ミテモ株式会社

「良いモノが売れない」地域ブランドを育てる5ステップ~デザイン経営で見直す新規事業の進め方

「良いものを作っているのに売上につながらず、地域の魅力をどう伝えればいいのか分からない」

こうした悩みは、多くの地方経営者や事業者に共通しています。そこで近年注目されているのがデザイン経営です。単なる見た目の美しさではなく、経営判断や商品開発にデザイン的視点を取り入れることで、地域発プロダクトの持続的な成長を支える土台を築くことができます。

本コラムでは、地方における新規事業やブランド開発に活用できる「デザイン経営の考え方」と「実践できる5ステップ」をご紹介します。

経産省・特許庁が示すデザイン経営とは?中小企業の独自性を生む新戦略

デザイン経営とは、経済産業省と特許庁が提唱する、企業の競争力を高めるための経営戦略です。経営層がデザイナーを意思決定に関与させ、商品・サービス開発と企業戦略を一体化させることが特徴です。

地方の中小企業や自治体でも、この考え方を取り入れることで、地場産業や地域資源を活かしたプロダクトに独自性と競争力を与えることが可能です。単なるパッケージ刷新ではなく、「誰にどのような価値を届けたいのか」という本質的な問いに向き合うことが求められます。

デザイン経営の目的は、「良いものを作る」ことではなく、「価値をどう伝えるか」を経営の中に組み込むことにあります。実際、地方の現場ではこの"伝える力"こそが大きな課題となっています。

「良いもの」より「伝わるもの」へ。共感を生むデザインの力

地方では、地域資源を活かしたものづくりが行われていますが、「良いものを作れば売れる」時代は終わりました。重要なのは、「伝わるかどうか」です。

例えば、地元木材を活用した家具を「サステナブルな暮らしを支える道具」と再定義したり、伝統工芸の器を「現代の生活に馴染む」デザインに刷新したりすることで、顧客の共感を得る工夫が求められます。

失敗事例に学ぶ~地方プロダクト開発でつまずく3つの落とし穴

地方企業においては、プロダクト開発の際に典型的な課題が見られます。代表的なものとしては次のような点が挙げられます。

  • 作り手目線に偏り、ユーザー視点が欠けている
    地元特産の野菜を使った「無添加ジャム」や「ご当地ドレッシング」を開発するものの、「地元の素材を使っている」ことばかりを強調し、味や価格、使い勝手の検証が不十分なケースです。結果として、消費者にとっての"買う理由"が弱く、リピートにつながらないことが考えられます。
  • ブランドコンセプトが曖昧で差別化できない
    「地元の名産○○を使ったクッキー」など似た商品が多数生まれ、パッケージも似通っているため、どのメーカーの商品か分かりづらいケースです。その結果、ブランドの個性が埋もれ、価格競争に巻き込まれます。
  • 市場やターゲットへの理解が浅い
    「老若男女に愛されるお菓子」といった広いターゲット設定のまま開発を進めるケースです。この場合、どの層にも強く響かない"平均的"な商品となり、販促効果が分散して販売チャネルも定まらない結果につながります。

ブランドを育てる5ステップ~地域資源を価値に変える設計図

ブランドを育てていくためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。流れの一例としては以下のとおりです。

  1. 地域資源の棚卸し:地域にどのような素材・技術・文化があるかを整理
  2. ターゲット設定と課題の言語化:誰の、どのような課題を解決するのか明確にする
  3. プロトタイピング:試作品を作り、ユーザーの反応を見る
  4. ブランドコンセプトの設計:ブランドのストーリーと価値観を言語化する
  5. 販売計画の策定:販売チャネル・価格・広報などの戦略を、中長期視点で構築する

ただし、これらのステップを一人で、または一社だけで進めようとすると、途中で行き詰まることも少なくありません。そこで重要になるのが、社内外の連携です。

ひとりで抱え込まない~ブランド開発を成功に導く社内外の連携術

ブランド開発を成功させるには、社内の体制づくりや外部パートナーとの連携も欠かせません。特に大切になるのは次のようなポイントです。

経営層のコミットメントと意思決定のスピード

ブランド開発は、長期視点で投資を要する取り組みです。現場任せでは方向性がぶれやすく、成果が出る前に頓挫することもあります。経営層がブランドの目的を理解し、「この方向で進める」と判断できる体制を整えることで、開発のスピードと一貫性が生まれます。また、試作段階で経営層がレビューに参加するなど、定期的な対話の仕組みを設けることも効果的です。

部門横断のプロジェクトチーム編成

ブランドづくりは、デザイン部門や広報だけの仕事ではありません。 開発・営業・製造・経理などが連携することで、実現性や収益性、販売戦略まで一貫したブランド設計が可能になります。中小企業では、少数精鋭の横断チームを組むことが重要です。週1回でも部署横断の打合せを行い、情報共有するだけで、プロジェクトの一体感と推進力が高まります。

外部専門家(デザイン・マーケティング)との連携

デザイナーやマーケターなどの外部専門家は、自社では得にくい視点をもたらします。デザイナーを単なる"見た目の担当者"ではなく、事業初期から意思決定に関わるパートナーとして位置づけることが大切です。また、マーケターや流通の専門家と連携することで、「販売後まで見据えた戦略設計」が可能になります。 さらに、プロジェクトで得た知見を社内に仕組み化・共有することで、次のブランド開発にも活かせます。

明日から始めるデザイン経営~地域資源を見直す「棚卸し」から始めよう

まずは社内で地域資源の棚卸しを行ってみましょう。素材や技術に加え、社員の特性やネットワークなども可視化することで、ブランド開発の起点が見えてきます。こうした整理を踏まえて、デザイン経営の考え方を取り入れたブランドづくりや商品開発、販路開拓を進めることが効果的です。

まとめ~地域の未来をデザインするために

地域に根ざした素材や技術には、まだ見ぬ価値が眠っています。それを掘り起こし、魅力的に伝えていくためには、デザイン経営の視点が重要です。「誰のために、どんな未来を描くのか」を明確にすることで、商品やブランドは新しい意味を持ちはじめます。まずは自社の資源を整理し、地域とともに考える一歩を踏み出してみてください。

デザイン経営に則ったブランド・商品開発・販路開拓支援(toB向け市場)

こうした取り組みを自社だけで進めるのが難しい場合は、専門家の支援を活用するのも一つの方法です。インソースグループ、ミテモ株式会社では、中小企業の独自性を軸にして、デザイン、マーケティングの専門家とブランド開発を支援します。

本サービスでは、ターゲット市場の最先端で顧客ニーズに精通したマーケターが「出口戦略」の明確化を支援します。また、ライフスタイルに適した用途・形状・コストを踏まえて設計できるデザイナーと連携することで、高付加価値化を実現します。さらに、事業者の自走化を促進し、支援終了後もブランドが成長し続ける仕組みを構築できる点が、本サービスの大きな特徴です。

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セットでおすすめの研修・サービス

中小企業向けデザイン経営導入および事業計画立案支援

中小企業が自社の強みを見つめ直し、デザイン経営を導入するための伴走支援を行います。事業計画の立案まで一貫してサポートします。

本サービスの特徴は、大きく3点あります。第一に、実践重視のワークショップと、事業者自身が主体的に取り組む事業計画立案支援を通じて、継続的なデザイン経営の実践に向けた自走化支援を行うこと。第二に、豊富な中小企業支援実績を持つミテモならではの、経営実態に即した実効性の高い事業計画立案フレームワークを提供すること。第三に、自社ならではのビジョンを持ち、事業開発に取り組む経営者・次期経営者同士の横のネットワークやコミュニティを形成することです。

>サービスの詳細はこちら

【ミテモ】デザイン思考を活用した新事業開発力強化プラン

ユーザー視点で新たな価値を生み出す「デザイン思考」を学び、組織内での新規事業開発力を高める研修プログラムです。

現状を打破したい、新事業を生み出したい、顧客のニーズをつかみたいという課題に対して、実際に新規事業を考え発表することで、実践的なデザイン思考の考え方を身に付けることが出来ます。

>サービスの詳細はこちら

デザイン思考研修~イノベーション実現のプロセスを学ぶ

本研修では、デザイン思考の概要と、その5つのプロセス(共感・定義・発想・試作・試行)について学びます。実際にグループでデザイン思考を使ってアイデアを考えていただくワークを実施することで、職場での実践につなげていただきます。

デザイン思考を使用してユーザーが求めていることを踏まえたプロトタイプの作成や、作成したプロトタイプのプロトタイプのフィードバックを受けるなど、ワークの内容は実践的であり実際の現場でも活用しやすい知識を身に付けることが出来ます。

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