株式会社インソースコンサルティング

エンゲージメント施策が形骸化する3つの壁と、成果を出すための3ステップ~組織と個人を活性化させる

近年、「エンゲージメント」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。多くの企業がエンゲージメントスコアの向上を重要な経営課題と捉え、様々な施策に取り組んでいます。

しかし、エンゲージメントの向上は、単にスコアを上げること自体が目的ではありません。その本質は、従業員一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出し、組織全体の活力を高め、持続的な成長を実現することにあります。

本コラムでは、多くの企業が直面しがちな課題と、それを乗り越えるための具体的なアプローチについて解説します。この記事が、貴社のエンゲージメント向上の取り組みを加速させる一助となれば幸いです。

エンゲージメント向上は、組織と人の成長を両立させる

エンゲージメントとは、広義には「従業員の仕事や組織に対するポジティブで充実した心理状態」を指します。具体的には、仕事そのものに対する愛着や、自社や所属する職場に対する愛着などが含まれます。

エンゲージメントの高い従業員は、自らの業務に情熱と誇りを持ち、主体的に貢献しようとします。その結果、生産性の向上やサービスの質の向上、イノベーションの創出といった形で、組織の業績に大きく貢献することが期待されます。また、組織への帰属意識も高まるため、優秀な人材の離職を防ぎ、長期的な人材定着にも繋がります。

エンゲージメントは、個人と組織が共に成長していくための重要な土台であると言えるでしょう。

エンゲージメント向上施策が形骸化する3つの壁

多くの企業がエンゲージメント向上の重要性を認識している一方で、その取り組みがなかなか成果に結びつかないケースも少なくありません。そこには、共通していくつかの「壁」が存在します。

壁1:サーベイ実施がゴールになってしまう

最も多く見られるのが、エンゲージメントサーベイを実施しただけで満足してしまうケースです。結果レポートを受け取り、課題を認識したつもりにはなっても、具体的な改善アクションに繋がらないまま時間が過ぎてしまいます。

従業員からすれば、「調査に協力したのに、結局何も変わらなかった」という不満や無力感が高まり、かえってエンゲージメントを低下させるリスクすらあります。

壁2:現場の管理職任せで進まない

サーベイ結果を分析し、部門ごとの課題を管理職にフィードバックするところまでは多くの企業で行われています。しかし、その後の改善活動をすべて現場の管理職に委ねてしまうと、多くの場合、取り組みは停滞します。

管理職自身も日々の業務や自身の目標達成に追われており、エンゲージメント向上のための活動にまで手が回らないのが実情です。組織全体の課題解決には、人事部門や経営層からの積極的なサポートが不可欠です。

壁3:人事部門のリソース不足

エンゲージメント向上は、企業にとって「重要度は高いが、緊急度は低い」業務と認識されがちです。そのため、日々の採用活動や労務管理といった緊急性の高い業務に追われ、後回しにされてしまうことが少なくありません。

特に、専門の担当者(HRBPなど)を配置する余裕のない企業では、人事部門が全社のエンゲージメント向上施策を主導していくには、リソースが不足しているのが現実です。

確実なエンゲージメント向上につなげるための3ステップ

前述したような壁を乗り越え、エンゲージメント向上を絵に描いた餅で終わらせないためには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。重要なのは、調査結果を基に、現場を巻き込みながら地道な改善活動を継続していく姿勢です。

ステップ1:現状の可視化と課題の特定

まずは、エンゲージメントサーベイや既存の人事データを活用し、自社の現状を客観的に把握することから始めます。組織全体の傾向はもちろん、部署別、階層別、勤続年数別といった属性で分析することで、どこに課題が潜んでいるのかを具体的に特定します。この段階で、主観や思い込みを排し、データに基づいた冷静な分析を行うことが重要です。

ステップ2:現場を巻き込む面談・ワークショップの実施

課題が特定できても、その結果を一方的に現場に伝えるだけでは不十分です。重要なのは、管理職や現場のリーダー層を巻き込み、結果を共有し、課題認識を合わせるための「対話の場」を設けることです。

例えば、ワークショップ形式で、サーベイ結果から自分たちの職場の強み・弱みを話し合い、「どうすればもっと働きやすい職場になるか」を自分たちで考えてもらいます。これにより、改善活動が「やらされ仕事」ではなく「自分ごと」となり、主体的な取り組みが期待できます。

ステップ3:スモールスタートで成功体験を積む

組織全体で大きな改革を一度に進めようとすると、現場の負担が大きくなり、頓挫しがちです。まずは各部署で「これならできそう」と思える小さな改善アクション(スモールスタート)から始めることをおすすめします。

例えば、「毎朝の朝礼で感謝を伝え合う」「週に一度、15分間の1対1面談を実施する」といった、すぐに実行可能なことからスタートします。地道な活動を継続し、「自分たちの手で職場が良くなった」という小さな成功体験を積み重ねることが、現場の自己効力感を高め、より大きな組織風土の改革へと繋がっていきます。

地道な改善活動がエンゲージメント向上の土台となる

エンゲージメントは、従業員の力を引き出し、組織の活力を高める重要な要素です。しかし、ただサーベイを実施するだけでは成果にはつながりません。本記事では、施策が形骸化する3つの壁と、それを乗り越えるための3ステップをご紹介しました。

エンゲージメント向上には、一朝一夕に実現する特効薬はありません。しかし、組織の状態を正しく把握し、現場と対話を重ね、地道な改善活動を粘り強く続けることで、組織は着実に活性化していきます。それは、従業員一人ひとりがやりがいを感じながら成長し、企業全体の持続的な発展を支える強固な基盤となるでしょう。

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