言外のニーズを見抜く「デザイン態度」とは?デザイン思考を機能させるための3つのポイント

新しい価値の創出や新規事業開発によるイノベーションは、多くの組織にとって喫緊の課題ですが、組織側も自らが解決すべき課題を明確化できていないことがあります。
本コラムでは、表面的な課題にとらわれ、組織の成長が頭打ちになってしまうという閉塞感を打破する鍵として、デザイン思考の根幹をなすデザイン態度について解説します。
デザイン態度とは~デザイン思考を実践するための土台
「デザイン思考」とは、デザイナーが実践してきた手法をベースに、共感・定義・発想・試作・試行といったプロセスを通じて、革新的なアイデアを生み出すための有効なフレームワークです。しかし、このプロセスを単なる手順としてなぞるだけに終わると、「課題を特定したつもりでも、結局は自組織の都合の良い解決策に誘導してしまう」「多様な意見を出す場を設けても、遠慮や常識の壁に阻まれ、突飛なアイデアが出ない」などの残念な結果になりがちです。
重要なのは、これらのプロセスを動かす「土台となる姿勢や考え方」、つまりデザイン態度です。
デザイン態度の3つの要素
デザイン態度とは、デザイン思考のプロセスを支え、本質的なニーズ(インサイト)を見つけ出すための考え方や志向のあり方を指します。デザイン態度を身につけることで、既存の枠組みをリフレーム(問い直す)し、真の課題設定ができるようになります。デザイン態度は、以下の3つの要素で構成されます。
- 共感を「起点」にする視点
単に顧客の声をきくだけでなく、ユーザーや現場に深く寄り添い、その行動や言葉の奥にある「なぜそう動くのか」「本当は何に困っているのか」という本質的なニーズを観察し、理解しようとする視点を持つ必要があります。 - 見える課題を「問い直す(リフレーム)」思考
目の前にある表面的な問題(例:コストが高い、処理速度が遅いなど)をそのまま解決しようとするのではなく、「そもそも、この業務自体に意味があるのだろうか?」と、本質的な課題を定義し直す思考が欠かせません。 - 発想と検証を「循環」させる姿勢
完璧なアイデアが出るのを待つのではなく、多様な発想をすぐに試し、紙やモックアップ(プロトタイプ)といった粗削りな形で顧客や関係者に見せます。そして、受けたフィードバックを失敗ではなく学びとして前向きに受け入れ、改善を繰り返す姿勢が重要です。
デザイン態度を日常業務に根付かせる「観察と対話」の習慣
デザイン態度を組織の文化として根付かせるためには、日々の業務の中で以下の習慣を意識することが大切です。
- 「当たり前」を問い直す徹底的な観察
日常の業務プロセスや顧客との接点、現場の状況を当たり前として流さず、「どのような場面で、誰が、何に困っているか?」「どこで顧客の感情が動いているか」を徹底的に観察し、記録します。そして、「なぜそこに問題が生じているのか」を、「なぜ?」という問いを5回以上重ねて言語化してみます(インサイトの抽出)。この地道な観察が、リフレームの種となります。 - 失敗を恐れない「対話と共創」の文化
アイデアを紙やモックで素早く形にし、部署や立場を超えた関係者やユーザーから率直な意見をもらう「対話」を重視します。プロトタイプが失敗しても、「このやり方ではダメだった」という学び(インサイト)を得たことを、組織全体でポジティブに評価し共有する文化を育むことが、イノベーション創出の土壌となります。多様な視点を取り入れることで、見落としていたニーズや解決の糸口が必ず見つかります。
まとめ:態度が変われば、見える「価値」が変わる
デザイン思考のフレームワークを導入するだけでは、イノベーションは生まれません。デザイン態度の構成要素である「共感を起点にする」「見える課題を問い直す」「発想と検証を循環させる」という3つを身につけることで、顧客がまだ言語化できていない本質的な課題に光を当てることができます。態度が変われば、組織が「何に価値を見出すか」という基準そのものが変わり、新しい価値を生み出す組織文化の醸成につながります。
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