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言いにくいことを、関係を壊さずに伝えるには~リーダーが成果を出すためのアサーティブコミュニケーション実践法

現場のリーダーほど、「正しいこと」を言えずに悩んでいます。部下の行動を正したい、他部署に無理な依頼を断りたい、上司に現実的でない指示の見直しを求めたい。

どれも職務として必要な行動ですが、感情や力関係が絡むため、伝え方を一歩間違えると関係性が崩れてしまいます。その結果、我慢して飲み込むか、感情的にぶつかるか、どちらかに偏りがちです。本記事では「我慢」と「衝突」の間にある第三の選択肢、アサーティブコミュニケーションの実践方法を解説します。

我慢と強圧の間にある、組織を健全に動かすアサーティブな伝え方

一見、波風を立てない我慢強いリーダーは、組織にとって都合がよい存在に見えます。しかし、我慢が続くと問題が表面化します。例えば、IT企業のプロジェクトマネージャーが、顧客からの追加要望を断れずに受け続けた結果、メンバーの残業が常態化し、品質低下や離職につながるケースがあります。本人は「自分が耐えればいい」と考えていても、チーム全体には確実に歪みが生じます。言わないことは、寛容ではなく、問題の先送りなのです。

反対に、「はっきり言わなければ伝わらない」と強い言葉で指摘するリーダーもいます。確かに短期的には相手が従うかもしれませんが、長期的には不信感が残ります。年上の部下に対してミスを感情的に指摘した結果、表面上は改善しても、相談や報告が減ってしまいます。こうした状態では、リーダーは孤立し、組織の意思決定スピードも落ちていきます。正しさを通すだけでは、人は動かないという現実に、多くのリーダーが直面しています。

アサーティブコミュニケーションは、「遠慮」でも「攻撃」でもありません。自分の意見や要望を、相手への敬意と共に、率直に伝える姿勢です。ここで重要なのは、「相手を説き伏せる」ことではなく、「共通の目的に向けて話す」ことです。例えば、他部署との調整であれば、「こちらが困っている」ではなく、「このままだと双方の成果にどんな影響が出るか」を共有します。感情ではなく、事実と目的を軸に会話を組み立てることで、対立は対話へと変わります。

言いにくいことを伝える実践法の3つのポイント

1.状況を評価せず「事実」として伝える

多くのリーダーがつまずくのが、「事実を伝えているつもりで、評価や感情が混ざってしまう」点です。例えば、部下に対してよくある言い方は次のようなものです。「最近、報告が遅いよね」この一言には、「最近」「遅い」という主観的な評価が含まれています。

相手は無意識に責められていると感じ、防御姿勢に入ります。アサーティブでは、「先週と今週の2回、進捗報告が締切の翌日になっていました」のように言い換えます。ここでは、「いつ」「何が」「どうなっていたか」だけを淡々と述べています。良い・悪いの判断を加えないことが最大のポイントです。この伝え方をすると、相手は「責められている」ではなく、「状況を共有されている」と受け取りやすくなります。その結果、対話のスタートラインに立てるのです。

2.相手を受け止めてから伝える

「まず相手の話を聞きましょう」と言われても、現場ではどう返せばよいか迷うリーダーが多いです。ポイントは、賛成することではなく、理解したと示すことです。例えば、年上の部下がミスの理由を説明してきた場面を想像してください。ここでありがちなのは、説明の途中で遮り、「でも、それは理由にならないよね」と返してしまうことです。

アサーティブな対応では、次のような一言を挟みます。「なるほど、業務が立て込んでいて確認の時間が取れなかった、ということですね」、これは同意でも擁護でもありません。相手の言葉を要約して返すことで、「ちゃんと聞いてもらえた」という安心感を与えます。そのうえで、こう続けます。「その状況は理解しました。そのうえで、同じミスが続くとチーム全体に影響が出る点は、伝えておきたいです」

この順序を守るだけで、注意や指摘の受け取られ方は大きく変わります。理解 → 主張の順番が、アサーティブの基本型です。

3.要求を「提案」に変える具体的な言い換え

リーダーの言葉が強くなりがちな理由の一つは、「相手を動かさなければならない」という焦りです。その焦りが、命令口調や断定的な表現につながります。例えば、納期の調整でよくある言い方です、「この納期では無理です。変更してください」。内容自体は正しくても、相手は「突き返された」と感じやすくなります。

アサーティブでは、次のように組み立てます。「現状の納期だと、品質リスクが高まると考えています。一方で、来週末まで延ばせれば、御社の要望はすべて反映できます。この案について、一度ご相談できないでしょうか」、ここで行っているのは「懸念点の共有」「代替案の提示」「判断を相手に委ねる姿勢」です。選択肢を提示し、相手に考える余地を残すことが、提案型コミュニケーションの核心です。

これらの実践方法に共通しているのは、テクニック以前の姿勢です。それは、「相手をコントロールしようとしない」ということです。アサーティブコミュニケーションは、相手を言い負かす技術でも、都合よく動かす話術でもありません。対等な立場で、目的を共有し、合意点を探すプロセスそのものです。だからこそ、「忙しいときほど」「感情が動いたときほど」「立場の差がある相手ほど」意識的に使う価値があります。

リーダーがアサーティブコミュニケーションを身につけると起こる4つの効果

1.言うべきことを先送りしなくなる

問題が小さいうちに共有されるので、我慢や忖度による「静かな火種」が減り、トラブル対応に追われる時間が確実に少なくなります。結果として、リーダー自身の判断と行動に余裕が生まれます。

2.部下や他部署との信頼関係が安定する

強く言わなくても意図が伝わるので、「この人は話を聞いたうえで意見を言う」という認識が広がり、報告・相談が自然と増えます。これは心理的安全性の土台になります。

3.交渉や調整がスムーズになる

要求ではなく提案として伝えられるようになるため、対立構造に陥りにくく、合意点を見つけるスピードが上がります。結果として、意思決定が早まり、仕事が前に進みやすくなります。

4.リーダー自身が消耗しにくくなる

感情を押し殺したり、後から自己嫌悪に陥ったりすることが減り、「これでよかった」と納得感を持って伝えられるようになります。

このように、アサーティブコミュニケーションは、人間関係を壊さずに成果を出し続けるための、リーダーの基礎体力を高めるスキルなのです。

リーダーのためのアサーティブコミュニケーション研修

リーダーの皆様には、相手を尊重しながらも、言いにくいことや言わなくてはならないことを伝える場面が多くあります。

本研修は、上司やメンバー、他部署など、リーダーを取り巻く様々な関係者に対して、よい関係を保ちながら主張をするためのアサーティブなコミュニケーションスキルを学ぶ研修です。

アサーティブコミュニケーションのスキルをベースに、イマドキ世代への依頼、年上のメンバーへの注意、気難しい上司への提案、他部署のリーダーとの交渉など、リーダーが直面する困難な場面でのコミュニケーションによる打開策を学びます。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 言いたいこと、言いにくいことを上手く伝えられない
  • 上司・後輩・他部署との板ばさみになっている
  • 良い関係を保ちながら、意見や断り、指摘を伝える方法を知りたい

本研修のゴール

  1. アサーティブコミュニケーションの基本を理解し、活用できるようになる
  2. リーダーが直面する依頼、注意、提案、交渉といった、難しいコミュニケーションの場面での打開策を獲得する
  3. ストレスを溜めず、相手と良好な関係を築きながら、意見を伝える方法を学ぶ

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アサーティブコミュニケーション研修~自他尊重のスタンスで言いにくいことを伝える

本研修では、「言いにくいこと」を伝えるアサーティブコミュニケーションの手法を習得します。アサーティブとは、相手の状況・気持ちを尊重しながら、自分の主張を正直に伝えることです。

講義と豊富なワーク・ケーススタディを通じて、アサーティブであるための心の持ち方を理解し、具体的なコミュニケーションスキルを身につけていただきます。

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はじめてのリーダーシップ研修~仕事力とコミュニケーション力強化編

リーダーとしての心構えや実践すべき具体的な行動について考えていただきます。

部下を成長させるためには、自分も成長しないと全体の活性化につながりません。仕事力を磨き、メンバーの現状を把握して、部下育成を通じて組織に貢献するリーダーを目指していただきます。

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