上林憲雄教授 「日本型経営を支える管理職の役割」

上林憲雄教授 「日本型経営を支える管理職の役割」
 

4.「ワークライフバランス」   

ワークライフバランスの問題点

中間管理職が考えねばならない課題として、近年、「ワークライフバランス」が注目されています。諸々の議論がありまして、ワークライフバランスの概念規定もまだまだバラバラの状態であります。

当初は女性従業員の働き方に特に焦点が当てられていました。しかし、ワークライフバランスというのは女性だけに限らず、男性も含めた全従業員に関わる問題です。特に、中間管理職のホワイトカラーの人達がとりわけワークライフバランスを意識して働くことが重要です。

ただ、最近のワークライフバランスの議論には私自身、不満があります。「有給取得率を増加させる」とか、「労働時間の短縮」といった側面ばかりが強調されすぎているきらいがあると思っています。何もこれらのことが不必要というわけではありませんが、経営学の観点からすると私は若干不満があります。

ワークは必ずしも「骨折り」ではない

ワークライフバランスの議論でよく言われるのが「働く環境」ですが、さらにその「働く環境」の議論の中で、女性従業員の働き方の議論と従業員全般の議論に分かれます。そこで私が申し上げたいポイントは、働き方そのものや仕事の中身と、「働く環境」とを結びつけた議論をしないと、企業経営でも経営学でもあまり良い結果にならないと思います。

では、日本の企業でワークライフバランスを考える場合、どうすべきかということですが、そもそも労働生活と、余暇をはじめとする家庭・地域・社会生活などからなるライフ生活とは、完全に二分できるものではありません。

ワークライフバランスという言葉そのものが欧米的な発想で、ワークとライフのバランスを取るということは、二つある両者の間の均衡点を取るという発想であります。その前提は、「ワーク」は苦痛で骨折りであって、ライフは余暇で遊びというわけです。ただ日本企業はこれまで、ワークとライフを完全に分離するのではなく、うまい形で統合しながら、ワークの中にライフ的な要素をうまく取り込みながらやって来たという側面があります。ワークが日本企業では必ずしもイコール骨折りではありません。骨折りな部分もありますが、働く従業員の主体性や思考というものをうまく取り込んでやって来たわけです。そのことを無視して労働時間の短縮などの量的な話ばかりをしていると、今までの日本企業の強みと言われてきた所までが駄目になってしまうといった危惧があるのではないかと思っております。職務も業務もそれ自体が楽しい、つまり創意工夫のしがいのあるものに変えて行かねばならないということです。

日本型ワークライフバランス

では日本型ワークライフバランスというのは、どのようなものかということですが、個々人でバランスの取り方も多様であっていいわけであり、その人のトータルライフやキャリアを考えた上でのバランスの取り方もあってしかるべきです。ですから、質的な側面と個人の自律性を考えたワークライフバランスの議論をしなければならないわけです。従業員自らが選べるメニューがたくさんあること、自律的に選択可能なメニューが多くあるということが、重要なのではないでしょうか。

ワークライフバランスの問題は、長期の視点に立たねば議論できない問題です。政府や行政が数年計画といった割と短期的な視野でやろうとしていますが、これでは困難です。文化や働き方そのものを変えるといった発想になってくるわけですから。

実現に向けたスリ-ステップですが、無意味な労働時間はもちろんサービス残業などはもっての他で、カットすべきです。同時に質的な側面を考えた工夫も必要です。それから働く各位のライフスタイルに応じた選択可能なメニューの確立であり、多様な働き方を実現して行くべきです。

おわりに

駆け足でしたが、活き活きと働ける管理職を目指して何が必要かということを、最後にまとめておきたいと思います。

中間管理職のリエゾン役(上下のつなぎ役)からの脱却、戦略家としての役割、そしてクリエイティブな仕事内容が重要であり、そのためにはITを含めた技術的基盤とそれに加えて組織的・文化的な基盤も重要であり、その変革も必要であるということです。

また成果主義やエンプロイヤビリティー、ワークライフバランスについて、しっかりとした持論を中間管理職の皆さんに持っていただく、まず自分で考えてみるという姿勢が何よりも重要ではないでしょうか。

日本的経営といえばかつては現場労働者が主役だったわけですが、しかしこれからは中間管理職が日本の企業の牽引役になっていかねばならならず、その際のキーワードは自律ということです。

活き活きと働く活力のある管理職の存在が、新しい日本型経営を支えていく基盤です。

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