質問や対話によって不備を自覚させるのは、確かに有効な手段の一つです。「どう考える?」「どうすればいいかな?」と質問しながら自分で気づかせると納得感が強く、その後の業務も身につきやすくなります。このように、能力や考えを引き出すコーチングを駆使して育成していくことは重要です。
ただ忘れてはならないのは、自分の教え方・指示の出し方が本当に曖昧だった可能性も否定しないことです。指導者として、明確に分かりやすく指示を出していたか、相手に復唱させるなど理解度をきちんと確認したか、初めて業務を行う人の目線に立てていたか、などを謙虚に振り返りましょう。
ちなみに、イマドキの若手世代は、授業形式の研修を受けていないと「教えてもらっていない」と感じる傾向にあります。業務によっては、OJTだけでなく勉強会などの時間を作って講習することも一案です。
プライベートを仕事に侵食されたくないと感じている新人も多いのでしょうか。これもよくあるお悩みです。確かに真っ向から訊かれると、どれが業務でどれが自己研鑽か、定義が難しい場合もあります。
研修ではこのお悩みに対して、
・業務を後回しにすることで起きる影響について話す
・手が空いている証拠なので、他の業務を依頼する
・「これは今やらなきゃいけないことかな。どう考える?」と質問してみる
など、様々なスタイルでの対応方法が意見されました。また、「業務に絶対必要な資格取得であれば、業務時間を使うことは認めるべき」という考えもありました。もちろん、いずれも間違いではありません。
資格勉強やスキルの習得についてあらかじめ定義が定まっていないと、指導者にも共に迷いが生じやすいものです。今回のようなケースであれば、OJT指導者は、不安なら自分だけで判断せず、上司にきちんと確認を取るのも手です。組織や上司側の方は、OJT指導者の負担を減らすためにも、自己研鑽といえど、曖昧な指示を出さないよう注意しましょう。
また、この場合に注意すべきなのは、頭ごなしに「家でやれ!」「常識でしょ!?」などと全否定しまうのは得策ではないということです。「勉強していること」自体は決して悪い事ではありませんので、その部分は認めたうえで、業務として適切かどうかの判断や、優先順位を指導するようにしましょう。
新人や若手が「やめたい」と言ったり、急に休みがちになるなどの不調が見られた際、OJT指導者がどう対応するかは非常に悩ましいところです。
ある研修では、このケースに対して「何日か休ませてもよいのでは」「クリニックを一緒に探してあげる」など、事態を重めに捉える意見が多く聞かれました。メンタル不調に早めに対応しようとする、最近の傾向を感じます。
もちろん、明らかに支障が出ている場合は具体的な対処が必要です。しかし、表立った症状がない状態で「メンタル不調だ」と安易に断定してしまうことは、かえってストレスを増幅させるリスクもはらんでいます。
まず大前提として、OJT指導者はひとりで判断せず、上司や組織の判断を仰ぐようにしましょう。そのうえで、特別な対応をせず見守ろうとなった場合には、「最近忙しいよね。眠れてる?」「ご飯は食べてる?」「業務はパンクしていない?」などと単純に話をきくところから始めてみましょう。
"うつ"っぽいかなと感じても、少し日常業務に疲れただけ、ミスで凹んでいるだけ、キャリアに漠然と不安を抱えているだけ、という可能性もあります。OJT指導者は自分のできる範囲で、「あなたと一緒に働きたい!」と伝えて、やる気や自信を引き出すようにしてみましょう。
ほめることに抵抗があるという方は、大勢いらっしゃいます。仕事ができるようになった上司や先輩からすれば、できていないことほど目についてしまうものですよね。
研修でも、次のような意見がよく挙がります。「私が新人の時は、今より遥かに厳しかった」「営業は数字が絶対。数字があがっていないから、安易にほめられない」「ホウ・レン・ソウなんて当たり前でしょう?」...たしかに、自分の育った職場環境とのギャップなどで、ほめることに違和感を持つのも当然のことです。
しかし、「姿勢を認める・プロセスを見てもらえる」といったことは、驚くほどモチベーションに影響します。指導者からのほめ言葉によって自分の業務に確信が持て、パフォーマンスが上がることは十分ありえます。
手放しにほめずとも構いません。まずは、今できている「当たり前のこと」を認め、言葉にして伝えることから始めてみましょう。普段は会話がないのに突然ほめると驚かれてしまうかもしれませんが、真摯に伝えれば悪い気持ちにはならないはずです。それでも抵抗があるという方は、まず常日頃の会話の量を意識的に少し増やして、良好な関係を築くところから始めてみてください。
貴社の現場でも、類似したお悩みがあるのではないでしょうか。
OJTは大変な業務ですが、「指導を通して自分もステップアップできる」という前向きな面があります。立場も文化も異なる後輩の気持ちを考えながら育てることは、OJT指導者にとって大きな成長につながります。いきなり完璧を目指す必要はありません。周囲の力を借りながら、教えるほうも教わるほうも双方が成長するのだと考え、組織全体で前に進んでいきましょう。
<関連サービス>
【公開講座】OJT指導者研修~新人・後輩指導の基本スキル習得編
【公開講座】OJTステップアップ研修~関係構築・フィードバック編
■関連読み物一覧
公開
OJTトレーナーが必ず身につけるべき4つの力~組織方針の理解・リーダーシップ・覚悟・自己点検を深掘りする
OJTトレーナーに求められる4つの力を取り上げ、育成の質を高めるための視点をまとめたコラムです。組織方針の理解、リーダーシップの発揮、覚悟と責任、自己点検のポイントを具体的に解説し、明日からの指導に生かせる考え方を示します。
公開
店舗スタッフの育成は「仕組み」で変わる!課題の言語化から育成計画・実行・フォローまでを徹底解説
店舗スタッフの育成に悩む店長や育成担当者向けに、現場で実践できる「設計・実行・フォロー」の育成ステップを解説します。自店舗の育成課題を具体的に言語化し、効果的な育成計画を描くためのポイントを紹介。スタッフが自ら考え行動する「成果が上がる店舗づくり」を実現するためのノウハウと、おすすめの研修サービスをご案内します。
公開
「結論が見えない」部下の報告書を「1分で判断できる文章」に変える!上司の文書指導術
「何が言いたいか分からない」と言われる部下の報告書は、指導次第で短期間に改善できます。本コラムでは、1分で結論に辿り着く文章へ変えるための3つの具体的な指導ポイントを解説します。
公開
新人が辞めない組織は何をしているのか?~配属前の「関係づくり」がOJT成功のカギ
本記事では、配属前から信頼関係を築き、新人の定着と成長を支えるOJTトレーナー・トレーニーの関係づくりの重要性をまとめています。個別最適な育成と現場で実践できる指導力を養い、OJTの不安を解消して育成を成功へと導きます。
公開
OJTが成功する現場の秘密!新人の不安を見抜き実務と考え方を同時に育てる
新人が抱える不安を踏まえ、OJTを成功させるための視点を整理したコラムです。実務能力と考え方の軸を同時に育てる方法、OJTが形骸化しやすい落とし穴、OJTとOff-JTを組み合わせる理由をまとめ、明日からの育成に取り入れやすい形で構成しています。
公開
「年上の部下」を最強のパートナーに変える~シニア非正規社員の力を引き出すマネジメント6つのステップ
「年上で接しづらい」「任せ方がわからない」そんな悩みはありませんか?本記事では、シニア非正規社員を戦力として活かすための、現場で実践できるマネジメントの考え方と関わり方を紹介します。
公開
新人・若手社員の早期離職を防ぎ即戦力化する指導術~計画的な育成とタイプ別アプローチ
新人・若手社員の早期離職を防ぎ、即戦力化するための指導術を解説。行き当たりばったりの「なんとなく指導」を脱却し、育成計画の策定、Z世代のタイプ別アプローチ、KPT法を用いたフィードバックスキルなど、現代の指導者に求められる具体的な実践メソッドを紹介します。
公開
OJTが成功する職場は何が違うのか~監督者が実践する3つの環境づくりと支援のステップ
OJTを効果的に進めるためには、育成計画だけでなく、監督者が環境を整え、トレーナーを支える仕組みが必要です。本コラムでは、部署内の協力体制づくり、集合研修の活用、最終責任者としての関わり方など、育成を前に進めるための具体的なポイントを紹介します。
公開
上司が今日からできる文章指導~部下のビジネス文書を読みやすくする3つの改善策
部下のビジネス文書が読みづらい背景には、書き手の立場の曖昧さや構成の乱れがあります。上司が今日から実践できる3つの改善策として、立場の明確化、読み手の流れに沿った構成、定型フォームとチェックシートの活用を整理し、文章の質を安定させる方法をまとめています。
■関連シリーズ一覧
■関連商品・サービス一覧
公開
【部下のやる気を引き出すシリーズ】業務配分(スライド付き)
公開
【部下のやる気を引き出すシリーズ】育成伴走(スライド付き)
公開
【部下のやる気を引き出すシリーズ】キャリア支援(スライド付き)
公開
<事前アンケート付き>OJT研修~部下・後輩指導の基本スキルを習得する(2025年版)
公開
【部下のやる気を引き出すシリーズ】ほめ方(スライド付き)
公開
【部下のやる気を引き出すシリーズ】叱り方(スライド付き)
公開
年上メンバーへの教え方研修~粘り強い伴走でチーム力を最大化する(1日間)
公開
リバースメンター講座~若手の視点で上司・先輩を支援する(英語版)
公開
管理職向けフィードバック向上研修~インシビリティに注意し、効果的な指導を行う(1日間)
下記情報を無料でGET!!
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ

登録は左記QRコードから!
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。