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経営課題を「現場の行動」に翻訳するリーダー力~数字と可視化で組織を動かす、いま必要な新しい改善

現場改善というと、業務の効率化やコスト削減を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、いま企業に求められているのは、単なる改善活動ではなく「経営層が直面する課題を、現場の行動へ正しく翻訳する力」です。

経営課題を現場改善へと変換するための考え方と、具体的な実践ポイントを紹介します。

現場改善の第一歩は「経営課題から考える」

経営課題と現場改善は、本来つながっているにもかかわらず、日々の業務では分断されがちです。リーダーの役割は、この分断を埋め、現場の活動が経営課題の解決に寄与する状態をつくることにあります。

現場はどうしても目の前の業務に意識が集中しがちで、経営層が何を優先し、どこに危機感を持っているのかまでは把握しにくいものです。だからこそ、リーダーが経営の意図をかみ砕いて伝えることで、現場の行動が「点」ではなく「線」として会社の方向性につながっていきます。

経営の優先課題を「翻訳」する

多くの企業で挙がる経営課題として、以下の4つが代表的です。

  1. 業績向上(利益率改善・生産性向上)
  2. 人手不足(採用・育成・離職防止)
  3. ESG対応(環境負荷軽減・社会的責任への配慮)
  4. リスク管理(事故防止・コンプライアンス)

これらは決して経営層だけが向き合うテーマではありません。例えば、「業績向上」という抽象的な言葉の背後には、「在庫滞留の削減」「会議時間の短縮」「品質不良率の抑制」などの現場レベルの行動が必ず存在します。現場改善を始める際は、まず経営課題を具体的な行動レベルへ「翻訳」することが重要です。この翻訳作業をリーダーが丁寧に行うことで、現場は「なぜその改善が必要なのか」を理解でき、各メンバーが自分ごととして取り組めるようになります。

ブレイクダウン思考で課題の所在を正確につかむ

改善がうまく進まない理由の多くは、課題の粒度が適切に分解されていないことにあります。

課題のブレイクダウンとは

ブレイクダウンとは、複雑な問題を構成要素に分け、因果関係を整理する技術です。例として「残業が減らない」という問題を扱うと、次のように分解できます。

  • 業務量が多い
  • 業務が属人化している
  • 無駄な待ち時間が発生している
  • 優先順位の判断基準が曖昧

この段階になると、現場が取りうる改善策が明確になります。やみくもに「気合で残業削減」「働き方改革」と掲げるのではなく、事実に基づく原因を把握することで、改善は再現性を持ちます。特に属人化や優先順位の曖昧さは、数値で把握しにくいために放置されがちな領域です。ブレイクダウン思考を使えば、見えづらい問題も構造として捉えられるため、改善の方向性がぶれなくなります。

「値段を知る」ことが改善のスタートライン

改善において最も効果が高いのは「数字で語る」姿勢です。そのための第一歩が、業務の「値段」を知ることです。

業務の値段が見えないと改善は進まない

会議、在庫、事故、採用費用、印刷物。日々発生する業務は、すべてコストとして数値化できます。例えば、1時間の会議が5名で行われるなら「人件費 × 時間」の積で費用が算出されます。在庫は「販売機会」ではなく「保管コスト」でもあるという視点の転換も重要です。数値化というと難しく感じるかもしれませんが、最初は概算でも十分です。大まかな値段を掴むだけでも、現場が「どこに無駄が潜んでいるか」を見つけられるようになり、改善の起点が生まれます。

値段を知ることで現場の意思決定が変わる

数字が見えると、次の行動が変わります。

  • 会議の目的を明確にする
  • 在庫の最適量を定期的に見直す
  • ミスの再発防止策に投資する判断ができる

「なんとなくの習慣」ではなく、「数字で根拠を持つ改善」へと変わる瞬間です。特にミスやトラブル対応のコストは、直接的に計上されないため軽視されがちですが、実際には業務停滞や顧客対応など目に見えない損失を引き起こします。数字を把握することで、改善に必要な時間や予算を正当化でき、組織として動きやすくなります。

思い込みに惑わされないための「可視化」アプローチ

現場改善がうまくいかない背景には、「直感に頼った判断」が少なからず存在します。経験は大切ですが、思い込みに基づいた改善は成果につながらないことが多いものです。

直感と事実を分けて見る

データを扱うことに苦手意識を持つ方もいますが、改善に必要なのは高度な分析ではありません。必要なのは「事実を事実として扱う」ための基本的な可視化です。例として、以下のような簡単なデータを具体的に出し、記録し、整理してみるだけでも改善の質は大きく変わります。

  • 件数の集計
  • 時間の記録
  • 変動要因の比較
  • ヒアリング内容の分類

事実に基づくデータは、チームの思考を揃える「共通言語」にもなります。特に議論が紛糾しやすい場面では、感覚ではなく事実をベースに話すことで、メンバー間の認識のズレが一気に解消されます。可視化は「認識合わせの装置」としても非常に効果的です。

生成AIや最新テクノロジーは改善活動の強力な味方

生成AIやRPAなどのテクノロジーは、現場改善を加速する手段として広く活用されています。

AIで日常業務の改善余地を見つける

生成AIは、リーダーの負荷を下げるだけでなく、改善の発想を広げる存在でもあります。例えば次のような活用が挙げられます。

  • 議事録の自動生成
  • FAQの自動作成
  • 在庫予測の精度向上
  • 手順書の自動整理
  • KPI案のブレインストーミング

これらは「AIに仕事を任せる」のではなく、「AIを使って人がより良い判断をする」ための活用です。現場改善において、AIは新しい視点を提供してくれます。特に、普段は気づかなかった改善の観点をAIが提示してくれることがあり、発想の偏りを防ぐ効果も期待できます。現場だけでは出てこないアイデアを補う「発想支援ツール」としても非常に有用です。

改善を「企画書」としてまとめる力が最終的に組織を動かす

改善はアイデアだけでは動きません。実行に移すためには、関係者に伝わる形で整理し、企画としてまとめる必要があります。

改善企画書の骨子

以下は改善企画書の基本構成です。

  • 背景(経営課題とのつながり)
  • 現状と課題(数値・事実)
  • 原因の整理(ブレイクダウン)
  • 改善案(実行方法・期待効果)
  • KPI・スケジュール

この構成を踏まえると、現場改善は単発の行動ではなく、組織的な取り組みへと昇華します。企画書という形にすることで、改善の意図や必要性が社内で共有されやすくなり、関係者の合意形成もスムーズになります。また、改善を「見える化」すること自体が、次の改善活動への学びとして蓄積されていきます。

まずリーダーが視点を変える~経営効果を生み出す力

現場改善は、経営課題を現場の行動へと翻訳し、数字と事実をもとに取り組むことで、初めて経営効果を生み出します。リーダー一人ひとりがこの視点を持つことこそ、企業が変化と不確実性に対応していくための力になります。

【現場と経営をつなぐシリーズ】リーダー向け業務改善研修~思い込みを排した手法を学ぶ

「部長」「マネージャー」「リーダー」という3つの階層に合わせて新たに開発した業務改善シリーズのリーダー向けです。

ボトムアップ型の業務改善とは異なり、リーダーの立場から経営課題を現場の改善活動に落とし込んでいく点が、本研修の大きな特徴となっています。多くの事例を通じて典型的な失敗例や対策方法が学び、最終的には自組織のカイゼン企画とアクションプランを作成します。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 経営課題を解決する改善活動を現場でやってほしい
  • 具体的な改善手法や進め方が分からない
  • 改善案に説得力がほしい

本研修のゴール

  • 経営課題を現場改善に落とし込む思考力を習得
  • 数値化・可視化による説得力ある改善案の作成
  • 実践的な改善企画立案力の獲得

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セットでおすすめの研修・サービス

(半日研修)生成AIで業務自動化研修~AIエージェントを自分専用の部下にする

生成AIの基本を習得済みの方に向けた実践型研修です。Microsoft Copilotのエージェント機能を活用し、社内業務に特化したAIエージェントの設計から構築までを学びます。

文章添削や社内マニュアル対応、アンケート分析など、ワークを通じて業務に役立つエージェントを実際に作成します。AI設計に適したマークダウン形式の使い方にも触れるため、AIとの対話力も向上できる内容です。

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<課題解決ワークセッション>中期経営計画策定(3日間)

1社3名開催のワークショップ形式の研修です。自社の実際の事業モデルを題材に学んでいただき、自社の持続的競争優位を持つ事業モデルを考え、その実現に向けた中期経営計画の骨子を作成・発表していただきます。

研修では、優れた事業モデルの構築に必要なフレームワークや理論をインプットしたうえで、講師や受講者同士の対話を通じて、新たな視点や発想を獲得します。

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研修のプロが選んだ動画コースを毎月配信 動画百貨店の定期便~部長の選択・社長の選択

インソースが開発した動画コンテンツ約900種類から、個人や組織の課題・目的に応じた動画を毎月2講座ずつお届けするサービスです。

プラン「社長」と「部長」の違いは配信期間です。貴組織のために選んだ動画教材を「社長の選択」は1年、「部長の選択」は6カ月、お届けいたします。

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