「デジタル便利屋」から脱却せよ!真のDX担当者が備えるべき3つの力

「DXマインドセットの研修も受けたし、ツール操作も一通りマスターした。でも、結局DXで何が変わるのかが分からない」そんな声を多く伺います。
DXは、上層部は理想を掲げる一方で、実際の運用や定着は担当者任せになりがちです。結果、「特定の担当者が新しいツールを回しているだけ」という状態に陥り、現場の意識も変わらない、これは、DXを「導入施策」で止めてしまった典型的なサインです。
本記事では、DXの本質を説明したうえで、組織変革に繋がる真のDX推進の進め方、DX推進者に必要な能力について、具体的に解説します。
DXの本質は業務の流れを変えること~意思決定を現場に戻す
DX(Digital Transformation)の目的は、単にデジタルツールを使うことではなく、組織の意思決定構造や業務の流れそのものを変えることです。
たとえば、紙の書類を電子化することは「デジタル化」ですが、意思決定や承認のスピードを根本的に見直し、「判断を現場に委ねる仕組み」をつくることがDXです。つまり、DXは「ITの活用」ではなく「組織の構造変革」なのです。
では、なぜ多くの企業でこの構造変革が進まないのでしょうか。理由はシンプルで、DXが技術プロジェクトの延長として扱われているからです。IT部門や担当者のスキルアップに焦点が当たりすぎ、組織全体の意思決定や価値創造の仕組みを変える議論が置き去りにされているのです。
ツールを回す人から仕組みを描く人へ~DX担当者が変革リーダーになる方法
ツールの導入支援、マニュアル作成、トラブル対応、研修講師など、DX担当者の多くが陥るのが、「デジタル便利屋」状態です。しかし、これは本来のDX担当者の役割ではありません。真のDX担当者は、現場の業務構造をどう変えるかを設計する「変革リーダー」であるべきです。そのためには次の3つの能力が不可欠です。
- 能力1:ビジネス構造を俯瞰する力
ツール導入の先にある業務フロー全体の最適化を考える力 - 能力2:現場との対話力
変えたいことよりも「なぜ今のやり方が続いているのか」という現場の本音を理解する力 - 能力3:仮説構築力
数値やデータをもとに「この仕組みを変えれば成果が上がる」という筋道を描く力
DX担当者がこの3つの能力を発揮できると、単なる「デジタル便利屋」から、組織を動かす変革リーダーへと進化します。
経営の理想を現場の言葉に変える~DX担当者が持つべき言語化の技術
DXが形骸化する最大の要因は、上層部と現場の目線のずれです。経営層は「デジタルで変革を」と掲げ、最新のツール導入を指示します。しかし現場からすれば、「日々の業務に追われる中で、また新しいシステムを覚えなければならないのか」とため息が出るというのが現実です。導入目的や期待する成果が共有されないまま、「使わされるツール」として受け止められてしまうのです。
この間に立つDX担当者は、理想と現実のはざまで翻弄されがちです。経営層には「なぜ現場が動かないのか」と問われ、現場からは「上は分かっていない」と不満をぶつけられる。そんな板挟みの中で、DXを「机上の計画から現場で息づく仕組み」へと変える鍵を握っているのが、DXを言語化する力です。
DXの言語化例
「この自動化ツールは単に作業を減らすためではなく、現場が判断に集中できる時間を取り戻すための仕組みです」といったように、目的を「自分たちの仕事の意味」と結びつけて説明する。
DX担当者が経営の理想を現場の言葉で語り直し、現場の課題を経営の視点で伝え返す。その両方ができてこそ、DX担当者は変革リーダーとして認識されていきます。
DXの次のステージへ~問われるのは戦略を描く力
DX推進の第一フェーズ(基礎)は、意識改革とデジタルリテラシーの向上です。ここからは、組織全体をどう変えるかという設計力が問われます。
- どの業務を優先的に変えるか?
- どの指標で成果を測るか?
- どの部門が次に巻き込むべき対象か?
これらを自ら定義し、部門横断的に動かすことができてこそ、DX推進リーダーへと成長します。DX応用とは、技術を使いこなす段階ではなく、「変革を設計する段階」なのです。
DXを属人化から文化へ~担当者が今すぐ始める3つの行動
- 「変化の地図」を描く
DXの目的を業務効率化から価値創造に書き換え、組織のどこに変革の余地があるかを見える化しましょう。 - 「共感の輪」をつくる
DXを自分ごとに感じてもらうために、小さな成功事例を現場から発信し続けましょう。 - 「自分以外」を動かす
DXは1人では成し遂げられません。各部署にミニDX担当者を育て、変化を分散させることが重要です。
DX担当者がこの3つを実行できれば、DXは属人化から「組織文化」へと昇華します。
まとめ~DXの真価は担当者のその先にある
DX導入の次のフェーズは、ツールや仕組みの話ではなく、組織のあり方そのものを問い直すフェーズです。DX担当者の役割は、もうツールを回すことではありません。DXを「誰かがやる施策」から、「みんなが考え、動く文化」へと変えること、これが、DX担当者の次の一歩です。
DX推進者シリーズ
昨今、DX推進の担当者・リーダーなどを任命する組織が増えています。複数人を擁するDX推進チームを設置できる組織もありますが、担当者が1人や少数の場合も少なくありません。
DX推進者シリーズは、こうした少数精鋭で任命されるDX推進者をバックアップするべく生まれました。
本シリーズで取り扱うスキルは、デジタルの専門知識ではありません。デジタル時代の基礎知識や考え方を押さえたうえで、組織や現場における課題を的確に捉え、解決するスキルに着目しています。シリーズ全体※の受講で、DX推進者に必要な基礎スキルを身につけることができます。
対象者
- 組織内のDXを推進する担当者・管理者の方
- デジタルツールの導入を主導する立場にある方
セットでおすすめの研修・サービス
プロジェクト推進研修~関係者を巻き込み業務改善を実現に導く
業務改善活動が上手くいかない真の要因を突き止め、実効性のある活動推進の手順やノウハウ、活動に投じる人的リソースの捻出の仕方などを学んでいただきます。
ワークでは、ある企業の業務改善における奮闘記を読んで、何が改善を阻んでいて、何がきっかけとなって成功につながったのかをグループ討議していただきます。
リーダーシップ研修~チャレンジングな姿勢と強かな変革力
リーダーに求められる「人を動かす」という機能は、「マネジメント」と「リーダーシップ」の2つの能力を掛け合わせたものとなります。
「リーダーシップ」を発揮するためには、変化を恐れず、困難にも怯まない強かなマインドが求められますが、それを支えるのは、「自分が何とかしなければ」という「問題意識」と「当事者意識」です。
本研修では、組織を束ねる立場にあるリーダー層を対象に、リーダーが持つべき要件について、理解を深めていただくとともに、それを習得するためのヒントを探っていきます。
変革リーダー研修~人数を増やさず今のメンバーで変革を実現する
事業環境が想像以上のスピードで変化する現代においては、組織をまとめる調整型リーダーよりも、「組織を導く変革型リーダー」の在り方が求められる機会が増えてきました。
とはいえ、具体的に何をどう「変革」すればよいのか分からない、という方も少なくありません。本研修では、5年~10年後の将来を見据え、組織に有用な新しいことを実現する変革の4ステップを学ぶ研修です。掲げた目標を「実行」するための人材の捻出・その人材へのアプローチ法のほか、進捗に勢いをつけるマネジメントまでを解説します。






