「成長企業の人材育成」

安藤弘一講師「管理職に求められる能力について」
 

成長企業における障がい者の活躍推進

 -「法定雇用率達成」が目的であってはミスマッチの結果で終わる-


 

                          ※この記事は平成23年6月1日に掲載しました

■障がい者雇用の実情把握

厚生労働省の『平成23年障害者雇用状況の集計結果』や『平成25年版障がい者白書』によれば、国内の障がい者数は約744万人(身体障がい者366万人・知的障がい者55万人・精神障がい者323万人)とのことです。この人数は日本の国民の6%がなにがしかの障がいを有していることになり、人口1000人あたりでは、身体障がい者29人・知的障がい者4人・精神障がい者25人となります。また、障がい者雇用の実状は次のようになっています。


<民間企業>(法定雇用率1.8%)
・雇用障害者数は 36万6,199人
・実雇用率は 1.65%
・法定雇用率達成企業の割合は 45.3%

<公的機関>(同2.1%、都道府県などの教育委員会は2.0%)
・国:雇用障害者数 6,869人、実雇用率 2.24%
・都道府県:雇用障害者数 7,805人、実雇用率 2.39%
・市町村:雇用障害者数 2万3,363人、実雇用率 2.23%
・教育委員会:雇用障害者数 1万2,154人、実雇用率 1.77%

<独立行政法人など>(同2.1%)
・雇用障害者数 7,231人、実雇用率 2.08%


2013年度に現行1.8%の障がい者の法定雇用率を2%へ引き上げることが閣議決定され、企業の障がい者雇用責任はますます強くなってきています。しかし、実際の実雇用率は、1.65%ですので、現行法定雇用率でさえ半数以上の企業が未達成です。障がい者の雇用率を2%にするためには、民間企業だけでも約8万人の新たな障がい者雇用が必要ということになります。つまり、企業が法定雇用率達成をクリアーするためには、約8万人を雇用する必要があるのです。裏を返せば約8万社が新たに障がい者を一人ずつ採用しなければならないということです。しかし、単純に障がい者の受入数を拡大すればことが足りるということではありません。あくまでも自社の業務遂行をしっかりと行ってくれる人でなければ、採用したが結果的に適性に合わない人材を採用することで互いに不幸な結果になります。

■障がい者の採用をミスマッチに終わらせてはならない

ここで障がい者雇用で新たな問題が発生しています。それは、障がい者の中で現実に求職活動を展開しているのは、5~10人に1人程度といわれていることです。障がい者雇用を積極的に推し進める企業であっても「障がい者だから」採用するわけではありません。あくまでも当該業務を行ううえで、様々な配慮は必要であるとはいえ健常者の働きと遜色のないパフォーマンスを発揮することが期待できる障がい者を採用するのは必定です。先にも述べましたが、この観点がなければミスマッチの連鎖になってしまうからです。

おそらく、5~10人に1人の求職活動を展開している障がい者は、健常者と同等のパフォーマンスを発揮する人びとです。すると必然的に障がい者の採用現場では、言葉が適切ではないかもしれませんが一般的には、「売り手市場」となってきます。

そこで、障がい者雇用を志向する成長企業は、採用する人材に「何を求め」「どのような仕事を行ってもらうのか」、さらには「求めるスキル」や「職務要件」を可能な限り明確に明文化する必要があります。同時に健常者と障がい者の役割区分と業務フローを明確にする必要もあります。

このように考えるならば、新卒・中途を問わず一般の採用とまったく同じで、障がい者の採用と育成は、自社の業務展開のあり方などを全社的に再構築していくプロセスの一環でもあると位置づける必要があるということです。繰り返しますが「法定雇用率達成」が目的ではなく、あくまでも"自社に必要な人材はどのような人材であるのか"という自社分析が必要ということです。自社のどの部門や業務を担当してもらうのが最適かという発想が必要です。

もちろん、障がい者を受け入れるにあたっての施設の整備などハード面の対策も必要になります。しかし、障がい者の活躍を推進するにあたっては、社内での健常者の就労意識の向上がなされていなければ意味がありません。障がい者を受け入れるうえで必要となる業務改善や業務効率の一層の推進なども重要な課題になると思います。このように考えれば障がい者の活躍推進は、成長企業にとってソフト面での業務改善のよい契機にもなると思います。

併せて、給与体系、所定労働時間の設定など多様な人材を活用するダイバーシティの観点での労務管理体制の構築も必要になってくると思います。当然ながら障がい者の活躍推進にあたっては行政との密接な連携も必要になってくるでしょう。

こうした諸措置は確かに健常者のみの職場よりはいくつかの負担も発生します。しかし、この負担は、成長企業がさらに拡大していくうえでの人事労務政策にとって、有形無形の投資であり蓄積となってくるものであるという考えが必要です。

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◆本間  次郎◆

株式会社ノイエ・ファーネ  代表取締役

1954年生まれ。大学在学中より出版・編集業務に携わり、主に労働経済関係をフィールドとし取材・執筆、編集業務に携わる。1992年から中小企業経営 者向け経営専門誌の編集および、教育・研修ツール(冊子媒体、ビデオテープ)等の作成、人材の教育・育成に関する各種オープンセミナー・インハウスセミ ナー企画の立案・実施、人材開発事業・人事コンサルティング業務に従事。
2010年11月に『人と企業組織が互いに「広い視野」「柔軟な思考」「健全な判断」に基づいて行動し、最適な働きの場を創り出していく協働に貢献する』を使命とする株式会社ノイエ・ファーネを設立。

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