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「答えるAI」と「問いかける私」~AIとの共創関係を築くための「質問力」とは

目覚ましい生成AIの進化と普及により、情報を集めたり、正解を導き出したり、きれいな文書に整えたりする作業はAIが引き受けてくれる時代となりました。

しかし、同じ生成AIを使っても、必ずしも同じアウトプットが得られるわけではありません。その差を生むのが「質問力」です。本コラムでは、生成AI時代に必要な「問いを立てる力」について、具体的な実践方法をご紹介いたします。

生成AIは「質問のレベル」に合わせた回答をする

生成AIの特性として、投げかけられた質問のレベルに応じた回答を返すという点が挙げられます。曖昧で抽象的な質問には、表面的な回答が、具体的で明確な質問には、詳細で実践的な回答が得られます。

例えば、「営業力を向上させる方法を教えて」という質問と、「BtoB向けSaaS商材の新規開拓において、初回訪問から受注までのプロセスで、顧客の意思決定を促進する具体的なアプローチを教えて」という質問では、回答の質が大きく異なることは容易に想像できるでしょう。

また、誰もが思いつくような一般的な問いかけには、当然ながら、誰もが知っている平凡な答えが返ってきます。多くの人とは違う視点からの問いかけや、本質を突くような質問には、独創性で価値の高い回答を「頑張って」返してきてくれます。

コンテキスト設計力で回答の精度を上げる

生成AIから的確な回答を引き出すには、知りたいことの精度を上げるための「コンテキスト設計力」が欠かせません。「コンテキスト」とは、質問の背景情報や状況説明のことです。効果的なコンテキスト設計には、「状況の明確化(組織規模、業種など)」、「制約条件の提示(予算、期間)」、「求める回答の形式(箇条書き、プロセス形式など)」、「ゴールの明示」を含めることが重要です。

例えば、「新入社員向けの研修プログラムを作りたい」という質問に、「当社は地方拠点を持つ小売業で、新入社員20名が4月に入社予定です。基本的なビジネスマナーと接客スキルを、2週間で習得させたいと考えています。予算は1人あたり5万円以内で、オンラインとオフラインを組み合わせた効果的なプログラムを設計してください」といった「コンテキスト」を追加することで、実務での活用度の高い、具体的な提案が、得られるようになります。

多角的な視点で独自の価値を生み出す

生成AIは一般的な問いには、一般的な回答しか返せないため、「多くの人とは違う視点からの問いかけ」は苦手としています。独自の切り口や新たな発見を得るには、人間側の工夫が必要です。多角的な問いを立てるアプローチとして、逆説的に考える(成功要因ではなく、失敗を避ける要因は何か)、時間軸を変える(過去・現在・未来の異なる視点から問う)、立場を変える(顧客、競合など異なる立場から問う)、制約を加える(予算が半分だったらどうするか)といった方法が有効です。

連鎖質問とクリティカルな検証

一度の質問で完璧な回答を得ようとするのではなく、連鎖的に質問を重ねて思考を深めていくアプローチも効果的です。深掘り質問(「なぜそう言えるのか」)、そもそも質問(前提を問い直す)、たとえば質問(具体例を求める)、ほかには質問(別の選択肢を探る)といったパターンを活用することで、理解が深まります。

また、生成AIの回答を鵜呑みにせず、前提を疑う、根拠を確認する、ヌケモレを探る、別の見方を求める、例外を確認するといったクリティカルな質問を投げかけることも重要です。検証的な姿勢が、AI活用における信頼性を高めます。

能動的スタンスが「人」の価値を高める

受動的な作業の大半をAIが引き受ける時代、人に求められるのは「能動的なスタンス」です。与えられた答えを鵜呑みにしない「クリティカルな視点」、問題の本質を探ろうとする「問いを立てる力」、そして最終的にどれを選択するかを決める「意思決定力」。AI時代に人に求められるこれらのスキルは、いずれも「能動的スタンス」で発揮されるものです。

考えてみれば当然で、AIは受動的なワークにおいてはとても有能ですが、能動的に何かを行うようには作られていません。そこは人が担うべきパートであり、人は、能動的なスタンスで価値を高めていく必要があるのです。

AI時代の質問力向上研修~求められる「問題発見力」と「問いを立てる力」(1日間)

インソースでは、生成AIを使いこなすビジネスパーソンに不可欠な「質問力」を体系的に学べる研修をご提供しております。

効果的な質問の要件理解から、逆算思考による問いの設計、連鎖質問による深掘り技法、クリティカルな検証質問まで、実践的なワークを通じて質問力を鍛えてまいります。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 生成AIで誰でも答えが出せるようになると、どこで差別化していけばよいのかわからない
  • 生成AIに尋ねても、知りたい答えとは違う回答が出てくることが多い
  • 生成AIは、自由度が高い分、どのような質問の仕方が有効なのかの判断が難しい

本研修のゴール

  1. 効果的な質問の要件を理解することができる
  2. 目的に合わせてさまざまな問いを使い分けられるようになる
  3. 具体的なビジネスシーンの中で「良い質問」を立てられるようになる

>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

AI時代のクリティカルシンキング研修~求められる「疑う力」と「活かす知恵」

生成AIが出したアウトプットを無批判に受け入れてしまうと、間違いや偏りを見逃すことになり、業務上のリスクにもなりかねません。

アウトプットに対して「真偽を疑う」こと」や「他の候補を探る」といった、AI時代にますます重要性が高まるクリティカルなものの捉え方を学んでいただく研修です。

>講師派遣型研修の詳細はこちら

生成AIへの仕事の任せ方ワークショップ~120%のポテンシャルを発揮する

生成AIをより本格的に業務へ活用しようとする際に多くの方が直面するのが、どんな場面で使えるかわからないという問題です。

この研修では、「リサーチ」「思考」「資料作成」「DX」「自己研鑽」という5つの視点で、生成AIを活用するコツをワークショップ形式で学んでいただけます。

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<営業レベルアップシリーズ>ヒアリング力向上研修~質問力を高め、顧客の本質的なニーズに迫る

今まで「ヒアリング」は「きく」スキルなど、一般的なコミュニケーションスキルで語られてきました。ヒアリングを営業場面ごとに分け、それぞれの場面に沿ったヒアリングスキルを集約しました。

営業活動の中で、目的を意識してヒアリングを行い、顧客の課題やニーズを引き出すスキルを身に付けていただくための研修です。

>公開講座の詳細はこちら

顧客の課題解決研修~顧客の抱える「非・不・未」を見つけ、ソリューションを提示する

ソリューション提案においては、お客さまが直接口にする問題への対応だけでなく、言動の背後にある隠れた問題(=「非・不・未」)に意識を向け、ヒアリングする力が求められます。

こうした「イシュー(本質的な問題)」を意識した質問力を学んでいただける研修です。

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