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利益と社会貢献の両方を追いかける「ゼブラ企業」へ~拡大する人事部の役割とこれからの組織のあり方~

利益追求を第一に掲げる「ユニコーン企業」が脚光を浴びた時代から、企業の価値観は大きく変わりつつあります。短期的な成長ではなく、社会との共生や持続可能性を重視する「ゼブラ企業」という考え方が、世界的に広がっているのです。

一方で、こうした変化に対応するためには、人事部が「採用と労務管理」だけでなく、経営戦略や組織文化の変革を担う存在として進化することが求められています。本記事では、ゼブラ企業の理念である「相利共生(そうりきょうせい)」を出発点に、これからの組織のあり方と、人事部が果たすべき役割の拡張について具体的に解説します。

ゼブラ企業とは何か~社会的価値と経済的価値の両立をめざす組織

利益のための成長ではなく、共に生きるための成長へ

ゼブラ企業とは、利益と社会貢献の両立を重視する組織を指します。ユニコーン企業が急成長を追求するのに対し、ゼブラ企業は堅実な経営と社会的責任の両立を目標とします。 その名前は「白と黒の縞模様」が象徴するように、利益(黒)と社会性(白)を調和させる存在という意味を持ちます。企業単体での成功ではなく、地域・顧客・従業員・取引先など、関わるすべての人々が利益を共有する「相利共生」を基盤にしています。

相利共生がもたらす経営の新基準

従来の「競争による勝者総取り」の発想から、「共存と協調による長期的な価値創造」へと企業の考え方が変化しています。 相利共生の経営では、次の3つの視点が重要です。

  • 社会課題の解決をビジネスモデルに組み込む
  • ステークホルダー全体を「パートナー」と捉える
  • 短期の利益よりも、持続的な信頼関係を重視する

こうした視点を持つことで、企業は一時的なブームに左右されず、長期的に信頼されるブランドを築くことができます。

SDGsの普及が後押しした「ゼブラ企業的経営」の広がり

SDGsが変えた企業の存在意義

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、世界中の企業に「社会の一員としてどう貢献するか」を問うきっかけとなりました。その結果、企業の存在意義(パーパス)は、利益を上げることだけでなく、社会課題の解決にどう貢献できるかという視点で再定義されるようになっています。ゼブラ企業の理念である「相利共生」は、このSDGsの考え方と深く通じるものがあります。

SDGsが与えた3つの影響~価値観の一致、企業の社会的責任の明確化、従業員教育の変化

SDGsの普及は、ゼブラ企業的経営を生み出す土壌を整えました。特に次の3点で影響が大きいといえます。

  1. 価値観の一致
    「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」など、SDGsの多くの目標が利益と社会的価値の両立を掲げており、ゼブラ企業の価値観と一致しています。
  2. 企業の社会的責任の明確化
    SDGsにより、企業も行政・市民と同様に社会システムの担い手としての役割を求められるようになりました。
  3. 従業員教育の変化
    SDGs経営を実践するために、人材育成がスキル中心から「社会的視点を持つ学び」へと拡大しました。

つまり、ゼブラ企業はSDGs時代における企業のあるべき姿を体現している存在なのです。

人事部が担う「相利共生」の実現~役割は「採用・教育」から「組織戦略」

拡大する人事部のミッション

人事部はこれまで、主に採用・労務・評価制度の設計といった管理業務を中心に担ってきました。しかしゼブラ型の経営を志向する組織においては、人事部が組織の方向性を共にデザインする存在へと進化することが求められます。 具体的には、以下のような領域に役割が広がっています。

  • 経営戦略の実現を支える人材戦略の立案
  • 従業員エンゲージメントの向上と組織文化の形成
  • 多様性と心理的安全性のあるチームづくり
  • 社会課題解決を軸にした研修・教育の企画

つまり、企業理念を現場に根づかせる「文化の翻訳者」としての役割が人事部に期待されています。

組織文化の醸成こそが共生の第一歩

相利共生の経営を推進するうえで、人事部がまず着手すべきは組織文化の再定義です。 たとえば、「成果よりも協働」「個人よりもチーム」を重んじる文化をつくることが、共生型の組織に不可欠です。そのためには、教育と評価の両面から、共に成果を出す力を育む仕組みが必要です。従業員が自社の社会的使命を理解し、「自分の仕事が誰かのためになっている」と実感できる状態をつくることが、ゼブラ企業の実現を支える基盤となります。

従業員教育の再設計~「共創する人材」を育てる仕組みづくり

共利の発想を学ぶ「マインド教育」の実施、強化

相利共生を実践するためにはまず社員一人ひとりが「自分も相手も利益を得る」という思考を持つ必要があります。その第一歩がマインド教育で次のようなテーマを教育内容に加えることが有効です。

  • 利害の異なる相手と建設的に合意形成するアサーティブコミュニケーション
  • 部門間や世代間のギャップを超えて働く協働推進
  • 社会的視点で事業を考えるSDGs・サステナビリティ

これらは単なる知識提供ではなく、「共創的に問題を解決する行動習慣」を身につける学びとして設計することが重要です。

人事が推進する「学び合う文化」の構築

従業員教育の目的は、スキル習得だけではありません。学びを通じて社内メンバー間の信頼関係を育てることが、共生型組織の根幹です。

人事部は、上司から部下への一方向の教育に留まらず、部署を超えて知識や経験をシェアし合う「共育(きょういく)」の仕組みを整える必要があります。たとえば、若手とベテランがペアで課題解決に取り組むような協働プロジェクト型の業務改善企画や新規事業開発研修などは、世代間理解を深め、組織内の結束を高める効果があります。

これからの組織のあり方~「共生」を中核とした持続可能な経営へ

ゼブラ企業的な考え方は、単なる経営トレンドではなく、社会と企業がともに成長するための新しい原理です。テクノロジーやAIが発達する今だからこそ、人と人が信頼し合い、支え合う組織の価値が再び見直されています。 そのためには、経営陣と人事部が連携し、次の3点を常に意識することが大切です。

  1. 社会的価値と経済的価値の両立を明文化する
  2. 組織文化に「共生」を浸透させる仕組みを持つ
  3. 学び続ける人材を育てる教育体系を構築する

これらを継続的に実行することで、企業は一過性の成功ではなく、社会から信頼される存在としての持続的成長を実現できます。

SDGs研修~17のゴールを目指し、組織の持続的成長を考えるSDGs研修

SDGsの知識をふまえ自社においてSDGsを実現するための課題の洗い出しや分析を行い、解決策の策定までを行います。フレームワークに沿ってグループワークを進め、SDGs達成に向けて実際に取り組む施策内容を詰めていきます。「自業種ならどうする?自社製品では?」といった身近なテーマでSDGsを深掘りしていくことで、業務改善や新規事業のアイデアを柔軟に生み出します。

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