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役職者ほど注意!オンラインミーティングでの「わかった?」が生む誤解と、信頼を深める問いかけ方

オンラインミーティングで上司が「ここまで、わかった?」と複数の出席者に問いかける場面は多く見られます。

一見、相手の理解を確認する丁寧な姿勢に思えますが、実はこの一言が、メンバーを委縮させ、発言をためらわせる原因になっている場合があります。対面よりも空気感がつかみにくいオンライン環境では、言葉選び一つが信頼関係を左右します。

本コラムでは、リモート下でも安心して意見交換できる場をつくるために、役職者が意識すべき「問いの立て方」について具体的に解説します。

「わかった?」が相手を委縮させる理由

よくある場面~若手はあなたの想像以上に、あなたに気を遣っている

自分以外にも出席者がいる、いわゆる公のオンライン場で「~するといいよ、○○さん、わかった?」の画面上からの問いに、「いや、全然環分からないです」なんて、若手メンバーが思っていることをそのまま言えるわけがありません。時間を割いて自分に業務を教えてくれているし、この人課長だし、他のメンバーも理解しているような顔をしているし⋯⋯と、相手は思っている以上にあなたやミーティング全体の空気を読んでわかったふりを決め込んでいるだけです。

この事実に気づいていない方は意外と多いのかもしれません。若手メンバーにも一応気を回して、表現を柔らかくしたつもりが、相手には「なんか嫌みっぽい⋯⋯」「圧かけてくるな⋯⋯」と映っている。何ということでしょう。

意図せず「圧」をかけやすくなるオンラインの特性

「わかった?」という問いは、あなたにとっては確認のつもりでも、受け手には「理解していないと叱られるかもしれない」というプレッシャーを与えることがあります。特にオンラインでは、声のトーンや表情、間などの非言語情報が伝わりにくく、相手は上司の表情を探りながら「はい」と答えるしかなくなる傾向があります。このような状況では、たとえ理解が不十分でも、相手は質問や意見を飲み込んでしまい、結果として理解のズレや業務の停滞につながります。

つまり、「わかった?」という一言は、相手の理解を促すどころか、コミュニケーションの質を下げるリスクを含んでいるのです。役職が上がれば上がるほど、またそのオンラインミーティングに参加しているメンバーが増えるほど、この言葉を使うのは危険です。

もしあなたが「分からないとは言わせないこと」を真の目的として、あえてこの問いかけをしているのであれば、それはパワハラととられる可能性があります。いよいよ言葉のチョイスがよろしくありません。

オンライン特有の「沈黙」が誤解を深める

オンライン会議では、タイムラグやミュート設定にわずかに時間を要すことが影響して、沈黙が生まれやすくなります。上司が「わかった?」と問いかけ、数秒の沈黙が続いたとき、話し手は「伝わっていないのか」と焦り、受け手は「何か言わなければ」と焦る。この沈黙のストレスが、さらに相互の委縮を強める構図を生み出します。

好ましい問いの立て方:理解を確かめる確認から、対話を促す「共有」へ

理解確認ではなく認識共有の問いに変える

相手の理解度を確かめたいときは、「わかった?」ではなく、相手の言葉で説明してもらう質問に置き換えることが効果的です。

たとえば、以下のような言い回しが挙げられます。

  • 「この部分について、どんなふうに受け止めましたか?」
  • 「実際の業務にどう生かせそうかな?」
  • 「懸念点や不明点はありますか?」

これらの質問は、相手に発言の自由度を与えつつ、理解度を可視化できます。また、上司であるあなたも相手の理解の深さを自然に把握できるため、対話がスムーズに進みます。

「問いの主語」を変えるだけで印象が変わる

「わかった?」という問いは主語が「相手」ですが、これを「私たち」「このチーム」に変えるだけで、一体感と安心感が生まれます。「この方針について、チームとしてどんな課題がありそうですか」という聞き方は、上からの確認ではなく、共に考える対話に変わります。質問の主語を変えるだけで、相手の心理的な負担を減らし、会議の雰囲気が大きく変わるのです。

オンラインでの「好ましい問い」を実践する3つのコツ

1.カメラ越しでも「相手の表情」を読む努力を

オンラインでは、視線のズレや画面サイズの違いにより、相手の反応が読み取りにくくなります。しかし、目線や声のトーン、あいづちのタイミングを意識して観察すると、理解度のヒントを得ることができます。

「少し考えている様子だな」と感じたら、「今の点について、補足したほうがよいでしょうか」と自分から確認する姿勢を見せることで、相手が安心して発言できるようになります。

2.「Yes/No」で終わらない質問を増やす

「はい」「いいえ」で答えられる質問は、短時間で確認できる一方で、深い意見を引き出しにくいという課題があります。たとえば、「この方向で進めて大丈夫ですか」ではなく、「この進め方で心配だな、と思うところはありますか」と問うことで、相手の考えを引き出しやすくなります。

特にオンラインでは、短い回答が続くと会話の流れが単調になりやすいため、オープンクエスチョンを意識的に使うことが重要です。

3.「話しやすい場」を設計する

質問以前に、心理的安全性のある場づくりも欠かせません。オンラインミーティングの冒頭で雑談を交える、チャットでの意見投稿を促す、発言順をローテーションするなど、多様なコミュニケーションの手段を設けることが効果的です。形式的な「質問」よりも、安心して意見を出せる環境が整っているかどうかが、組織の対話力を大きく左右します。

「問いの質」がチームの信頼を左右する

質問の目的は、相手の理解を確認することではなく、相互理解を深めることにあります。

役職者が一方的に「わかった?」と問う構図から、「どう感じたか」「どう進めたいか」と問う構図へと転換することで、メンバーの発言量や意欲が確実に変わります。特にリモート下では、会話の中に信頼を積み重ねることが、チームの生産性を左右します。問いの立て方を変えることが、組織文化の変化を生む最初の一歩になるのです。

まとめ:問い方を変えれば、オンラインの空気も変わる

オンラインミーティングでは、わずかな表現の違いが、相手の心理に大きく影響します。

「わかった?」という一言の代わりに、相手が考えを言語化できる問いをあなたが意識することで、会議は単なる情報共有から、学びと信頼の場に変わります。上司・部下の関係にかかわらず、一緒に考える姿勢を持つことが、リモート時代のリーダーに求められる重要な資質といえるでしょう。

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