「結局使えない」をなくす!RPAの正しい導入方法~業務の可視化と改善ポイントの見極め

「自部署にRPAを導入したいけれど、何から始めればいいかわからない」そんな悩みを抱えていませんか。
実は、多くの企業がRPA導入に失敗する理由は、「いきなり自動化」に走ってしまうことにあります。
RPAはあくまで「自動化という手段」であり、導入の前には業務の整理や効果見込みの検討といった準備が欠かせません。
この準備を疎かにすると、時間やコストを無駄にしてしまうリスクがあります。
では、具体的にはどのような失敗パターンがあるのでしょうか。
RPA導入で失敗する企業には、準備段階で陥りやすい3つの落とし穴という共通点があります。
落とし穴①:自動化対象業務の選定を誤っている
RPAを導入したものの、その対象業務が「自動化の効果が薄い業務」だったというケースです。
このような場合、投資対効果(ROI)が得られないだけでなく、社内で「RPAは結局使えない」という誤解が生まれ、その後、本当にRPAに適した業務があっても導入が見送られてしまう恐れがあります。
実際の失敗事例:
総務部が定型的業務のひとつである会議室予約システムの自動化を決定しました。
しかし、導入を終えた段階で、会議予約の発生頻度が月1〜2件程度しかなく、削減できる作業時間がごくわずかであることが判明。
結果、RPA導入のコスト回収の見込みが立たず、プロジェクトは費用対効果を欠いたまま終了しました。
落とし穴②:業務の棚卸・整理をスキップしている
「この業務を自動化したい」と決めつけ、現状の業務フローを確認しないまま導入を進める企業は少なくありません。
しかし、その業務が本当にRPAに適しているかを事前に評価しなければ、実装に想定外の時間がかかったり、導入コストに見合わない効果しか得られない場合があります。
実際の失敗事例:
営業事務部では、業務内容の棚卸や整理を行わずに「顧客データ入力の自動化」を決定しました。
しかし、実装段階で「顧客ごとに入力形式が異なる」「営業担当者ごとに対応がバラバラ」といった想定外の業務差異が次々に発覚。
結果として、RPAのチューニングに当初の3倍の時間を要し、投資対効果(ROI)が得られないままプロジェクトが頓挫しました。
落とし穴③:業務フローが曖昧なまま設計を進めている
現場の業務フローを正確に把握しないまま、IT部門が自動化シナリオを作成してしまい、「実務では使えないRPA」になってしまうケースがあります。
完成後に「現場の実態と合わない」ことが判明し、手戻りによる時間とコストの浪費が生じます。
最悪の場合、プロジェクト自体が停止に追い込まれることもあります。
実際の失敗事例:
経理部が「月次請求書作成の自動化」を決定しました。
IT部門に対して「RPAで請求書作成を自動化してほしい」とだけ依頼し、詳細なヒアリングや認識合わせの機会を設けないまま設計を開始。
しかし実装後、現場から「作成後に必ず二重チェックを行っている」「請求内容によって承認ルートが変わる」といった想定外の手作業があることが判明。
結果、再設計と再開発が必要となり、時間とコストを大幅に浪費する結果となりました。
これら3つの落とし穴を避けるためには、段階的に業務を整理しながら導入を進めることが重要です。
以下では、RPA導入を成功に導くための4つのステップをご紹介します。
1. 導入効果を見極める
RPAは導入するだけでは十分な効果は出ません。業務整理で適用業務を見極めることが成功の第一歩です。
ここを抜かすと、導入後に「思ったほど効果がない」という失敗につながります。
RPA導入で期待できる主な効果は次の通りです。
自動化できる業務の例
- Excelデータ入力・集計:毎日の定型入力作業を完全自動化
- 請求書や受注データの転記:複数システム間のデータ移行を秒単位で実行
- 定期レポート作成:月次・週次レポートを自動生成・配信
- メール送信や通知業務:定型的なアラート・お知らせを自動配信
RPA導入で期待できる効果
- 作業時間の削減
例)時間単位で数時間〜数十時間を削減(例:作業時間30h/月が4h/月に短縮) - ヒューマンエラーの低減
例)データ入力ミスをほぼ0に低減(例:誤記率5.0%が0.1%に低下) - 価値の高い業務へのシフト
例)定型作業を削減し、企画や分析などの付加価値業務にシフト - 業務改善のPDCAサイクル構築
継続的な効率化の仕組みを整備し、改善を定着
2. チェックリストで業務を棚卸し、RPAに適しているかを判断する
RPAを導入する前に、自部署の業務を整理することが不可欠です。
以下の手順で業務整理チェックリストを作成し、RPA化の適否を見極めましょう。
(1)業務の棚卸し
日常的に行っている業務をリスト化し、定型性・頻度・所要時間を整理します。
この段階で、意外と時間を取られている作業や非効率な業務を発見できます。
(2)業務の可視化
作業手順をフローチャートや図にして可視化します。
現場担当者へのヒアリングを行い、実際の作業フローを正確に把握することが重要です。
(3)改善ポイントの特定
時間がかかる作業やミスが発生しやすい作業を優先的に自動化候補とします。
課題や自動化の可否を明確にすることで、RPA導入の目的と方向性が明確になります。
業務整理チェックリスト例
| No | 業務名 | 担当 | 頻度 | 所要時間 | 定型作業か | 自動化優先度 | 改善案メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 顧客データ入力 | 鈴木 | 毎日 | 30分 | ○ | 高 | Excel→システム転記を自動化、入力チェック機能追加 |
| 2 | 請求書作成 | 田中 | 月次 | 2時間 | ○ | 中 | テンプレート化済み。RPAで定型入力・PDF出力 |
| 3 | メール送信(定期報告) | 佐藤 | 週1 | 15分 | ○ | 高 | フォーマット化されているので自動送信設定 |
| 4 | 会議資料作成 | 山田 | 不定期 | 1時間 | △ | 低 | 内容が変動。自動化は難しいが、テンプレート活用で効率化 |
3. 業務フローを見える化し、IT部門に申し送る
業務フローを見える化することで、RPA導入を依頼したIT部門との認識の相違がなくなり、 「現場で使えるRPAの設計」が実現できます。
見える化のコツ
- 作業の粒度を揃える:作業を細かく分け、自動化しやすくします。
- 担当者視点で記録:実務者の立場で手順を記載し、漏れや曖昧さを防ぎます。
- 現場確認:作成後は必ず現場に確認してもらい、実務との齟齬を防ぎます。
4. 自部署でRPAを設計する
IT部門に依頼せず、自部署でRPAを設計する場合もあります。
自部署でRPAを設計する場合は、以下のステップで進めるとスムーズです。
STEP1:自動化対象業務の選定
業務整理チェックリストの中から、ルールが明確で定型的な作業を優先します。
最初は「小さく始める」のがコツです。1つの業務で成功体験を作ることで、次の導入がスムーズになります。
STEP2:フロー設計と試作
自動化のフローを作成し、小規模でテスト運用します。
最初から完璧を目指さず、改善サイクルを回すことが重要です。
「試行錯誤を前提とする」という考え方が成功のカギになります。
STEP3:運用と改善
テスト結果を元にフローを修正します。運用後も定期的に見直し、業務改善のPDCAサイクルを回します。
「導入して終わり」ではなく、「継続的に改善する」という視点が大切です。
STEP4:現場への浸透
操作手順や注意点をマニュアル化し、現場に教育します。
理解不足だと定着しないため、現場目線でのフォローが必要です。
自部署でRPA導入の経験を積むことで、他部署への横展開や業務改善のリーダーとしてのスキルも身につきます。
これが組織全体の効率化へとつながっていきます。
まとめ
RPA導入は、業務整理と改善から始めることが成功の鍵です。
まず自部署の業務を可視化し、改善ポイントを見極めることで、自社内で効率的かつ効果的に自動化を進められます。
RPAを活用して、業務効率化と現場の負荷軽減を同時に実現しましょう。
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この記事で紹介した『業務整理のステップ』を演習で体験できるのが本研修です。
研修では、業務時間削減のための課題の見極め方と整理手法を学び、洗い出した業務を業務フローとして整理。RPAで自動化するポイントを理解し、演習を通して自分の業務に即した業務フロー作成スキルを身につけます。*実機を使ったRPA操作はありません*
対象者
- 自部署でRPAを導入したいが、業務整理が進まず困っている方
- RPAに限らず、まず業務整理から効率化を考えたい方
- 今までシステム担当ではなかったが、RPA導入やまとめ役のスキルを身につけたい方
よくあるお悩み・ニーズ
- RPAを導入したいが、自部署のどこに導入ができるのか、どこから手を付ければ良いか分からない
- RPAは全て外注をするとコストが高くなるので、自部署の業務整理までは自社内でやりたい
- 業務改善をとりまとめる担当者になったが、RPAの理解と業務フロー作成のスキルが足りない
- RPAは浸透してきたが、現場の人にもっと要件定義をできるようになってもらわないと改善が進まない
本研修のゴール
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Teams・Outlook・Forms に「ちょい足し」自動化!~コーディング不要 Power Automate で簡単連携
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