無料で始める生成AI導入~Copilot Chat商用データ保護機能とChatGPT学習データ利用の停止申請(オプトアウト)

1.中小企業が抱える導入の障壁~「無料版」への不安
多くの中小企業が生成AI導入を躊躇する理由は明確です。無料版への安全性の不安、本格導入に向けた予算確保の困難、そして現場や上層部からの理解不足⋯⋯これらの課題が複合的に作用しています。
しかし実際には、Copilot ChatやChatGPTなどのサービスを適切に設定・活用すれば、これらの課題をコストゼロで乗り越える道筋が見えてきます。
2.無料版「Copilot」「ChatGPT」のオプションとその効果
MicrosoftやOpenAIなどの主要クラウドサービスでは、商用利用を前提とした無料枠や設定オプションが用意されています。それらを正しく使えば、安全性・機能性・透明性を確保したまま、PoC(概念実証)を実用レベルで始めることができます。
Copilot Chat
- サービス:対象のM365(Microsoft365)ライセンスで有効になる「商用データ保護」機能
- 実現される価値:有料相当の機能をPoCフェーズで安全に試行可能
ChatGPT
- サービス:学習データ利用の停止申請(オプトアウト)
- 実現される価値:無料でもセキュリティ懸念を払拭できる安心感
こうした取り組みは、抜け道を探すのではなく「正規の機能を賢く最大限活用する」ことで、無料でありながら高い納得感と導入効果を得られる戦略です。
3.実装ステップ:「完了メール」で申請管理を自動化・可視化する
実際のPoCとして機能させるには、実装のしかけも欠かせません。Copilot Chatの無料ライセンス配布状況や、ChatGPTの学習データ利用停止申請状況を可視化することで、社内合意や管理が格段にしやすくなります。
※2025年7月現在、ChatGPTは設定画面から学習を無効化できますが、『誰が・いつ・確実に設定を完了したか』を会社として管理・証明するため、ここではあえてOpenAIへのオプトアウト申請を行います。完了時に届く確認メールを管理することで、セキュリティ担保の証跡とし、経営層も安心して導入を承認できる体制を構築します。
ChatGPTのオプトアウト申請が完了すると、OpenAIから申請者宛に確認メールが届きます。このメールを、社内の管理事務局など指定されたアドレスに申請者自身が転送する運用を前提とします。転送されたメールを受信した管理アカウント側で、OutlookとPower Automateを用いて自動処理を行い、対応者リスト(例:Excel Online)に登録・更新します。
対応者リスト
| 部署 | 氏名 | 申請状況 | 申請日 |
|---|---|---|---|
| 営業部 | 田中一郎 | 済 | 7/20 |
| 営業部 | 佐藤花子 | 未 | - |
| 管理部 | 鈴木次郎 | 済 | 7/18 |
Power Automateの設定例
- トリガー:「新しいメールが届いたとき」
- 条件:件名に「Your Do not train on my content request is complete」を含む
- アクション:送信者メールアドレスをもとに対応者リスト内を検索し、該当者がいれば行を更新、いなければ新規追加
このように部署別に一覧化されていれば、未対応者へのフォローや進捗の社内共有も簡単です。
※OpenAIの申請方法は変更される可能性があります。実施の際は、最新の申請方法をご確認ください。
4.「AI活用はズル」ではない:文化を反転する仕掛け
生成AIを使っていることを口に出しにくいという空気は、意外と根深いものがあります。「楽をしていると思われたくない」「出力の質を疑われるかも」といった心理的ハードルが、現場の活用を妨げている実態があります。
そんな空気を変える第一歩が「自己開示」です。
たとえば、ある推進担当者が「自分の業務成果はすべてAIが生成したもの」と明言したことで、周囲の抵抗感が一気に薄れたという事例もあります。空気を変えるには、ツールの導入だけでは足りません。使うことが前向きで自然なことである、という価値観を示す「文化設計」こそが肝心です。
5.稟議・合意形成を「Goと言いやすい空気」に変える
PoCを稟議に通すには、「今から始めたい」ではなく、「ここまでお膳立てされていれば、もう進めてもいいだろう」と自然に思わせる状態をつくることが重要です。
自動リスト化された導入実績、関係部署との調整済みフロー、DX推進部門による導入スケジュール──すでに整った運用基盤と成果の兆しを示すことで、決裁者は「Go」を出しやすくなります。稟議とは、計画段階の想定を超えた「実現可能性」が見えた時、初めて納得感をもって動くもの。十分に整った仕組みと実績の提示こそが、合意形成の本質です。
6.結論:無料で使えるものは、とことん使い倒す
人手も予算も限られる中小企業にとって、各社が提供している無料枠や設定機能を最大限に活用することは、導入コストを抑えるだけでなく、「できることの範囲」を大きく広げる戦略でもあります。
Copilot Chat「商用データ保護」機能の活用、ChatGPTの学習データ停止申請、Power Automateによる実装、そして文化反転を含めた社内展開まで──これらを組み合わせれば、導入費ゼロで、社内PoCの枠を超える現実的なAI活用が始められます。
無料という制約ではなく、無料という「機会」として捉え、まずは使い倒してみる。その先に、次の選択肢と組織の変化が待っているでしょう。
生成AI活用研修ラインナップ/選び方ページ
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