飽きるまでやり込み、あえて寝かす~ブレイクスルー人材を育てる「4Bと思考サイクル」設計

組織の停滞感を破り、新しい突破口をつくる人材が不足していると感じる企業は多くあります。日々の業務はこなせるものの、課題の本質を捉えて新しい打ち手を発想するプロセスが社内で再現できないという声もよく聞きます。
しかし、ブレイクスルーを生む人材は特別な才能の持ち主ではありません。一定の負荷をかけて考え抜き、適度に緩めて環境を変え、再び集中するという思考サイクルを習慣化することで誰もが身につけられる力です。本記事では、この思考サイクルの具体的ステップと、組織としてどのように再現し、人材育成につなげるかを、人事部の視点から解説します。
深く考える時間と寝かせる時間で思考の質は一段上がる
考えることに飽きるまでやり込む
アイデアや解決策を深めたいと考えるとき、多くの人は短時間で答えを出そうとします。ですが、深い課題理解や新しい発想は、短距離走では到達できません。一定の負荷をかけて考え続ける時間が必要です。フレームワークを使って思考の角度を変えたり、視点を分解したり、問いを掘り下げたりするプロセスを繰り返すことで、思考の量が質に転化していきます。これは、やり切った、もうこれ以上は何も絞り出せないと思えるまで取り組むことで初めて起こる変化です。
言い換えると、一定の量をこなさないことには質は上がらないのです。思考することそのもの以外の業務においても、タイパ・コスパだけを判断軸に取り組んでいては、その質は高まりません。人材育成では、短時間で最適解にたどり着くアウトプットを求めすぎず、深く考える時間そのものを業務として認める姿勢が重要になります。
形になったと思ったら一度寝かす
考え抜いて形が見えてきたら、あえて作業を止めることが重要です。完成したと思える状態は、実は視野が狭くなっている可能性があります。ひとまず手を離し、時間を置くことで客観的に見直せるようになります。この「寝かせる」プロセスは、頭が意識していないところで情報を統合する効果があり、次の発想の出発点を整える役割を果たします。集中とクールダウンの切り替えが思考の質を高めます。
環境変化による外部刺激で新しいアイデアが生まれる
4Bでアイデアが突然生まれる仕組み~偶発性の場
Bathroom・Bus・Bed・Barといった場所でふとアイデアが思いつくことはよくあります。これは、環境が変わり、頭が緩むことで、脳が無意識に情報を組み合わせ始めるためです。深く考えた後に発散の時間を取ることで、頭が固定観念から離れ、新しいつながりを生み出します。アイデアが突然生まれたように感じるのは、思考の蓄積が引き金になっているためです。組織としては、この発散の時間を無駄と捉えず、価値あるプロセスと認識することが重要です。
全く違う刺激を受けることで発想が変わる
人は同じ環境に長くいると、視野が無意識に狭くなっていきます。新しい場所で過ごしたり、異なる分野の情報に触れたり、普段とは違う人と会話することで、外部からの刺激が思考を揺り動かします。研修や他部署との交流、フィールドワークのような外部接点は、発散を起こしやすい土壌づくりにつながります。これは、ブレイクスルー人材の育成に欠かせない視点です。
発散と収束を繰り返すことで突破口が生まれる
再び収束させて磨き上げる
環境を変えてひらめきが生まれた後は、再度集中モードに入り、アイデアを現実的な施策に落とし込む必要があります。ここでは、最初に行ったような思考の負荷をもう一度かけ、精度を高めていきます。発散で得られた断片的な考えを組み合わせたり、優先順位を付けながら実行可能性を検討したりする段階です。重要なのは、思いつきをそのまま提案にせず、収束のプロセスを経て組織にとって価値ある形に仕上げる点です。
発散と収束のバランスを人事部が設計する
個人に任せていると、発散ばかりになったり、逆に思考が硬直して収束だけに偏ったりしがちです。人事部は、両者をバランス良く経験させる機会をつくることが求められます。例えば、前半はテーマについて深く考えるセッション、後半は刺激を受けるための他流試合や異分野ワークショップを用意するなど、思考サイクルをプログラムとして組み込む方法があります。個人差はありますが、思考の発散と収束はセットで行うことで初めて成果につながるため、人材育成の設計段階で明確に位置づけることが必要です。
人事部が実践できるブレイクスルー人材育成のサイクル
深く考える訓練を制度として組み込む
短期的なアウトプットばかり求めると、社員は表面的な回答しか出せなくなります。考えることそのものを評価する仕組みを導入することで、思考の厚みを育てられます。課題に取り組んだプロセスを提出させたり、フレームワークを使った思考の記録を残したりすることは、思考量の可視化につながります。
発散の機会をつくる制度を整える
異業種交流、ジョブローテーション、社外イベント参加などは、外の刺激を受ける場として効果的です。一見業務と関係の薄いように見えても、発想力を広げる重要な投資となります。発散の時間を許容する文化が定着すると、新しい提案が生まれやすくなり、組織全体の創造性が高まります。
サイクルを回す伴走者を育成する
マネジャーが思考プロセスを理解していないと、部下の発散や深掘りの時間を不必要に制限してしまうことがあります。発想を評価する視点や思考サイクルの見立て方を学ぶ機会を提供し、育成の水準をそろえることが必要です。人事部が伴走者を増やすことで、現場に浸透するスピードが大きく変わります。
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