「成長企業の人材育成」

安藤弘一講師「管理職に求められる能力について」
 

成長企業における労務管理について

  -今なぜ、成長企業の管理職に労務管理が求められるのか-

日本の高度成長期には、個別企業の労務管理の中心は一部の産業構造転換企業の労働争議を除き、春闘に代表される一括賃金交渉、人員確保や福利厚生を含む労働条件の改善がメインでした。

労使交渉も幾つかの例外を除いて、会社と労働組合との関係が中心で職場段階での労務管理は問題視されていなかったと思います。極端にいえば現場の管理職には、複雑な労務管理対応が求められることはなかったと思われます。

つまり、現場の管理職には企業の経営課題と合致した人事マネジメントは不必要(考えなくとも済まされる)であったともいえます。

極端にいえば職場のガバナンス機能は、ある意味で労働組合が支えていた印象さえあります。ところが、今日このガバナンス機能は期待できません。
さらに、雇用形態も多様化し「正社員」だけではなく、有期契約、派遣、パート社員などさまざまな雇用条件下の人びとが一つの職場に混在しています。

そこで現場の管理職には、直接的に個々社員への労務管理の役割が課せられるようになっていると思います。労務管理の優劣が会社全体の帰趨をも決するほど重要視されているといっても過言ではありません。現場の管理職に労務管理の知識と機能が蓄積されていなければ、管理職として通用しない時代です。

「人事労務管理は人事部の仕事であり、ラインの管理職には関係ない」などということが通用しなくなってきています。

■なぜ、現場の管理職に労務管理が求められるのか

労務管理は、広義に採用、勤怠管理、給与・報酬の計算や計画、社員教育・育成をはじめ日常的な福利厚生、あるいは労使関係の調整などの管理業務全般としてイメージされます。
一方で、労務管理は個々の企業の抱える新たな課題や事業計画(経営戦略)とは直接的関係性が見出しにくいと思われがちです。
そこで、現場のラインマネジメントを担う管理職の中には、「労務管理は人事部の仕事」という意識を持つ傾向がいまだに存在しています。
確かに労務管理を単純に「定型的労務管理業務」と狭義に位置づけるならば、その業務をアウトソーシングすることさえ可能となります。
既に給与計算などは多くの企業で「アウトソーシング」しているのも現実です。

現場の管理職に必要な労務管理とは、企業にとって最大の資産であるはずの「人的資源をいかに有効に活用していくか」という視点に立ったマネジメント機能なのです。このように考えるならば、仮に新入社員が配属された場合に「こんな新人をなぜ採用したのだ...」と人事部に不満をぶつけることが、現場の管理職として自らのマネジメント機能の欠落を自己暴露してしまうことに気づくはずです。

「企業が成長していくために現場の管理職に求められているのは、如何にして「現状の自社」に適合する採用、教育、評価、報酬の計画を現場として立てて人事部と恒常的にすり合わせを行うかということです。そして変化に対応できる企業組織としてどのように「組織開発」を展開していくのか。こうした経営の戦略的な視点に立って自らの現場としての労務管理を実践することが求められています。

■労務管理の機能不全は職場を崩壊させる

現場の管理職は「会社で発生していることは、全て自らに関わりがあること」との認識が重要です。これは決して人事部に責任転嫁してはならないということです。勤怠管理一つとっても現場の管理者の姿勢が問われてきます。

たとえば、法外な「未払い残業請求訴訟」を起こされ、あわてて人事部が調べてみたら、実は同僚に「タイムレコーダーの打刻」を依頼して残業時間を誤魔化すことが組織ぐるみで行われていた。しかし、結果として証拠を提示できず和解せざるを得なかった、というケースがあります。

このケースでは現場の管理者が「見て見ぬふり」をしていため、職場秩序が崩壊していたわけです。現場の管理職の役割は部下に「正しいことを行わせる」ことです。労務管理はその前提条件であり、曖昧にしている企業に業績向上はあり得ません。

会社の成長には組織モチベーションが不可欠です。そして個々人のモチベーションは本人の資質だけではなく、管理職のマネジメント資質との相乗効果でしか発揮されないものです。

併せて現場の管理職には「安全配慮義務」が問われていることを忘れてはなりません。各種ハラスメントに対する対応も当然労務管理の一環として意識していなければなりません。現場の管理職には、労務管理視点に立って自部門の組織診断を行う責任が課せられているのです。


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◆本間  次郎◆

株式会社ノイエ・ファーネ  代表取締役

1954年生まれ。大学在学中より出版・編集業務に携わり、主に労働経済関係をフィールドとし取材・執筆、編集業務に携わる。1992年から中小企業経営 者向け経営専門誌の編集および、教育・研修ツール(冊子媒体、ビデオテープ)等の作成、人材の教育・育成に関する各種オープンセミナー・インハウスセミ ナー企画の立案・実施、人材開発事業・人事コンサルティング業務に従事。
2010年11月に『人と企業組織が互いに「広い視野」「柔軟な思考」「健全な判断」に基づいて行動し、最適な働きの場を創り出していく協働に貢献する』を使命とする株式会社ノイエ・ファーネを設立。

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