インソース 第四営業本部

「静かな退職」組織にしがみつかない・頑張りすぎない働き方を選ぶ若手をどう捉えるか

「静かな退職」とは、無理に成果を追わず、定められた職務の範囲内で働くことを貫くスタイルのことです。「静かな退職」は、2022年に米国のキャリアコーチが「Quiet Quitting(クワイエット・クイーティング)」というワードでSNSに投稿し、世界中に拡散されたものです。このバズワードを使い、「残業なんてもってのほか、必要最低限のことしかやらないよ」といった短時間動画やメッセージが量産されました。

静かな退職を組織貢献度の低い社員が増える由々しき事態と考える方も多くいらっしゃると思います。しかし一筋縄ではいかないのが、「定められた職務には専念している」という点です。必要最低限の成果はあげていて、全く取り組んでいない・完全にサボっているわけではない。これは仕事と生活のバランスを意識し、心身の健康を損なわないように自己管理ができる働き方をしているとも言い換えられます。

本コラムでは、静かな退職が広がっている社会的背景や特徴、そして組織はこのような姿勢の社員・職員をどのように捉え、対応したらよいのかを整理してみます。

静かな退職が若手層とマッチ

静かな退職は、Z世代を中心とした若手層の間で、自分の求める生き方を尊重してくれない組織に迎合すること、承認してもらえないことに時間や労力をつぎ込むことをやめて、仕事はそこそこに取り組もうという大きなムーブメントになりました。

これは、従来の「長時間労働=忠誠心」という価値観に疑問を持つ若手が増えていることを示しています。静かな退職は、若手が重要視する、効率(タイパ)・ワークライフバランス・多様性・ウェルビーイング(心身の健康)にフィットすることから、まさに自分たちの意見そのものを端的に表してくれた!と感じた方が多かったのです。

静かな退職を選ぶ環境の原因~組織の視点で考える

こんな若手は間違っている、という厳しい意見もありますが、彼らがこの考えに至ることになったきっかけが、組織側にあるとしたらどうでしょうか。次のような状況が現場で起こっていないか、振り返ってみましょう。

中途半端な「成果で見る」文化になっている

資本主義におけるビジネスの基本は「売上をあげて利益を残すこと」です。ほとんどの組織が従業員に費用対効果や効率性を説いています。しかし、組織にとっての効率性の意味や、従業員に求める行動を十分に説明できていない可能性があります。組織の求める姿や望む成果を個人の判断に委ねすぎていることで、無駄な手戻りが生じたり、業務調整に時間がかかってしまうのかもしれません。

キャリアアップの不透明感が蔓延している

昇進や評価の仕組みが不透明で、制度が形骸化している場合、従業員は仕事に時間や情熱を投入しても報われないと感じ、必要以上に頑張る動機をなくします。極端な場合、自分自身の価値を守るため、この組織でのキャリア形成を捨てるケースもあります。

心理的安全性が担保されない

上司や組織に意見を言いづらい環境では、誰も出る杭になろうとはしません。目立たないように活動をセーブし、可もなく不可もない成果を維持しようとします。失敗する可能性のあるチャレンジには手を出さず、結果として自分を守る行動につながってしまうのも無理はありません。こんな状況で頭ごなしに「積極性が足りない」などと叱責されると、「チームや自分のことを何も把握していない無能な上司」と認識され、これまで以上に心を閉ざします。

組織が取るべき具体的な対応策

個人の思想や志向に正しい/間違っていると判断を下すことはとても難しいです。ただ、上記のような本人のモチベーションを下げてしまうような組織起因の事象があるのであれば、改善に乗り出す必要があります。

社員の価値観を把握する

面談やアンケートを通じて、社員がどのような働き方を望んでいるかを把握します。自分の役割や業務範囲に納得しているか確認することがポイントです。

【おすすめのサービス】
従業員エンゲージメントの向上を目指して、組織課題を可視化するアセスメントをご用意しております。従業員と組織の満足度を定量的に調査することで、どの対象にどのような施策を講じればよいのかを考える際の基礎情報として活用することができます。

>エンゲージメント診断

キャリアや評価を見える化する

目に見える評価基準やキャリアパスを提示することで、社員は自分の努力の方向性を理解できます。成果が正当に評価される環境づくりは、静かな退職の抑制につながります。

【おすすめのサービス】
インソースが貴社の現状にあった人事制度を構築をご支援します。人事制度を新しく作る、または見直すにあたって、意識調査からスタートします。評価制度を定着させるためのご支援のほか、教育・研修体系の実践として、貴社に合わせた階層別研修やスキル別研修、映像教材やeラーニングもご提案いたします

>人事制度設計支援サービス

心理的安全性の確保

意見を発しやすい職場環境や適切なフィードバックの機会を提供することで、従業員は挑戦しやすくなります。安心して働ける職場は、個々人の主体性を高めてイノベーションが生まれやすくなります。

【おすすめの研修ラインナップ】
インソースでは、「心理的安全性」を高めるために必要となるコミュニケーションスキルやチームワークを向上させる研修や、一人ひとりの力を最大限に発揮させるためのダイバーシティ推進の研修などをご用意しております。

>心理的安全性を高める研修

柔軟な働き方を提供する

長い人生、誰しも働くことに制約が生まれるタイミングがあります。誰もが働きやすい職場は、知見のある優秀なメンバー、将来の組織を率いる人材も退職しにくい職場です。一定のパフォーマンスを維持できる、自分の行動や成果に責任を持つことのできる若手に限っては、役割・職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて担当業務や責任の範囲が明示されているジョブ型雇用が望ましい働き方と感じるかもしれません。

【おすすめの研修ラインナップ】
組織として、柔軟な働き方を取り入れるには、経営トップをはじめとした全従業員の意識改革や個人の働き方の工夫が欠かせません。インソースでは、多様な働き方を理解し、自身の意識変化を促すプログラムや、限られた時間の中で最大の成果を出すための個人のタイムマネジメント改善のためのプログラムなど、柔軟な働き方を実現するためのコンテンツを多数ご用意しております。

>ワークライフバランス研修

若手が重視する「自分らしくいられるか、自分を大事にできるか」を汲む

労働人口の減少を止められない日本では、新人・若手人材の獲得競争は熾烈です。売り手市場ということもあいまって、この仕事は自己実現のツールの一つにすぎないと悟っている方は一定数存在します。望まない経験に苦しむ時間を減らすのに解雇にならない程度に仕事に取り組もうとするのは、確かに健全とは言いきれないかもしれません。

でも、そんな若手に「頑張ってみると意外にいいことがあるかも」「もうちょっとやってみたら、楽しくなりそう」と感じさせる組織風土を育てる―これも人事部門の役割なのです。組織にしがみつかない=独立心の高い、頑張りすぎない=セルフケアへの意識が高い人材からも学ぶところは大いにあります。

Z世代育成関連研修

ワークライフバランスを重視、オープンであることを好む、ウェットなコミュニケーションは好まない...この世代の特性を理解して、多様な価値観をもつ人材が活躍できる職場、心理的安全性の高い働きやすい環境を作っていくことは、他の世代も幸せにします。

Z世代育成関連研修のポイント

  • Z世代の効果的な育成方法
  • Z世代が主体性を発揮し、DXをはじめとして新たなことに挑戦していく
  • 多様な価値観をもつ人材が活躍する組織・チームをつくる
  • 心理的安全性の高い、働きやすい職場環境づくり

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