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新卒採用した人材が入社数年で離職してしまうのを防止するには

人事担当者30のお悩み

悩み
最近、新卒採用した社員・職員が、入社数年で離職してしまうケースが増えている。組織にとどまってもらうにはどうすれば良いのか。
回答
まずはメンターやOJT担当者を設定する制度を活用し、中堅層が新入社員・職員や若手の面倒をしっかりと見るようにしましょう。そして新人や若手とのコミュニケーション不足は、転職や離職につながりやすくなります。労力を惜しまず、職場全体でコミュニケーションを取るように心掛けることが大切です。コミュニケーション方法には、「これが良い」というやり方はありません。毎日のように声掛けが必要か、1週間に1度くらいの進捗確認程度で良いのか等、新人や若手それぞれの個性に合わせた個別対応で行いましょう。大切なのは、組織として、また個人として「あなたは大切です」というメッセージを伝えることです。
また、新人・若手の離職の原因になりかねない、組織としての課題をあぶり出すことも大切です。もし課題が見つかれば、早急にその解決を図りましょう。そうすることは新人・若手のみならず、組織の全員が働きやすいと思える職場作りにもつながります。組織全体で円滑なコミュニケーションが取れるように取り組み、働きがいのある職場作りを目指すことで、転職や離職を考える新人・若手も減るでしょうし、
より良い組織風土にもなっていきます。

新入社員・職員や若手が入社数年で離職や転職をする原因・背景を考える

厚生労働省の調査(※)によると、新卒3年以内の新人・若手の離職率は約3割ということです。事業所規模が小さい組織ほど、入社3年以内の離職率が高い傾向にあるようです。
原因のひとつに、新人・若手の面倒をあまり見られていないことが挙げられます。OJTなど、新人や若手を導く制度が組織内に確立していることももちろん大切ですが、新人・若手を指導・支援するべき人たちそれぞれが、自身が抱える仕事で手一杯なため、新人・若手に構う時間があまり取れないという状況もあり得ます。

最近の新社会人の傾向として、小さい頃から誰かが世話を焼いてくれるのが当たり前になっていて、「面倒を見てもらわなくても自分で仕事を探し、頑張れる」ようなタイプは稀になってきています。また、放っておかれることで孤独感も感じるでしょうし、仕事のやり方もあやふやになりがちです。そのため、働くモチベーションが下がり、色々悩んだ挙げ句に辞めてしまうことが考えられます。

一方で、学校にいる時と社会人になってからの環境のギャップが激しい可能性もあります。学校はある意味、特殊な空間です。学生期間中は「正しいか正しくないか」という2軸の価値観が主であり、グレーゾーンがあまり許されない環境にいた人がほとんどでしょう。しかし、社会に出た途端、グレーなことばかりが多く、それが若者には受け入れられないのかもしれません。そうすると、そのギャップをどう埋めるかが大事になってきます。「はっきりしてくれない」ことに対応できなくて、会社を辞めたり、心身を病んでしまうケースもあります。しかも「世の中はグレーなことばかりである」ことが事実だと誰も説明してくれません。ですので、「自分が悪い」か「会社が悪い」のような振れ方になり、「この会社にいても...」という選択につながってしまうのかもしれません。

平成25年若年者雇用実態調査の概況(2016年2月26日最終アクセス)

離職防止には、「手間暇をかけて一人ひとりに合ったコミュニケーション」をすること

前述の厚生労働省の調査では離職の理由として「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」「人間関係が良くなかった」「仕事が自分に合わない」「賃金の条件がよくなかった」等が挙がっています。採用におけるミスマッチ解消のために、企業側が自組織のあまり見せたくない部分も学生に知らせる活動をする等、採用活動そのものは進化しています。それでも、「やっぱり離職」という結果になってしまうのは、実際に働く現場に、「思っていた職場とは違う」と感じてしまうからかもしれません。

それとは別に、大企業の方が辞職する人数が少ない傾向にあるというのは、育成体制や育成期間が定まっているため、辞めずに済むのかもしれません。相談相手がいて、相談の体制も整っている。それで新人や若手は組織に馴染み、働くモチベーションを高く維持できているのだと思います。
「止むを得ない離職」はともかく、今の離職率を下げるためには、手間暇をかけて一人ひとりに合ったコミュニケーションをしていくことです。

新人・若手の思いや考えに寄り添い、育成も「自分の業務のひとつである」と考える

そのためには、まず新人・若手の思いや考えに寄り添うことが大事です。向かい合うのではなく、横に立ち、同じ方向を向いて歩む人材が必要です。それが
OJTやメンター制度です。ただ、これまでのOJTは向かい合って対面で話をしていました。それに対し、メンター制度は新人や若手の隣にいて、同じ方向を向き、同じように歩んでいくものです。現在、メンターのニーズが高まっているのは、こういった背景があるのかもしれません。OJT研修の内容もメンター的要素が含まれたものになってきています。メンター制度を活用し、中堅層が若手の面倒をしっかりと見るようにすることが、離職防止に向けた第一歩です。

弊社がOJT研修や新人研修、メンター研修でお伝えするのは、「常識をちゃんとすり合わせましょう」ということです。新人・若手の常識と組織の常識、新人・若手の常識と先輩の常識、そこにズレが生じた時に「離職」という事態が起こり得ると思います。

そして、メンターやOJT担当者となり得る立場の中堅層だけではなく、「組織全体で、新人や若手の育成をする」といった意識を持つことも大切です。育成対象となる人たちの個性や特徴を把握し、それぞれに合わせたコミュニケーションの仕方や指導方法を、組織の上司や先輩、経営層にあたる人たちが意識して行うことで、組織全体の雰囲気も明るくなり、良い組織風土作りにもつながります。新人・若手が次々に離職してしまうような職場のムードは、今後、組織の存続も危ういものと考えられなくもありません。そこを突破するためにも、対策を打つことは必要です。

他方で、メンター制度やOJTに関して、中堅層のなかには、自分が働いていることの意味や価値を大事に思っている方も多くいらっしゃいます。「育成をする」ことで、その方の価値や考え方が向上します。そのため、「人材育成も仕事のひとつだ」という、コンセンサスが組織内で取れるようにすると良いでしょう。少し遠回りになる方法かもしれませんが、「人材育成を積極的にやった」ということが、いわゆる人事評価の評価軸にきちんと入っているということ。つまり、人材育成が付属の仕事ではなく、「自分の業務のひとつである」という認識を組織全体で持つことも大切になってきます。

組織の業務改善や体質改善も大切

それと同時に、前出の「離職の理由」を解消できるような改善ポイントが組織内にあるかどうか、調べるようにしましょう。もし改善すべき点が見つかれば、その対策を打ち、組織をより良くしていくことも、離職の歯止めになりますし、組織に属する全員が働きやすいと思える職場作りにもつながります。例えば、管理職のマネジメントスキルの不足や部下指導の方法、仕事の任せ方などが「離職の理由」の原因になっているのかもしれません。それらを一度に改善することは厳しいですが、ひとつひとつ対策を講じ、少しづつでも積み重ねていくことが肝要です。
今後、人口が爆発的に増えることはないと予測されます。だとするならば、縁のある新人・若手が働きやすい環境作りをしていかない限り、離職防止は難しいと考えられます。そして、その組織作りは、より良い職場作りにもつながります。


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