持続可能な観光開発を実現する「地域観光マネジメント」の進め方~ビジョン策定から組織化までの5ステップ

人口減少や事業者不足といった、地域が抱える課題に向き合いながら観光振興を進めるには、短期的な集客だけでなく、将来を見据えた持続可能な観光開発の視点が欠かせません。
本コラムでは、地域が自走するための地域ビジョン策定のポイントや専門家による現地視察の活かし方、基盤構築と組織化など、実務で役立つ観光マネジメントの進め方を5つのステップでご紹介します。
1.持続可能な観光開発を成功させるための3つの共通認識づくり
持続可能な観光開発という言葉は、近年多くの地域で使われるようになりましたが、その解釈や取り組みの深度は地域ごとに大きく異なります。単に環境負荷を下げる、来訪者数を制限するといった施策だけではなく、地域経済の循環や担い手の育成、住民の暮らしとの調和までを含めて設計することが、本来求められる姿です。
そのためには、観光を「外から人を呼ぶための手段」として捉えるのではなく、地域が持つ価値を再確認し、内側から磨き上げていくプロセスとして位置づけることが重要になります。
持続可能な観光開発を進めるうえで重要になるのは、行政、観光協会、事業者、住民など、多様な主体が地域の現状と将来像を共通認識として持つことです。観光を単独の施策として扱うのではなく、暮らしや産業、文化との関係性を踏まえながら「地域としてどのような姿を目指すのか」を共有することで、観光施策全体の方向性がそろい、継続的に取り組みを進めやすくなります。
そのためには、以下の視点で話し合いの場を整えることが有効です。
①地域の資源を棚卸しする
自然や文化、食、体験といった多様な観光資源を丁寧に整理し、地域ならではの魅力を明確な言葉で表現します。
②課題とリスクを明確にする
アクセス、受入れ体制、人材不足、情報発信の弱さなど、持続的な運営を妨げる要素を整理します。
③目指す観光の姿を言語化する
地域にとって望ましい観光のあり方(=ビジョン)を、数字だけでなく質の面(「どのような来訪者に、どんな価値を提供するか」など)から描きます。
話し合いの場づくりにおいて重要なのは、単に情報を共有するだけでなく、立場や役割の違いによる認識のズレを丁寧にすり合わせることです。行政と民間事業者、観光に関わる人と日常生活を営む住民とでは、観光に対する期待や不安が異なることも少なくありません。
こうした前提を踏まえた上で対話を重ねることで、「誰かのための観光」ではなく、「地域全体にとって意味のある観光」という共通認識が形成されていきます。
2.合意形成を支える「対話の場づくり」
観光開発では多様な主体が関わるため、合意形成のプロセスが特に重要です。そのため参加者が自ら考え、意見を出し合える場づくりが求められます。持続可能な観光開発を推進するための話し合いの場としては、時にワークショップの手法が効果を発揮します。
ワークショップ形式の対話は、参加者一人ひとりが主体的に考え、発言するきっかけをつくる点で有効です。専門用語や計画論に偏ることなく、日々の現場で感じている課題や違和感を共有することで、机上では見えにくい論点が浮かび上がります。
また、短時間で結論を出すことを目的とせず、段階的に議論を深めていく設計とすることで、合意形成の質を高めることができます。
3.観光ビジョンを実行に移すためのKPI設定と管理方法
その後、ビジョンを基にしたKPI策定とマネジメントシステム構築、評価・モニタリング手法の設計を行います。
- 各主体が持つ議論に必要な専門知識・実状を共有する
- グループで課題を整理し、解決策を検討する
- 決定事項を行動計画として明文化する
こうした流れにより、議論が具体的な実行フェーズにつながります。
KPIや評価指標を設定する際には、来訪者数や売上高といった定量的な指標だけでなく、地域内の負担感や満足度といった定性的な要素にも目を向ける必要があります。これにより、成果が一部の主体に偏っていないか、地域全体として健全な状態を保てているかを継続的に確認することが可能になります。
4.専門家による現地視察/伴走支援で持続可能な観光開発案を設計する
地域で描いたビジョン・行動計画を具体的な行動に落とし込むには、客観的な視点が欠かせません。専門家による現地視察と伴走支援を活用することで、地域内部だけでは気づきにくい魅力や改善ポイントが明確になります。
- 観光導線の最適化
- 安全・受入体制の確認
- コンテンツの磨き上げ余地
- 地域外から見た魅力とのギャップ分析
専門家の関与は、単なる助言にとどまらず、地域の取り組みを客観的に整理し、実行可能な形へと翻訳する役割を果たします。現地視察を通じて得られた気づきを基に、地域側と対話を重ねながら改善案を検討することで、現場に無理のない計画へと落とし込むことができます。
また、伴走支援という形を取ることで、計画策定後の実行段階においても継続的なフォローが可能となり、途中で立ち止まってしまうリスクを軽減できます。
これらを整理することで、地域で取り組むべき優先順位がはっきりし、より実現可能かつターゲットのニーズに即した観光開発案の作成に繋がります。
5.自走できる観光組織へとつなぐ基盤構築と組織化
持続的に行動計画を実行するためには、属人的な取り組みではなく組織的な運営を予め構築することが必要不可欠です。体制の明確化や情報共有の仕組みづくりを行うことで、地域が自走できる観光組織へと育っていきます。
- 業務の体系化
- 人材育成の仕組みづくり
- 継続的な改善プロセスの構築
組織化の過程では、役割分担や意思決定の流れを明確にすることが重要です。誰が判断し、誰が実行し、どのように情報が共有されるのかを整理することで、特定の個人に負荷が集中する状況を防ぐことができます。
さらに、外部環境の変化に柔軟に対応できるよう、定期的に取り組みを振り返り、改善を重ねる文化を組織内に根づかせることが、長期的な自走につながります。
まとめ:継続的なプロセスとしての観光開発
持続可能な観光開発は単発の施策ではなく、地域の状況に応じて継続的に更新していくプロセスです。初期段階での丁寧なビジョン設計と体制づくりが、その後の取り組みの質とスピードを大きく左右します。
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本サービスでは、地域の関係者が参画しながら観光ビジョンの策定やKPIの設定を行い、専門家の知見を取り入れつつ、実行可能なアクションプランへと落とし込みます。さらに、継続的に取り組みを推進できる組織づくりまで一貫して支援し、地域が自走できる観光マネジメント体制の構築を後押しします。
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