今なぜ「サーバント・リーダーシップ」が注目されるのか~変化の時代に求められる、支えるリーダーの役割

会社において、リーダーに求められる役割は大きく変化しています。
かつては、リーダーがすべてを決め、部下はその指示に従う、いわゆる「支配型リーダーシップ」が一般的でした。上司の指示通りに動くことが組織の正しいあり方とされ、成果を上げるための最短距離と考えられていたのです。
しかし、今はそのような単純な構図では組織を動かしきれなくなっています。理由は大きく2つあります。1つ目は、過去の知識や経験が急速に時代遅れになっていることです。テクノロジーや市場環境の変化が激しく、昨日までの成功体験が、今日の課題解決には通用しないことも珍しくありません。昔のやり方や自分の経験に頼った指示命令型のリーダーは、部下の主体性を奪い、組織全体に大きなストレスを与える結果となります。
2つ目は、支配型リーダーシップがチームの士気低下や離職リスクに直結することです。部下が上司の指示に従うことを最優先とするあまり、自ら考え行動する力が育たず、組織全体が「指示待ち体質」になってしまいます。部下が自分の意見や価値観を表明できない環境では、創造性は失われ、ミスやトラブルの報告も滞り、改善が進まないのです。
こうした状況を打破する手段として、最近注目されているのがサーバント・リーダーシップです。
サーバント・リーダーシップの本質は部下の潜在能力を引き出すこと
サーバント・リーダーシップとは、リーダーが部下や組織に「仕える」姿勢を持ち、支配ではなく支援を通じて成果を高めるリーダーシップスタイルです。
従来の指示命令型とは異なり、部下の自律や成長を重視し、リーダー自身が環境づくりに注力します。リーダーは部下を動かすことを目的とせず、部下が自ら考え行動できるようサポートすることで、個々の潜在能力を最大限に引き出します。
「心理的安全性」がサーバント・リーダーシップの核となる
その核にあるのが「心理的安全性」の確保です。部下一人ひとりの価値観や意見を尊重し、安心して発言できる環境を整えることで、チーム全体の創造性や改善力が高まります。たとえば、提案に対して「なぜそう考えたのか」と丁寧に問いかける姿勢や、1対1面談などで日常的に声をかけることが、信頼関係を育てる重要な行動です。
心理的安全性が高まれば、部下は失敗を恐れずに挑戦し、チームとしての学習スピードも向上します。また、リーダーは部下の話に耳を傾け、意図や背景を理解し、必要な支援を行うことで自律的な行動を促します。さらに、フィードバックや学習機会を通じて成長を後押しし、個人の成長とチームの成果を両立させます。日常業務においては、課題の整理や小さな改善テーマの設定、成果の共有などを通じて、学びと改善のサイクルを回していくことが重要です。
つまり、サーバント・リーダーシップとは単なる精神論ではなく、「仕えることによって成果を生み出す」ための実践的手法なのです。リーダーが支援者として関わることで、部下は主体的に動き、組織全体が自律的に成長する文化が根づいていくのです。
実例:支配型からサーバント型への転換で成果が変わったチーム
ある製造業の開発チームでは、「上司の指示が絶対」という文化が根付き、部下が萎縮して意見を出せない状態が続いていました。この問題を解決するため、社長の推進により、リーダーを支配型からサーバント型へ転換させるべく取り組みが行われました。
まず現状把握と課題の可視化から始め、部下に小さな改善テーマを任せて成功体験を積ませる仕組みを導入しました。リーダー自身が「聞き役」に回り、部下の意見を尊重する1対1面談を重ねたことで、信頼関係が生まれました。結果、これまで抑え込まれていた現場の改善アイデアが次々と生まれ、改善提案の数は3か月で4倍に増加しました。現場の声をもとに工程や作業手順の見直しが進んだことで、ミスやトラブルが減り、製品の不良発生率が35%減少しました。
同時に、「上司がきちんと話を聴いてくれる」という安心感が広がり、上司への信頼を感じる社員の割合も倍増したのです。この成功事例が波及し、同様の取り組みを営業部門にも展開したところ、顧客への提案件数が25%増加し、受注率も上昇。リーダーが支援者に徹することで、現場発の改善と成果が両立する組織へと変化しました。
サーバント・リーダーシップを成功させるためのステップ
サーバント・リーダーシップへの転換を自分の部署で実現するためには、まず、リーダー自身のマネジメントスタイルを振り返り、「支配」「支援」のどちらに偏っているかを知る必要があります。
次に、サーバント・リーダーシップの行動原則を理解した上で、リーダーは下記を行って信頼関係を育て、心理的安全性を高め、部下が自律的に成長できるようサポートします。
- 傾聴
相手の意見や感情を評価せずに受け止め、理解しようとする姿勢。部下が安心して話せる関係をつくります。 - 承認
結果だけでなく努力や成長の過程を認めて言葉にすること。小さな成功体験を積み重ね、部下のモチベーションを高めます。 - 支援的フィードバック
相手を責めずに「次にどうすればよくなるか」を一緒に考える対話。部下が自ら気づき、行動を変える力を育てます。
さらに、職場では、以下のようなことを実践します。
- 部下に任せる会議運営
議題設定や進行を部下に委ね、リーダーはサポートに回ることで当事者意識を高める。 - 主体性を引き出す質問づくり
「どう思う?」「なぜそう考えた?」など、部下の考えを促す問いかけで自発的な行動を促す。 - 成功・失敗を共有し合う対話
結果だけでなくプロセスを共有し、学びをチーム全体で活かす取り組みです。
これらの取り組みで、上司の指示が絶対という組織から、自ら考え動くチームへと変わっていくことができるのです。
リーダーシップ研修~サーバント・リーダーシップで部下の成長を促進する
リーダーになることについて受け入れ、自分なりのリーダー像を考えていただきます。そのうえで、部下との関係を構築する方法やチームで成果を上げる手法を習得します。
研修のポイント
- リーダーとは役割であることを理解する
- リーダーとしての経験や失敗を共有する
- サーバント・リーダーシップで部下と向き合う
- チームでミッションを達成する
よくあるお悩み・ニーズ
- 突然リーダーを任され、周りの人をまとめていく自信がない
- リーダーシップを発揮する方法がわからなくて不安
- リーダーに求められる役割や、必要なスキルを知りたい
本研修の目標
- 成果につながる具体的な行動を積極的に提案し、周囲を巻き込みながら実行できる
- リーダーとして部下に応じた指導ができ、業務管理ができる
セットでおすすめの研修・サービス
(2時間研修)傾聴力向上研修~部下の本音や考えを引き出す
上司として、部下の本音を引き出せるかどうかはとても重要です。例えば、お互いの真意をもって話をすることができなければ、部下のやりがいにつながる指導・育成やキャリア支援は難しいといえます。
そこで本研修は、前提として必要な「傾聴力」に焦点をあてます。傾聴の基本原則や姿勢、避けるべき聴き方などを学び、ロールプレイングを通して実践スキルを習得します。
心理的安全性を高める研修
心理的安全性が低ければ、否定や失敗を恐れ、新たな一歩を踏み出せません。また1人ひとりが持っている力を十分に発揮できない状況は、組織の中でダイバーシティ推進が進まない理由になりかねません。
インソースでは、「心理的安全性」を高めるために必要となるコミュニケーションスキルやチームワークを向上させる研修や、1人ひとりの力を最大限に発揮させるためのダイバーシティ推進の研修などをご用意しております。




