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ENERGY vol.08(2022年夏号)掲載

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ミドル・シニアのIT人材化がDX推進のカギを握る

"まだら模様"のDX推進の現状

コロナ禍の影響もあって、わが国では空前のDXブームとなっています。しかし進捗状況はというと、企業規模や都市と地方の違いなどによって状況がかなり異なっており、また、世代間によってもその取り組み姿勢に差があるのが実態です。

一口にDXといってもそれが定義する領域は広範囲に及ぶため、どこにフォーカスを当てるのか、あるいはどのレベルで取り組もうとしているのか、といったことが当事者の中でも曖昧になっているケースが少なくありません。特にミドル・シニアにとっては、今日までに自分流の仕事のやり方を確立してきていることもあって、やれIT化だDXだといわれても、どこか他人事として捉えてしまうことも多いのではないでしょうか。

ミドル・シニアのIT人材化が難しいのは能力の問題?

若い人は総じて記憶能力が高く、デジタルに対する抵抗感もほとんどないため、ITスキルの吸収が早いのは間違いないでしょう。それに対し、ミドルやシニアと呼ばれる年齢になってくると、頭も固くなり、業務の忙しさとも相まってなかなかITスキルが身につけられない、という話をよく耳にします。

確かに、プログラマーを育成するのに、若い人と中高年を同じ条件下で競争させたならば、若い人の方に軍配が上がることは想像に難くはありません。

求める人材は、「ITに通じているビジネスパーソン」

しかし、多くの企業が育成の必要に迫られているIT人材とは、プログラマーのようなIT技術者ではなく、「ITに通じているビジネスパーソン」です。そうであるならば、同じ"IT人材化"といっても、ミドル・シニアに求められる姿とは、若い人とは違うものです。それはつまり、ITの何たるかを知った上で、業務を俯瞰的に眺め、適切に判断するという役割なのです。

「妥当解」を導き出せるのはミドル・シニアだけ

実際に業務のDX化を進める過程では、業務の標準化が欠かせませんが、この時、何を残して何を削るべきかを判断できるのは、テクニカルな技能に長けた若手でもなければ、一般論で物事を語るコンサルタントでもありません。

自社の業務に精通し、何がリスクとなるのかを身をもって知っているミドル・シニアなのです。また、システム化の過程ではじかれたイレギュラーな業務を拾い上げ、補っていくことができるのもミドル・シニアです。このように、システム化における「妥当解」を導き出す上で、ミドル・シニアは欠かすことのできない存在なのです。

ミドル・シニア人材のDX推進には「アンラーニング」が必要

最近注目を浴びるようになってきたバズワードに「アンラーニング」という言葉があります。これは、「学習棄却」とも呼ばれる概念で、これまで学んできた知識を一旦棚上げして、新しい知識を取り入れ易くしようという考え方です。環境の変化に適応したり、一つ上のステージに進んだりする上で、このアンラーニングというプロセスは欠かせません。IT人材化においても重要な役割を担うものですが、ミドル・シニアにとっては、これまでの自分のキャリアを否定されるかのように捉えてしまい、強い抵抗感を覚えるのです。

ベテランほど「アンラーニング」効果が上がる

しかし、アンラーニングによって棄却するのは、実は具体的な「やり方」だけであり、本質的な仕事の「考え方」は活かされます。

ミドル・シニアの強みは、経験を通じて身に付けた仕事の本質の理解にあり、新たに身に付けた「もっといいやり方」を使ってその仕事の本質を体現していくことができれば、引き続き組織に大きく貢献することができるはずです。なお、ここでいう「もっといいやり方」に当たるのが、ITスキルの活用です。

インソースがIT部門でシニア人材を積極採用する理由

当社は研修をはじめとする社会人教育事業を行っている会社ですが、人事システムを開発・展開する事業部門があり、IT研修に特化した子会社もグループ内に持つなど、隠れたIT系企業としての側面を持っています。そして、意外に思われるかもしれませんが、これらの部門では多くのシニア人材が採用されており、中核人材として活躍いただいています。当社に来るまでITに携わることがほとんど無かった方も少なくありませんが、マネジメントやビジネスの何たるかがすでに身に付いている方たちなので、業務で必要なITスキルだけ身に付けていただければ、すぐに即戦力化できるのです。

ミドル・シニアをIT人材化のエバンジェリストに

社内人材のIT教育には、外部講師を招聘して行われることが多いと思われます。また、ITに通じている情報システム部門の社員が社内講師役を担うこともあるでしょう。しかし、この講師役には、これまでIT未経験者であったミドル・シニアこそ"うってつけ"です。IT人材教育の展開期に入ると、教育の対象者は、ミドル・シニアと同じく「ITに対する苦手意識の強い人たち」です。そんな人たちに対し、「自分もこれまでITを敬遠してきたが、いざ習得してみるといろんな活かし方が見えてきた」といったリアルな声を伝えることで、受け入れてもらいやすくなります。つま り、ミドル・シニアこそが最高の「エバンジェリスト(伝道者)」となり得るのです。

文/大畑 芳雄

インソース執行役員 グループコンテンツ開発部 部長。大阪大学経済学部経済学科卒。大手百貨店勤務後、大手芸能プロダクションの子会社にて商品企画に携わる。その後、ビジネスプロセスの改善支援を専門とするコンサルティング会社を経て、2010年インソース入社。2019年から現職。

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