株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

売上は何もしないと毎年3割落ちる~売上拡大に必要なマネジメントの4要素|営業活動・業績拡大の方法論3

売上アップは企業の経営者・マネージャーにとって常に課題です。今回は「2.営業マネージャーのマネジメント~釣り堀、えさ、腕、生産性」についてご説明します。

  1. 営業活動の基本概念
    1. 認知度曲線を知る~営業の仕事は認知の獲得・維持
    2. 営業アプローチの「数」を増やせば勝てる
      自社開発の顧客管理CRMシステムPlants12について
    3. 生成AI時代は自社Webに営業してもらう
    4. 現代の営業はメディアミックスアプローチ
  2. 営業マネージャーのマネジメント~釣り堀、えさ、腕、生産性
    1. 顧客リスト(釣り堀)の整備~営業マネージャー自らが汗をかいて整備・管理する
    2. 提案書(えさ)~一番優秀な人材が作成し共有する
    3. 営業スキル(腕)~優秀な営業担当者を育成する
    4. 営業生産性の向上~チームの行動管理
  3. 売上不振時の対処策~あらゆるマネージャーに知って欲しい6つの回復ステップ
    1. 全社的な総合対策を行う~すぐに行動する
    2. 「誰か」「何か」のせいにしてはいけない
      補足:全社一丸営業の超カンタンな方法~セールスメールを送ってみる

2.営業マネージャーのマネジメント~釣り堀、えさ、腕、生産性

売上は何もしないと毎年3割は自然と落ちる~営業マネージャーはマネジメントが仕事

たいへん厳しいお話ですが、インソースの様な研修業では売上のリアルな現実として、どんなに営業担当者ががんばっていても昨年からのリピート売上は3割、時には5割ぐらい落ちてしまいます。前年と同じ営業努力ではダメで、売上を落とさない工夫が毎年必要となります。加えて、新商品開発の強化や営業プロモーションだけでは不十分であり、営業マネージャーによる売り上げを落とさない営業マネジメントが必要不可欠です。

営業マネージャーに必要なのは緻密なマネジメント

過日、ある会議の席でゼロから時価総額数千億の企業を興された、畏敬する先輩経営者のM社長に「売上向上の秘訣は何ですか?」と伺ったところ、「それは細かく見て、手を打っていくしかないよ」というアドバイスをいただきました。営業マネージャーは営業プロセスを一つひとつ細かくチェックして、営々とあるべき姿に修正していくしかないと私も思います。

売上拡大4要素~釣り堀、えさ、腕、生産性

売上を維持拡大させる際、マネジメントとして、着目すべきは以下の4点だと考えます。これらに対し、日々細かく手を打っていくことが営業マネジメントです。

  1. 顧客リスト(釣り堀)
  2. 提案書(えさ)
  3. 営業スキル(腕)
  4. 生産性(営業担当者の行動管理)

2-1.顧客リスト(釣り堀)の整備~営業マネージャー自らが汗をかいて整備・管理する

既存顧客データの整備

売上拡大の基礎は顧客データベースの整備です。既存の顧客情報は常に最新情報にアップデートし、新たに入手した情報を追加していく必要があります。当方もお客様も異動、退職、育児・介護休暇などは突然発生するので、顧客データベースを日常的に部下に意識して整備させる必要があります。

見込顧客データベースの構築

だんだん業歴が長くなると、顧客リストが痩せたり、偏ったりして、売上が上がらなくなっていきます。営業マネージャーは目を凝らし売上推移の調査や取引先、マスコミからの情報収集で、成長企業や業種、業界の発見が必要です。BtoBでは基礎データを企業情報販売会社から購入したり、生成AIに調査させたりしながら情報を追加、整備します。

そこに、営業電話や訪問で得た情報を付加し、見込み客のデータベースをだんだんと構築します。その際、収集すべき情報は統一するのがポイントです。体系的に収集すれば、後日活用が容易です。こういった見込み顧客リスト作成はまさに営業マネージャー主導で進めるべき仕事です。

当社では前述のPlantsという顧客情報システムを開発し、帝国データや東京商工リサーチの企業データを購入し、そこに顧客アプローチのたびに交渉経緯情報を追加し、体系的に見込顧客データベースを構築してきました。それをベースにメディアミックスアプローチを実施しています。現在20万社のデータを蓄積しています。

定期的に売上分析を行う~悪さ探しとその改善

自ら汗をかいて、定期的に売上分析を行い、細かく課題を探すのも営業マネージャーの仕事です。

顧客別や営業担当者別の売上管理だけでなく、顧客別、エリア、商品、売上階層、売上時期、業種、職種などセグメント別に考えうる限り細かく売上を分解し、分析すべきです。多数の課題が発見できればしめたものです。課題を一つひとつ解決していけば売上は自然と上がります。営業マネージャーの仕事は業績の「悪さ探し」と「その改善」です。

売上確保は後悔の連続であり、売上が全体で伸びているため一部セグメントの悪化を見逃したばかりに翌期は業績が大幅に悪化する、なんて事ばかり、しでかしています。偉そうに書いていますが、ここは自戒を込めて書きました。

DXスキルは営業マネージャーの必須科目

営業マネージャーはExcelが上手であることは必須だと思います。そこから一歩進んで生成AIやPythonを自在に活用し、いつでも多彩なデータ分析ができて欲しいと思います。

30年ほど前、銀行でSEだった頃、米国出張でシカゴ支店を訪問した際、現地のセールスマネージャーが自らプログラミングを組んでデータ分析していました。軍隊にいた時に習ったと言っていましたが、米国の営業マネージャーはSEみたいな事もするんだなと驚きました。生成AI時代になり、より簡単に多彩なデータ分析ができるようになりました。ぜひ、リスキリングしてください。

2-2.えさ(提案書)~一番優秀な人材が作成し共有する

提案書は経営者や営業マネージャーが作る

これは小規模な企業やベンチャーの話かもしれませんが、提案書はその企業で最も優秀な人材で作るのが一番良いと思います。最も仕事に精通しているのは経営者や営業マネージャーなので、良い提案書を作って、全営業担当者で共有すれば効果絶大です。なので、営業マネージャーが先んじて提案書を作るのをオススメします。

提案書作りのコツは「経験・専門性・信頼性」を入れること

以前、リクルート出身の経営者(社長)が「自分で最高の提案書を作って、社員に持たせるのが一番売れる」という話を聞いた事があります。これは頭がいい方法だなと思いました。

一番商品やサービスを顧客に提供した経験があり、一番専門知識を持っており、一番頼りになるのは社長なのだから、お客様の期待する提案書を作れるのが社長だからです。

ジャパネットたかた創業者の高田明氏が自らテレビCMに出演し、セールスしていたのも同じ理屈でしょう。お客様を良く知っているので、お客様の痒いところに手が届く提案ができるのでしょう。

提案書は全社で共有~ファイル名の共通化が有効

「情報は使っても減らない財」というのは私の好きな言葉です。良くできた提案書を営業担当者全員で共有するためにはちょっとした保存ルールを皆で守れば、大幅な生産性向上になります。営業マネージャーがチームを統制し、誰が見ても分かるファイル名にして保存する事を徹底すれば提案書作成コストが大幅に削減できます。

インソースでは現在、ファイル名のルール化を徹底しています。なかなか揃えてくれない社員もいて徹底には数年かかりましたが、同じような内容の提案書を作らなくなり、また、ファイルを探す時間も短縮でき、今では大きな力になっています。

ファイル名:日付+【種類】+内容名+(作成者)

(例)250922【原稿】マネジメント教室 営業のルール(舟橋).txt

2-3.腕(スキル)~優秀な営業担当者を育成する

過去、インソースで実施した調査によると腕の良い営業担当者は4つのスキルを持っていることが分かりました。

  1. 一歩踏み込んだ対応ができる
    相手が困りそうなこと、面倒だと思うことに対して、一歩踏み込んで最善最高の対応ができる。時には、ここまでやるか!というレベルのサポートも実施できることが重要。
  2. スピード対応ができる
    顧客からの問い合わせや資料送付への対応が極めて早い等、レスポンスが早い。
  3. 定期接触を怠らない
    顧客の傾向をふまえた情報提供や、雑談でコミュニケーションを継続している。
  4. 巻き込み力がある
    営業担当者が一人で解決できない問題について、社内メンバーや上司、社外の関係者を巻き込んで顧客の要望を満せる。

日常業務の中で腕の良い営業担当者を育てる~毎日の振り返り指導が大事

これらのスキルは、真面目にコツコツ仕事をする営業担当者なら必ず身につける事ができるスキルです。ただ、営業の仕事が初めての人がすぐできるかと言えばそうではありません。営業マネージャーなり、先輩が毎日、営業活動の「振り返り」を行い、細部にまで踏み込んで教え、激励したり、おだてたり、指導することでやっと身につけられるスキルです。

毎日アドバイスし、タイムリーに行動を促す事で、経験の浅い営業担当者でも、自然と行動に移せるようになります。営業マネージャーは意図して人材育成をする必要があります。

上手な振り返り方法のポイント

  1. かならず毎日、一人ひとりに対して振り返りの時間を取る
  2. 部下に話させる(昨日の課題対応状況、行動量、架電・訪問の内容、困っていること等)
  3. 部下の話を深掘りして質問する「価格について、お客様はなんと言っていたのかな?」
  4. 部下の行動で良い点を褒め、課題や自分が支援すべき問題点(他部署への依頼事項)を洗い出す
  5. 部下にやるべきことを示す(スピード対応すべきこと、一歩踏み込むべきこと)
  6. 部下の知らない業務について教える

文字で情報を残せる人材を採用~採用も情報活用を意識

少子化の時代、新卒採用には弊社も苦労しています。いわゆるコミュ力の高そうな営業向け人材はなかなか応募がありません。そんな中でも良い営業人材を採用する必要があるため、他社とは違った採用戦略が必要になります。

実は営業に一番向かない方は事務処理能力がない方です。そこでインソースでは「文字で情報を残せる能力」を評価した営業担当者採用戦略を取っています。具体的には、面接よりも文書力の評点を重視した採用を実施しています。

内気そうだったり、自信なさげに見えても、情報活用を成長戦略の中心に据えている当社では、文書力があれば将来活躍が期待できるため営業担当者として採用しています。過去に「内気営業本」という本を出した事務力抜群な女性は内気でしたが、日常指導にしっかり応えてくれた結果、トップセールスになりました。

2-4.営業生産性の向上~チームの行動管理

営業生産性を考える上で最も営業マネージャーにとって重要なのは、チーム全体の時間の使い方をコントロールする事です。営業担当者の時間の使い方を調査してみると、成績の良い営業担当者が顧客アプローチに使っている時間は勤務時間の5割程度である一方、営業成績の悪い担当者の顧客アプローチの時間は2~3割程度にすぎません。

いわゆる事務作業、社内調整や事務処理、提案書作成に時間を取られているのです。よってチーム全体の事務処理時間を削減し、顧客アプローチ時間を増やすことができれば、売上は確実に伸びます。

30マス週間行動計画表で営業生産性をあげる

これは1日を6つのマスに分け、1週間を30マスに分けた小学校の時間割みたいに見える営業活動の時間割です。営業チーム全体でスケジュールを同期し、同じ時間帯に訪問、事務処理、会議などを行います。営業担当者の活動時間を制御する事で営業生産性は飛躍的に高まります。例えば営業メンバーがみんな集まって事務処理をやれば、要領の悪い担当者もすぐに同僚に相談でき、無駄な事務時間を使わなくて済みます。

また、同じ訪問や架電も皆が同じ時間帯に実施することで無意識のうちに競争心が芽生え、全体の行動量は上がり商談数が増え、その結果、売上も上昇していきます。ぜひ、試してみてください。

営業マネージャーに必要な力~案件管理だけでなく行動管理を!

営業マネージャーは「俺が一緒に行けば売上は取れる」と豪語する「お手伝い上司」や自らの売上づくりを優先する「プレーヤー上司」、部下が作った予材を眺めて、日々進捗管理ばかりやっている「予材管理上司」、何でも部下任せの「放任上司」が幅を利かせている様に思います。

私は30マス週間行動管理表を作成し生産性向上の努力をし、事務力を引き上げるための部下教育をする営業マネージャーが最強だと考えます。顧客アプローチ時間が増えれば必ず売上は増えます。

営業生産性の上げ方➁30マス週間計画表

営業生産性の上げ方➁30マス週間計画表_作成例

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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