トラブル対応に「勝ち」はない?最高技術責任者が語る、技術者の心得
合気道に学ぶ、技術者の心得
システムの仕事に携わってきた中で、障害(人災・天災を問わず)に伴うトラブルは、数え切れないほど経験してきました。それでも幸いなことに、大きな失敗をすることなく、何とか切り抜けて今ここにいます。そんな私が常に心がけているのは、実はシステムの知識や技術そのものではありません。
合気道の7つの基本
- 素直な心
- 動中に静を持す
- 対すれば相和す
- 体の重心
- タイミング
- 呼吸力と集中力
- 円運動
このうち、最初の3つはトラブルシュートにもそのまま通じます。素直な心で事象を分析し、静かに落ち着いて対処し、相手(=トラブル)と仲良くする。合気道には「試合」がありません。相手を倒すのではなく、調和することが極意です。
トラブルシュートに「完勝」はない
トラブルというのは、一度発生してしまえば、0点どころか即座にマイナス点(△)になります。このマイナスを元に戻す(=0点にする)だけでも、非常に大変な作業です。 実際には、△10点に戻せれば良い方でしょう。ましてや、トラブル後に100点を取ることなどあり得ません。たとえば、失われた顧客の信用・信頼は、長期間にわたってもプラスには戻らないのです。
トラブル対応においては、「完敗しないようにコントロールする」という意識が重要です。「完勝」を目指すのではなく、被害を最小限に抑えることを目的とすべきです。
トラブル対応の具体的な注意点
1.二次災害の防止
最初の一次災害で止めることが最優先です。トラブルシュートの誤りによって、さらに別のトラブルを引き起こすことが最も危険です。
2.長期戦に備える
「全員徹夜 → 数日後に全員ダウン」はよくある話。疲労状態では冷静な判断ができません。シフト体制を敷き、長期戦・持久戦に備えることが肝要です。
3.現場を邪魔しない
過度な報告要求や現場への介入は混乱を招きます。指揮命令系統を整備し、普段から訓練しておくことが大切です。現場が冷静に対応できる環境を整えましょう。
トラブルシュートで全勝優勝はあり得ません。「8勝7敗で勝ち越せば良い」という意識で、冷静かつ着実に対応していきましょう。
初動から収束まで、障害対応のカギは「回復力」
障害対応では、初動の状況把握とレベル判定、的確な判断に基づく指揮と運営、そして収束まで持続する回復力が重要です。技術力だけでなく、冷静さと柔軟性を備えた一貫した対応力が、トラブルからの早期回復と信頼の維持につながります。
【極意シリーズ】(実践編)システム障害管理研修~回復力で対処する
本研修は、激動の時代を勝ち抜く「強いリーダー」の育成を目的としています。守りに軸を置いた発想を転換し、組織にイノベーションを起こしていくことのできる「強いリーダー」を目指すための、考え方とスキルを身につけていただきます。
よくあるお悩み・ニーズ
- 初めて大規模プロジェクトに取り組むため、障害対応をあらかじめ学びたい
- 大規模プロジェクトの失敗を経験したため、次は立て直せるようにしたい
- プロジェクトのトラブル防止と発生時の対応を知ることで、不測の事態に備えたい
本研修のゴール
- システムの大規模障害対応について、その指揮と全体運営ができる
- レジリエンスをもってシステム障害に対応し、トラブルから回復できる力を身につける
- トラブルの状況とレベル判定を適切に行い、その後の対応を判断できるようになる
セットでおすすめの研修・サービス
【極意シリーズ】(実践編)プロジェクト立上げ管理研修~先手必勝の準備術
本研修では、プロジェクトの立上げを成功させるための要点を学びます。ユーザーと経営者、双方の目線で事前準備を進めることや、決裁を得るためにリスク・デメリットを関係者に説明することの重要性に触れます。
講義とワークを通して立上げ管理への理解を深めていくことでプロジェクトマネージャーとしての実践力を磨き、スムーズかつ失敗しないシステム開発の実現を目指すプログラムです。
【極意シリーズ】(実践編)ハイリスクプロジェクト管理研修~予兆管理
本研修は「ハイリスクプロジェクト」に焦点をあて、リスクを正しく理解し適切な対策を講じられるようになるための研修です。講義ではリスクマネジメントを体系的に学び、成功・失敗事例からプロジェクトを比較し要因を考えます。
潜在するさまざまなリスクへの備えとして、ステークホルダーと適切に情報を共有することの重要性についても理解を深めます。また、ワークを通して、ハイリスクプロジェクトの定義とリスク要因、具体的なケースを想定したリスクマネジメントの取り組みなどを通し、失敗による損害を最小限に抑えられるプロジェクトマネージャーを目指していただきます。
【極意シリーズ】(実践編)トラブルプロジェクト管理研修~早期対応と再発防止
本研修では、トラブルを収め立て直しを図るために確認、対応すべきことを2日間で学びます。具体的には、トラブルプロジェクトの基準設定を理解し、未然防止と早期対処の両方に必要な知識・心構えを身につけます。最後には、プロジェクトの中で何度もトラブルが発生した場合のケーススタディに取り組み、プロジェクトマネージャーの立場で対策が妥当だったかを考えます。