「悪気はなかった」ではもう済まされない!無自覚ハラスメントを防ぐ3つの行動習慣~目的・配慮・フォロー

「そんなつもりじゃなかった」「冗談のつもりだった」「自分は関係ないと思っていた」。職場で起こるトラブルの多くは、こうした「何気ない言葉や行動」から生まれています。悪気のない言葉や態度が、知らず知らずのうちに誰かを傷つけているかもしれません。
いま増えているのは、明確な加害ではなく、無自覚に人を傷つけてしまうハラスメントです。働き方も価値観も多様化した今、「常識」や「普通」の基準が人によって異なる中で、誰もが当事者になり得るリスクを抱えています。
この記事では、無自覚ハラスメントが起こる背景を踏まえながら、日々の言動を見直すための3つの行動習慣「目的」「配慮」「フォロー」をご紹介します。
「常識」のズレが、すれ違いを生む
「自分はそんなつもりじゃない」「相手が気にしすぎだ」と感じた経験は、多くの人にあるかもしれません。けれど、その「そんなつもりじゃない」が、相手を傷つけてしまうことがあります。
たとえば、励ましのつもりで言った「若いのにしっかりしてるね」という言葉。受け取る側によっては、「年齢で判断された」と感じることがあります。
多くの場合、言葉の裏に悪意はありません。それでも、相手の立場や状況、コンディションによって受け取り方は変わります。特に仕事の場では、上下関係や立場の違いが「圧」として働くこともあります。「気にしすぎでは?」という一言で片づけてしまうと、相手の感じた違和感を軽視することになります。ハラスメントの芽は、こうした小さなすれ違いから生まれます。
「気づかない」ことが、いちばんのリスク
ハラスメント防止というと、「やってはいけないこと」を暗記するものと思われがちです。しかし、実際に大切なのは、人と人との関係性をどう築くかという視点です。厳しい言葉でも信頼関係があれば「指導」になりますが、同じ言葉でも信頼がない状態で言えば「攻撃」に感じられます。つまり、問題は言葉そのものではなく、その背景にある関係性や意図にあります。
「自分はハラスメントとは無縁」と思っている人ほど、無意識のうちに人を傷つけてしまうリスクがあります。ハラスメントの多くは「加害の意図がなかった」ケースです。悪気がないからこそ、気づきにくく、放置されやすいのです。自分の言葉が相手にどう届いているかを想像する。その小さな意識の積み重ねが、無自覚なハラスメントを防ぐ第一歩です。
無自覚ハラスメントを防ぐ3つの行動習慣
1.目的をもって伝える
感情のままに言葉を発してしまうと、意図しない圧力になることがあります。「なぜそれを伝えるのか」「どんな行動を促したいのか」を明確にしてから話すだけで、印象は大きく変わります。
「なんでできないの」ではなく、「どうすれば次はうまくいくと思う?」と問いかけてみる。目的が「叱る」から「支える」に変わるだけで、伝わり方も相手の受け止め方も180度変わります。
言葉選びよりも、まず「意図」を整える。目的が明確なコミュニケーションは、誤解を減らし、信頼を育てます。
2.配慮を忘れない
同じ言葉でも、相手や場面によって「温度」が変わります。「誰に」「どんな状況で」「どんなトーンで」伝えるかを意識するだけで、誤解は大きく減らせます。
特に、忙しいときや焦っているときほど、言葉が強くなりがちです。一呼吸おいてから話す。たったそれだけで、言葉の角が取れ、相手の受け止め方が変わります。
配慮とは、遠慮ではなく「相手への関心」です。どうすればこの人に伝わるかを考える姿勢こそ、信頼関係の礎になります。
3.フォローする
伝えたあとにフォローする。この習慣があるかないかで、職場の関係性は大きく変わります。
注意や助言のあとに、「さっきの話、気になっていない?」と声をかける。それだけで、相手は「ちゃんと気にかけてくれている」と感じ、関係が深まります。
完璧な言葉よりも、関係を整え直す姿勢のほうがずっと大切です。フォローの一言が、信頼を取り戻すきっかけになります。
「ハラスメント未満」を見逃さない
ハラスメントという言葉が注目されるほど、「これはセーフ?」「ここまでは大丈夫?」といった線引きばかりに意識が向きがちです。しかし、明確なハラスメントだけを防ごうとしても、現場の空気は変わりません。本当に重要なのは、「まだ起きていない違和感」に気づけるかどうかです。
「少し言い過ぎたかもしれない」「今の反応、気にしていたかもしれない」。そう感じた瞬間を放置せず、対話につなげることが、関係を修復する第一歩になります。
「ハラスメントかどうか」ではなく、「人を傷つけていないか」で考える。そのシンプルな視点が、職場の安心を守ります。
信頼をつくる3つの「尊」
心理的安全性の高いチームにある共通点は、相手を人として扱う姿勢があることです。
- 尊敬:相手の努力や強みを認める
- 尊重:立場や考え方の違いを受け入れる
- 尊厳:注意が必要な場面でも、相手の価値を否定しない
「お互いさま」という意識を持つだけで、職場の空気は穏やかになります。これらの「尊」は特別なスキルではなく、日々の言葉づかいや態度の積み重ねです。信頼とは、ルールやマニュアルではなく、人と人の間に生まれるもの。小さな配慮や気づきの積み重ねが、組織の文化を育てます。
「防ぐ」から「育てる」へ
ハラスメント防止の目的は、誰かを罰することではありません。お互いに気づき合い、支え合う関係を育てることです。
言葉を選ぶ、相手を観察する、違和感を放置しない。小さな積み重ねが、安心して働ける職場をつくります。完璧な人ではなく、「気づこうとする人」がいる組織こそ信頼が育ちます。
「悪気がなかった」ではなく、「次はどうすれば伝わるか」。その問いを職場のあたりまえにしていくことが、無自覚なハラスメントを防ぐいちばんの近道です。
ハラスメント防止講座~誰しも無自覚に相手を傷つけないために
本講座では、職場の誰もが無自覚のうちにハラスメントの加害者になり得るリスクを理解し、日常のコミュニケーションを見直す視点を学びます。
心理的安全性を高めるための接し方や意識の持ち方を身につけることで、相互に誠意を持って指摘・改善し合える関係づくりを目指します。ハラスメントを恐れるあまり必要な対話や指導が減る状況を防ぎ、前向きに信頼を育む職場文化の醸成について解説します。
よくあるお悩み・ニーズ
- 「一般職=被害者」というイメージが先行し、誰しもが加害者になり得るという意識が弱い
- 配慮はしてほしいが、遠慮はしすぎず円滑にコミュニケーションを取ってほしい
- 心理的安全性を高めるポイントや日常のコミュニケーションのコツを学びたい
- 「ハラスメントじゃないですか?」と言って、指導や干渉を過度に拒むメンバーがいる
本研修の目標
- 全ての人がハラスメント加害者になり得ることを理解する
- 心理的安全性を高める基本的なポイントを掴む
- 信頼関係の土台を築くコミュニケーションを、日常的に実践できるようになる
- 意見を発信しやすい環境づくりについて学ぶ
セットでおすすめの研修・サービス
心理的安全性から考えるハラスメント防止講座
本動画では、パワハラ・セクハラをはじめ、現代の多様なハラスメント(マタハラ・パタハラ・ケアハラ・ソジハラ・障がい者に対する差別)について基礎知識を深めていただきます。
各ハラスメントへの対処法だけでなく、後半では「心理的安全性」という切り口から、見直すべき周囲への接し方、信頼関係を築くためのコミュニケーション手法、意見を発信しやすい環境づくりについても解説します。多様化するハラスメントや心理的安全性に関する基礎知識習得に、ぜひ本動画をご活用ください。
ハラスメントのない職場づくり講座(スライド付き)
ビジネスシーンにおける人材や価値観が多様化する中で、具体的にどのような行為がハラスメントに該当するかを定義づけることは難しくなっています。
本動画では「そもそもハラスメントとは何か、どういった行為か」を定義することから始まります。そのうえで、日頃からどのような点を意識すれば、職場でのハラスメントを防止できるか、具体的なポイントを3点紹介いたします。
声を上げるコンプライアンス研修~違和感を行動に変えリスクを見逃さない(1日間)
本研修ではコンプライアンスを、単なる規則の順守ではなく「組織の信頼を守る行動」として捉え直します。
沈黙や言えない空気ができてしまう理由を理解し、違和感をそのままにせず行動につなげる視点を養います。また、相談できる味方や組織内の窓口を改めて確認したうえで、具体的にどのように動いてもらうかを考えるケーススタディにも取り組みます。


