地方創生はなぜ事業にならないのか~CSRを「良いことをする」で終わらせない、「価値を生む」への意識転換

「地方創生に取り組む意義は理解している。しかし、結局はCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)活動の延長線で終わってしまい、事業として成立しない」
ビジネスを通じて社会課題を解決したいと考える中堅・リーダー等クラスの方であれば、一度はこうした壁に直面したことがあるのではないでしょうか。
地方創生は、人口減少や人手不足といった日本全体の構造課題と直結しています。本来は企業にとっても新たな成長機会になり得るテーマであるにもかかわらず、「良いことだが儲からない」「続けるほど現場が疲弊する」といった声が後を絶ちません。なぜ、地方創生は事業化に至らないのか。そして、どうすればCSRの枠を超え、持続可能なビジネスとして成立させることができるのか。本記事では、その本質と突破口を整理していきます。
地方創生が3年で消える理由~事業戦略と収益KPIを設計しないから
多くの企業が地方創生に関わる際、最初の入口は「社会的意義」や「企業イメージ向上」です。自治体との連携、地域イベントへの協賛、短期的な人材派遣など、どれも価値ある取り組みです。しかし、そこには共通する弱点があります。
それは、「自社の事業戦略と深く結びついていない」ことです。社会貢献としては評価されても、売上や利益、競争優位性と結びつかないため、担当者の熱意に依存した単発施策になりがちです。結果として、異動や予算縮小とともにフェードアウトしてしまいます。
さらに、地域側の課題を「漠然と大きな問題」として捉えすぎている点も見逃せません。人口減少、人手不足、高齢化といった言葉は抽象度が高く、ビジネス要件に落とし込まれないまま企画が進んでしまうのです。
地方創生を事業にできた会社の共通点~地方課題を自社の強みで解決した
地方創生を事業に変えられる企業は、最初から特別な資源を持っているわけではありません。違いは、地域課題をどう捉え直しているかにあります。
例えば「人手不足」という課題一つを取っても、
- 特定業務に限定した慢性的な人材不足
- 繁忙期と閑散期の需給ギャップ
- スキルやITリテラシーの不足
など、分解すれば具体的な困りごとが見えてきます。ここで重要なのは、「地域を助ける」という発想から一歩踏み込み、自社の強みで解決できる課題は何かを冷静に見極めることです。IT企業であれば業務自動化や遠隔化、製造業であれば技術移転や省人化、サービス業であれば人材育成や運営ノウハウの提供など、切り口は無数にあります。課題を再定義できた瞬間、地方創生は「善意の活動」から「顧客価値を生むビジネス」へと姿を変え始めます。
地方創生は地域を「支援対象」にした瞬間に失敗する
事業として成立している地方創生の多くは、企業が一方的に解決策を提供する形ではありません。地域と企業が対等な立場で価値を生み出す「共創型モデル」が採用されています。
ここでのポイントは、地域を「支援対象」としてではなく、「パートナー」として捉えることです。地域には、企業が単独では持ち得ない資源があります。現場の知見、生活者としてのリアルな声、長年培われた関係性などです。
一方で企業は、事業設計力、マーケティング力、スケールさせるための仕組みを持っています。両者が組み合わさることで、初めて再現性のあるモデルが生まれます。地方創生を事業化するとは、この共創関係をどう設計するかに他なりません。
中堅・リーダーが「事業としてやる」と決めないと地方創生が止まる
特に中堅~リーダークラスの立場にある方は、現場と経営の両方を理解しているがゆえに、葛藤も大きいはずです。社会的意義を追求したい思いと、事業成果を求められる現実。その板挟みの中で、無難なCSRに落ち着いてしまうケースも少なくありません。
しかし今、企業には「社会課題を解ける組織であること」そのものが競争力になる時代が来ています。地方創生は、その実践フィールドとして極めて分かりやすいテーマです。重要なのは、完璧な成功事例を目指すことではありません。小さく試し、学び、磨き込む。そのプロセスを回し続ける覚悟があるかどうかです。地方創生を事業にできるかどうかは、地域の問題ではなく、企業側の意思決定と人材の視座にかかっています。
CSRのその先へ踏み出すには「価値を生む」こと
地方創生がCSRで終わるか、事業として根付くか。その分岐点は、「良いことをする」から「価値を生む」への意識転換にあります。地域課題を自社の成長戦略の一部として捉え直したとき、地方創生は負担ではなく、未来への投資になります。
今、地方は人手不足や産業構造の転換という大きな課題を抱えています。同時に、それは新しいビジネスモデルを試せる余白でもあります。その一歩を踏み出せるかどうかが、これからのリーダーに問われています。
地方創生事業を立ち上げる~OJT型伴走支援プログラム
地方部に本社を置き、これまで地域の産業を支えてきた製造業をはじめ、多くの地域密着型企業は、人手不足や地域と連携したビジネスモデルの構築に苦戦を強いられています。
地方創生や地域課題解決を旗印だけで終わらせるのではなく、事業として成立させるためには、地域の課題解決と事業としての持続性を実現するプロデュース能力を備えた人材が不可欠です。インソースグループでは、豊富な地域創生事業の事業立案・運営の経験をもとに、地方創生事業を立ち上げられる人材育成ソリューションサービスを提供しています。
地域の実情を深く理解し、自社の経営資源を活用し、ビジネスを通して社会課題を解決する意欲的な中堅層の社員を発掘し、実践的伴走支援を通して地方創生事業創出とプロデューサー人材育成を目指します。
セットでおすすめの研修・サービス
地方創生サービス~19種のサービスで地域活性化を支援
インソースグループの経験豊富なプロデューサー/ディレクターが地域の豊かさにつながる公共事業、地域とともに共存共栄するための民間企業との協業など、地域経済循環につながる事業・プロジェクトをさまざまなステークホルダーと共にプロデュースしています
地域共創プロデュース講座〜地方創生につながる企画を立てる(4日間)
地方創生のプロデューサー人材として必要なノウハウを段階的に学びます。
地方創生の課題や企画立案能力の概要といった基礎的な内容から、企画立案のためのマインドセット、実際に事業計画を策定するための協業モデルづくりの思考プロセスまで網羅しています。
<課題解決ワークセッション>中期経営計画策定(3日間)
1社3名開催のワークショップ形式の研修です。約1か月をかけて持続的競争優位を持つ事業モデルを考え、その実現に向けた中期経営計画の骨子の作成、「自社がどんな強みで勝ち続けるのか」を再定義していただきます。
本プログラム最大の特徴は、優れた事業モデル構築に必要なフレームワークや理論をインプットしたうえで、自社の実際の事業モデルを題材に、課題の可視化と将来に向けた検討を行う点にあります。





