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営業の価格交渉術~値引きに頼らず納得を得る提案・準備・対応の流れと避けるべきNG例

「この価格、もう少し何とかなりませんか?」営業担当者にとって試される瞬間です。営業における価格交渉は、信頼関係を築くための重要なプロセスでもあります。

お客さまの要望に誠意を持って向き合い、価格以外の価値を丁寧に伝えることで、納得感のある取引が生まれます。Win-Winの交渉を実現することが、営業としての信頼と成果を同時に高める鍵となります。

本コラムでは、価格交渉の進め方や準備、そしてお客さまとの信頼関係を深めるための具体的なポイントを解説します。

基本は「値引きせずに納得していただく」

営業活動の基本は「標準価格での販売」です。標準価格とは、一般的に値引きを行う前の価格のことを指します。企業が商品やサービスを安定して提供するために必要な価格であり、品質やサービスの維持に直結しています。

安易な値引きは、企業の利益を圧迫するだけでなく、長期的にはお客さまにとっても不利益となる可能性があります。だからこそ、営業担当者は「値引きせずに納得していただく力」を身につける必要があります。

具体的な商談の流れ

まずは商品やサービスの価値を伝え、「購入したい」と思ってもらう

価格の話に入る前に、まずは自社の商品やサービスのメリットを丁寧に説明しましょう。お客さまがその価値を理解し、「購入したい」と思っていただける状態を作ることが先決です。

この段階でお客さまの関心が高まり、納得感が得られていれば、価格の話に移行してもスムーズに進みやすくなります。

価格交渉の始まり:まずは標準価格を提示する

価格交渉のスタートは、営業担当者が標準価格を提示するところから始まります。お客さまがその価格を受け入れれば、交渉は不要です。

しかし、「もう少し何とかならないか」といった反応があった場合、ここからが本格的な価格交渉の始まりです。この時点で慌てず、冷静に対応することが重要です。

値引きの前に、価格以外のメリットを伝える

価格交渉に入ったからといって、すぐに値引きに応じるのは避けましょう。まずは、価格以外のメリットを再度強調します。たとえば、納期の柔軟性、アフターサポートの充実、導入後の効果など、価格以外の価値をお客さまに再認識していただくことが大切です。このアプローチにより、価格を守りながら商談を成立させる可能性が高まります。

価格交渉に備えるための準備

価格交渉に臨む前には、以下の3点を必ず準備しておきましょう。

1. 明確な最低価格ラインの設定
どこまでなら値引きが可能か、採算が取れるラインを明確にしておきます。これにより、交渉の中で迷いが生じにくくなります。

2. 断る理由の準備
最低ラインを超える要求があった場合に備え、「なぜそれ以上は難しいのか」を説明できるようにしておきます。感情に訴える言い方も有効です。「品質を保つために、どうしてもこの価格が必要です」といった表現が効果的です。

3.お客さまの予算都合を確認する
お客さまにも、値引きを要求する際には、背景がある可能性が高いため、先方の予算都合や予算感を把握する必要があります。「本当に予算の都合上出せる上限を超えてしまっている」場合もあれば、「社内のルール上値引き交渉することが必須であるため、仕方なく交渉している」という場合もあります。前者は上限を確認する必要がありますが、後者は応じる必要がない交渉であるとわかります。

NG例:やってはいけない価格交渉対応

  • 即答で値引きに応じる
    「分かりました、1割引で対応します」などと即答してしまうと、価格の根拠が薄れ、信頼を損なう可能性があります。
  • 上司の判断に丸投げする
    「この件は上司に聞かないと分かりません」とだけ伝えると、営業担当者としての信頼性が下がります。
  • 感情的な反応をする
    「それは無理です」と強い否定だけで返すと、交渉の余地がなくなり、関係が悪化する恐れがあります。価格交渉は、冷静かつ戦略的に進めることが大切です。

理想的な価格交渉は相互利益を目指すこと

価格交渉のゴールは、こちらの希望価格で売ることではありません。お互いが納得できる条件で合意し、長期的な信頼関係を築くことが最も重要です。

たとえば、「単価を下げる代わりに、取引量を増やしていただく」といったギブアンドテイクの提案を行うことで、双方にとってメリットのある取引が実現します。

また、「ここまでは対応できますが、それ以上は難しいです」といった具体的な線引きを提示することで、交渉の透明性と信頼性が高まります。

まとめ:価格交渉は営業力の見せどころ

価格交渉は、営業担当者にとって避けて通れない重要なスキルです。標準価格を基本としつつも、交渉の場面では誠意と準備をもって臨むことで、相互に納得できる取引が実現します。

お客さまとの信頼関係を築きながら、企業としての利益も守る。そのバランスを取ることが、営業担当者としての成長につながります。

交渉力向上研修(実践編)~4つのプロセスで商談を合意に導く

交渉を自分と相手とお互いに納得する形でまとめるための交渉の事前準備の仕方と、相手に自分の提案をよりメリット感が伝わる形で話す表現方法を、下記の交渉のプロセスに沿って習得します。

プロセス1「相手の主張のヒアリング」
プロセス2「相手の主張の整理とそれに応じた自分の主張と譲歩の整理」
プロセス3「相手の譲歩の引き出しと合意」
プロセス4「合意できなかった場合の代替案の提示」

本研修のゴール

  1. 交渉に臨む前に主張する点と譲歩可能な点など、こちら側の提案内容を事前に整理できるようになる
  2. 相手の話を自分の言葉に置き換える、相手の主張点を掘り下げることができる
  3. 自分と相手の主張を「核心」(重要事)「周縁」(条件があえば許容可能)で仕分けすることができる。相手に対する譲歩のポイントを考えることができる
  4. 相手に自分の提案内容をよりメリットを感じさせる形で表現できるようになる

よくあるお悩み・ニーズ

  • 交渉を行う際の事前準備のポイントを学びたい
  • 交渉において、互いの主張を言語化し、整理できるようになりたい
  • 相手にメリットを伝えるための表現力を身につけたい

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セットでおすすめの研修・サービス

営業力強化研修~心情理解を通し、顧客との関係構築を強化する

営業力を高めるために営業が取り組むべき内容は多岐に渡ります。営業は、「これだけ出来ればよい」というスペシャリストではなく、まさに人としての総合力が問われる仕事と言えます。

本研修では、お客さまに信頼されるための営業としての心構えを再認識し、信頼関係を築くために必要な雑談やヒアリングの仕方などの具体的なスキルを習得します。

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交渉力フォローアップ研修(半日間)

交渉の実践力向上を目的にしたフォローアップ研修です。交渉ごとは場数を踏んだ者が制すると言われますが、実社会でそのような経験を重ねるには何十年もかかります。

研修内では、難しい場面設定のロールプレイングを重ねてポイントをつかみ、交渉のエキスパートになることを目指します。

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営業マネージャー研修~部下育成・指導スキル強化編(1日間)

営業マネージャーがメンバーをうまく動かせるようになるための研修です。各メンバーにどの顧客を担当させるか、チーム内でどう時間を使っていくかなど、リーダーは客観的な視点で冷静に、全体像を考えて「割り振る」ことが求められます。

また、実際にメンバーとよく接している場合には、どうしても「業績が上がらない理由」をいわれてしまうことが多くあります。研修内では、どのように対応するとよいかを受講者同士で検討し、新たな視点や指導の方法に気づいていただきます。

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短時間で学ぶ下請法

下請法とは、下請取引の公正化を図り、下請事業者の利益を保護するために、親事業者の下請事業者に対する不利益な取扱いを規制する法律です。

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