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現場は「ガイドライン」ではなく「マニュアル」を求めている~実効性のあるカスハラ対策のために

カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。政府や自治体からガイドラインが示され、社会的な関心も高まる中、「自社でも何か対策をしなければ」と感じている方は多いのではないでしょうか。

しかし、ガイドラインは汎用性が重視され、解釈の幅が広いため、読んでも現場で直ちに行動へ移すことができません。

従業員が安心してカスハラに対応できるためには、接客活動が行われる現場の実態に即したマニュアルとルールの明文化が不可欠です。本コラムでは、実効性のあるカスハラ対応体制を構築するための具体的なステップをご紹介します。

現場が困るのは定義ではなく判断基準

厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルをはじめ、各自治体から開示されているガイドラインには、カスハラ対応における基本的な考え方が示されています。しかし、これらは一般的な指針であり、業種・業態によって異なる現場の実情までは網羅していません。

例えば、小売業と金融業では、お客さまとの接点の持ち方も、想定されるトラブルの内容も大きく異なります。また、同じ小売業でも、高級ブランド店と量販店では、求められる接客スタイルやクレーム対応の方針が違うでしょう。

現場の従業員が本当に困るのは、「この状況は、どこからがカスハラに該当するのか」「このお客さまへの対応は、どこまで続けるべきなのか」という具体的な判断基準です。ガイドラインには「過度な要求」「威圧的な言動」といった表現がありますが、どこからが過度で、何をすれば威圧的と判断されるのか、その境界線を実際の状況に当てはめて判断するのは容易ではありません。

事例を集めて発生パターンを可視化する

実効性のあるカスハラ対応マニュアルは、現場を知る人にしか作れません。なぜなら、カスハラの発生パターンや深刻度は、企業の事業内容や顧客層によって大きく異なるからです。

まず大事なのは、自社で実際に発生しているカスハラ事例を収集・分析することです。「長時間の拘束」「土下座の要求」「SNSでの拡散をちらつかせる」など、どのようなパターンが多いのか。またそれらは、どの部署・どの業務で発生しやすいのか。これらを明確にすることで、自社特有のリスクが見えてきます。

次に、それぞれのケースについて、具体的な対応手順を定めます。例えば、「30分以上の電話は上司にエスカレーション」「3回目の謝罪で改善が見られない場合は対応を打ち切る」といった明確な基準を設けることで、現場の従業員は「どこまでやればよいか」が分かります。

また、トークスクリプトの準備も有効です。「恐れ入りますが、本日はこれで対応を終了させていただきます」「弊社の対応方針として、これ以上のご要望にはお応えできかねます」といった、毅然とした態度を示すための言い回しを事前に用意しておくことで、いざという時に慌てず対応できます。

毅然とした対応はブランド価値を上げる

カスハラに対して毅然とした対応を取ることは、理不尽な要求をするお客さまとの関係を終わらせるためだけのものではありません。むしろ、大多数の良識あるお客さまからの信頼を獲得するための重要な施策でもあるのです。

多くのお客さまは、常識的な範囲でサービスを利用されています。そうしたお客さまにとって、一部の理不尽な要求が通ってしまう状況は、決して快いものではありません。「なぜあの人の無理な要求が通るのに、私たちは正当な対価を払っているのか」という不公平感につながるからです。

また、従業員がカスハラに苦しんでいる様子を目にすることも、お客さまにとっては不快な体験です。「この会社は従業員を守らないのか」「こんな環境で働いている人から、良いサービスを受けられるのだろうか」という疑問を抱かせてしまいます。

逆に、不当な要求に対して毅然とした態度で臨む企業は、「従業員を大切にする企業」「公平な対応をする企業」として、多くのお客さまから信頼を得ることができます。これは、長期的なブランド価値の向上にもつながります。

すぐ作れるカスハラ対応マニュアル4ステップ

1.現状の課題を整理する

まず、自社で発生しているカスハラの実態を把握します。各部署から事例を集め、頻度や深刻度を分析しましょう。同時に、現在の対応体制の課題も洗い出します。「判断基準が不明確」「エスカレーション先が分からない」といった問題点が見えてくるはずです。

2.カスハラの判断基準を設定する

次に、「どこからがカスハラか」という線引きを明確にします。自社の事業内容や顧客層を考慮しながら、通常のクレームとカスハラを区別する基準を定めます。
例えば、時間的な制約(30分以上の電話)、回数(同じ内容で3回以上の連絡)、言動の内容(威圧的な態度、プライベートな要求)などです。

3.具体的な対応手順を作成する

判断基準に基づいて、実際の対応フローを作ります。初動対応、エスカレーション、対応の打ち切りまで、それぞれのステップで「誰が」「何を」「どのように」行うかを明確にします。トークスクリプトも用意しておくと、現場での実践がスムーズになります。

4.組織全体への展開と周知

作成したマニュアルやルールは、全従業員に周知し、研修などを通じて理解を深めてもらいます。特に、「この対応は会社として認められている」ということを強調し、従業員が安心して実践できる環境を整えます。

カスハラ対応マニュアル作成ワークセッション

カスハラ対応を実際に進めていくにあたっては、自組織で起こっている具体的なカスハラ事例をもとに、カスハラ対応マニュアル作成を実践するワークショップがおすすめです。

本プログラムは、ワークショップ形式で実施します。困ったときにすぐ使える、カスハラ対応の「お守り」を作り、マニュアル作成からトークスクリプトまでを実践的に学びます。1組織3名での参加で、講師から自組織の課題に焦点を当てたフィードバックを受けることができます。

<よくあるお悩み・ニーズ>

  • 自治体の提示するガイドラインが一般的な内容になっており、自組織では機能しづらい
  • 従業員を守るために、実効性のあるカスハラガイドラインを作りたい
  • どういう行為を自組織ではカスハラと見なすのか、お客さまにも明示したい

<本研修の目標>

  • 自組織の業務内容に沿ったカスハラ対応の判断基準が言語化できる
  • 自組織でカスハラ事案が発生した際の対応手順が可視化できる
  • 策定した自組織専用のカスハラガイドラインの展開方法が具体化できるとして発信すべき情報を効果的に伝えられる

<対象者>

  • 自組織のカスハラ対策における責任者の方
  • 顧客対応を伴う職場において業務を管理する立場の方
  • 自組織の従業員を守る立場にある組合責任者の方

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マニュアル作成研修~改善・合理化を促す業務マニュアルの作り方

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