外国人がつまずく、行間を読む日本式コミュニケーションとは?
「以心伝心」や「沈黙は金なり」、「あうんの呼吸」など、日本には言葉を交わさなくてもお互いに理解し合えるという考え方が根強くあります。言葉や意味が不明確であっても、相手には伝わっていると信じる文化です。
バーナード・ショーが言った「コミュニケーションの最大の問題点は、それが達成されたという幻想」のように、何か言葉を発するだけでなく、発さなくても自分の存在感が伝わっているという錯覚にとらわれがちです。
ハイコンテクスト文化の日本
日本は「ハイコンテクスト文化」の代表的な国として知られています。この「コンテクスト」とは、話し手と聞き手が共有する文化的背景や文脈のことを指します。ハイコンテクスト文化では、話し手と聞き手との間に共通する理解が多いため、言葉を尽くさなくても何となく相手の意図が伝わるという特徴があります。
この考え方は、アメリカの人類学者エドワード・ホールによって提唱されました。日本は島国であり、文化的・人種的な多様性が少ないため、言葉を交わさなくても暗黙知を共有できる状況が生まれやすいのです。これが、言葉で全てを伝えなくても「通じる」という感覚を生んでいます。
ローコンテクスト文化との違い
一方、ローコンテクスト文化では、話し手と聞き手の共通項が少ないため、言語化して明確に伝えなければなりません。アメリカなどでは、曖昧さを排除して、単純明快にメッセージを伝えることが重要視されています。このように、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化は対照的なスタイルを持っています。
アメリカは最もローコンテクストな国として位置づけられており、日本はその反対で、最もハイコンテクストな国とされています。
日本式のコミュニケーションがもたらす誤解
異なる文化背景を持つ人々がコミュニケーションを取る際、最も重要なのは「言葉」です。アメリカでは、徹底的に言葉を使ってメッセージを伝える教育が行われますが、これとは逆に、日本では「行間を読む」スタイルが重視されます。
この日本式のコミュニケーションは、海外の人々には馴染みにくいものです。例えば、日本語で「難しい」と言った場合、アメリカ人には「困難だ(difficult)」という意味なのか「できない(impossible)」という意味なのかが不明瞭です。日本語は同音異義語が多く、文脈によって意味が変わることが頻繁にあります。このような文化の違いから、誤解が生じやすいのです。
日本人と円滑なコミュニケーションを図るために
日本企業での円滑なコミュニケーションには、日本特有の文化や習慣を理解することが重要です。特に、日本人のコミュニケーションスタイルやよく使われる言葉の意味、組織内での意思疎通のポイントを押さえることが、職場での信頼関係を築くカギとなります。
挨拶や聴く力、訊く力といった基本的なスキルを身につけることで、日本人とのコミュニケーションがスムーズになり、仕事の効率が格段に向上します。
(外国人・帰国子女向け)日本人と一緒に働くためのコミュニケーション研修
日本企業で働くうえでは、日本語や日本人の特徴を踏まえたうえで、企業文化を理解することが求められます。組織内で円滑に意思疎通を図るためには、背景や意図を読み取りながら、相手に応じたコミュニケーションを取る力が必要です。
この研修では、日本企業の特徴を理解し、日本人のコミュニケーションの取り方や、よく使われる言葉の意味・使い方を学びます。挨拶や聴く力・訊く力など、円滑なコミュニケーションに必要な基本スキルの習得を目指します。
よくあるお悩み・ニーズ
- 日本特有の文化が分からずちゃんと働いていけるか不安
- 日本企業の特徴や文化を理解したい
- 組織の中で円滑なコミュニケーションを取るためのポイントを知りたい
本研修の目標
- 日本企業の特徴を理解できる
- 日本人との適切なコミュニケーションの取り方ができる
- よく使われている言葉の意味や使い方を理解できる
- 円滑なコミュニケーションに必要なスキル(挨拶・聴く・訊く)を修得できる
※本研修は、原則として日本語で実施いたします。
受講には日常会話レベル以上の日本語能力が必須となります。(参考:JLPT N3以上推奨)
セットでおすすめの研修・サービス
外国人社員受け入れ研修~相互理解を深め、気持ちよく働ける職場をつくる
日本と海外との働き方・文化の違いを理解し、外国人社員が抱える悩みを把握したうえで、協働のために必要な考え方を学んでいただきます。
日本式のビジネスマナーの教え方や、良好な関係を築きながら仕事を進めるためのアサーティブコミュニケーションスキル、自己開示の重要性などをワークを通して習得していただきます。
(日系グローバル企業・外資系向け)クロスカルチャー・マネジメント研修(1日間)
グローバルリーダーの課題は文化的背景の異なるメンバーを統率して目標を達成することです。本研修は異文化理解の概論に留まらず、メンバーとの相違点や共通点の発見、アンコンシャス・バイアスについて受講者双方の「語り」や気づきを重視しています。
加えて、対人スキルやコンプライアンスについても多様性を前提とした望ましいあり方を学び、ビジネス感覚を国際基準にアップデートします。これらを踏まえてチームのビジョンを示せるようになることで、多様なメンバーを束ね、人材マネジメント最大の目的であるシナジー創出を推進できるようになります。
日本企業での働き方講座
外国人や帰国子女の社員が日本企業の慣習に戸惑う場面を、具体的な事例を通して紹介するショートプログラムです。たとえば、正午近くなのになぜ「おはよう」と挨拶をするのか、「ご苦労さま」と「お疲れさま」の違い、真剣に聞いているのに態度を指摘されるといった、考え方や文化の違いから生じるコミュニケーショントラブルを解説します。
チームワークや上下関係を重視する日本独自の価値観を理解し、職場で求められる細やかな気づかいに目を向けることで、同僚や上司との関係が円滑になり、前向きなコミュニケーションが可能になります。