株式会社インソース総合研究所

ビジネス書を仕事に活かす読書の方法。読んで終わりにしない実践的読書術

「忙しくてビジネス書を読む時間がない」「本を読んでも実際の仕事に活かせていない」「どのビジネス書を読めばいいのかわからない」

多くのビジネスパーソンが抱えるこうした悩みの背景には、読書に対する誤解があります。実は、読書ほどパフォーマンスの高い自己投資はありません。株式や不動産のように失敗するリスクがなく、学んだ知識や思考は必ず自分の中に残るからです。

本コラムでは、ビジネス書の効果的な読み方と実務で成果を出すための読書術について解説します。

ビジネス書を読むメリット~読書は元本割れしない投資

読書は「元本割れしない投資」です。株式や不動産投資と違って、失敗するリスクがないためです。学んだ知識や思考は減ることがなく必ず自分の中に蓄積され、それが後の判断や行動の質を向上させます。

勉強を通した知的な成長は、お金を生み出すためだけのものではありません。興味のあるビジネス書からの学びは、人生を豊かにし、仕事をより良く変えていく価値を生み出します。時間やお金を投資して得た知識は、誰にも奪われることのない、あなただけの財産となるのです。

そして、経営者や管理職にとって、読書は継続的なスキルアップと経営判断力の向上につながる重要な習慣です。長年かけて蓄積した知識は、様々な状況で意思決定を助けます。

そもそもビジネス書とは何か~先人の社会貢献の想いが集まった公共財

ビジネス書は、経営者や実務家、研究者といった専門家が、自らの経験や理論を他者に役立てようとしてまとめた知恵の共有物です。理論的な枠組みを整理する本もあれば、現場での試行錯誤を赤裸々に語る経営者の実体験本もあります。

その多くは「自分の学びを世の中に伝え、社会をより良くしたい」という思いから生まれています。著者たちの社会貢献への想いが詰まったこれらの知識を受け取らない手はありません。

特に経営者が執筆したビジネス書には、表面的な成功・失敗のモデルだけでなく、全力で経営を推進してきた熱意や、現場での葛藤、意思決定のリアルなプロセスが込められています。現場でしか感じられない貴重な情報を疑似的に体験できる大きな価値があります。

なぜ経営者こそビジネス書を読むべきか~書籍の学びが未来を切り拓く糧となる

読書の効果は、読むこと自体にあるのではなく、実務にどう活かすかにあります。具体的には次の効果が期待できます。

書籍から期待できる具体的効果

  • 発想の幅を広げる
    新しい知識を得ることで、これまでの発想を超えた思考が可能になります。
  • 課題を整理し、意思決定の質を高める
    フレームワークを学ぶことで、問題を構造化して解決策を導き出せます。
  • 判断や発言に厚みを持たせる
    他者の成功や失敗を疑似体験することで、自分の判断に厚みを加えられます。

特に経営者や経営幹部は、自ら道を切り拓かなければならない孤独な意思決定のシーンが多い役職です。そのような時に、助言者としてのビジネス書は、相談相手や人脈と同等、あるいはそれ以上に貴重な存在になり得ます。

多くの経営者が積極的に読書をしているのも、このような理由からです。例えば星野リゾートの星野社長などは、読書家として知られており、そのような経営者は得た知識をビジネスに活かす変換力に長けていると考えられます。

一般的なビジネスパーソンが自分の業務に近いものを読むのに対し、経営者は他の事例から自分の業務に生かす想像力と応用力を発揮します。こうした変換力こそが、経営者に求められる重要なスキルの一つと言えるでしょう。

ビジネス書を効果的に読む、3つの読み方と5つの視点

ビジネス書の効果を最大化するには、まず、多読よりも一冊の良書を深く読むことが重要です。

例えば、東大受験生は世界史の勉強で一冊の教科書を何度も繰り返し、多面的に読み込み、因果関係や背景、他教科とのつながりまで掘り下げると言われます。ビジネス書においても同様のことが言えます。

書籍の学びを深める「3つの読み方」

  1. 反復読書
    一冊の良書を繰り返し多面的に読むことです。一つのビジネス書を取っても、戦略の観点、リーダーシップの観点、組織文化の観点など、読む視点を変えることで新たな気づきを得ることができます。
  2. 関連調査読書
    調べながら読み、関連する他の本や事例と接続することです。一つの理論や事例を起点に、関連する情報を調べることで理解が深まります。
  3. 対話型読書
    読書会や社内共有の場を持つことです。一人では気づかない視点を他者から得ることで、複眼的な思考力を養うことができます。

書籍を多面的に読む「5つの視点」

  1. 著者の主張を理解する視点
    まずは書かれている理論やストーリーをそのまま理解します。一度読んだだけで到達できるのは、この段階までであることが多いでしょう。
  2. 時代背景・歴史的文脈から見る視点
    なぜその本が書かれたのか。当時の社会や経営環境を踏まえて考えます。本は著者の思いが込められた産物であり、その背景を理解することで内容をより深く読み解けます。
  3. 実務への応用視点
    自分の業務や経営の現場に当てはめ、どのように活かせるかを考えます。読書を自分ごとに引き寄せることで、知識が実践的な力へと変わり、未来への展開も描けるようになります。
  4. 他者の読み込んだ視点を理解する
    他の読者や専門家がどう解釈しているかを知ることで、自分の理解が補強され、新たな気づきが得られます。結果として、本の内容はより多面的な知識へと昇華されます。
  5. 批判的に検討する視点
    他の理論や著作と比較し、その本の限界や弱点を見抜くことです。研究者や実務家は、この批判的読書を通じて新しい理論や実践を発展させています。

ビジネス書の選び方~読みたい本から無理なく始める

ビジネス書には実務に直結するさまざまなジャンルがあります。まずは「読みたい」と思う本から無理なく始めることが大切です。様々な本を読んでいるうちに、興味の範囲、そして、読みたい本の範囲も広がっていきます。

  • 経営者・実務家の経験談(現場の葛藤や意思決定の臨場感に学ぶ)
  • 経営学・組織論の理論書(理論的な裏付けを得て思考を整理)
  • リーダーシップやマネジメント本(人材育成や組織運営に直結)
  • マーケティングやイノベーション本(市場創造の視点を得る)
  • 働き方・キャリア系(自己啓発・時間管理・キャリア形成)
  • 時事・トレンド解説(DX・AI・人的資本経営など旬のテーマ)

本の要約や紹介サービスも、興味のある本に出会いやすくなる習慣づくりにおすすめです。

flier(要約アプリ・音声対応)やTOPPOINT(新刊ビジネス書の要約)などの情報源から、「今、話題の本」を拾い、面白そうと思う本を手に取ってみると良いでしょう。

ビジネス書の学びを実務に活かす方法~アウトプットを楽しむ

ビジネス書は読んだだけでは「面白かった」に留まり、学習効果は薄くなってしまいます。インプットだけでなく、いかにアウトプットの行動を起こすかが重要です。

アウトプットの具体的な方法

  • 即座にメモをする
    読後すぐに「学び・自分の仕事への活用・次の行動」を短くメモすることから始めましょう。
  • 他者に学びを共有する
    同僚や部下にこんな本を読んだと、自分の言葉で語ってみることも大切です。
  • 小さな実践を意識する
    日常業務や日々の判断において小さく試してみることで、学びを深めることができます。

アウトプットを意識して、ブログに読書レポートを書く人もいます。こういったことが難しい場合でも、まずは抜き書きやメモをしたり、周囲に共有したりする簡単なアウトプットからであれば始められる方も多いと思います。この繰り返しにより、ただ読書をする以上に大きな学びが得られていることに気付けるようになるでしょう。

実務に活かせるインソースの「名著から学ぶ」シリーズ

ここまで述べてきた「深く読むこと」の価値を実現するのが、インソースの「名著から学ぶ」シリーズです。

このプログラムでは、バーニーの「企業戦略論」、「トヨタ生産方式」、「真実の瞬間」など、一冊の良書にサブテキストを加えて多面的に読み、さらに、講師による解説・フィードバックと参加者同士の対話を通じて深い学びを得ることができます。また、実務への応用やアウトプットまでを意識した演習課題によって、これらを実践的に習得するところまでを一気通貫で体感できるプログラムです。

この、熟読・講義・グループワークのサイクルが、まさに「投資対効果の高い勉強」であり、参加者の仕事や人生をより良く変えていく貴重な機会となります。一人では挫折しがちな深い読書も、研修という枠組みの中で仲間と一緒に取り組むことで、継続的な学習習慣を身につけることができます。

以下の記事も併せてご覧ください。

経営戦略を学べる3つの名著をご紹介~古典的理論で次世代リーダーの変革力を鍛える

なぜ今、名著を読むべきか。古典的理論を現代に応用し、現場の仕事に直結させるための「書籍の多面的な読み方」と、これらを効率的に学ぶ研修手法を解説します。経営戦略を学べる3つの名著を通じて、次世代リーダーに必要な変革力を養います。

本コラムでご紹介した3つの名著

【新版】企業戦略論(全3巻)

企業戦略論(全3巻)

経営戦略を体系的に学べる書籍です。海外の書籍を訳したもので、また書籍も厚いため自学で学ぶには難しいかもしれませんが、じっくりと読むだけの価値があります。以下の研修は、中巻や下巻など、ご興味や課題にあわせて、どこからでも学び始められる構成としています。

>【名著から学ぶ】経営戦略研修のまとめページはこちら

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして―

トヨタ生産方式

トヨタ生産方式を知りたい方に、是非読んで欲しい書籍です。製造業の方々だけでなく、IT業界やサービス業界の方々にもおすすめです。カイゼンのテクニックだけではなく、時代背景やこれを推進したリーダーの熱い思いを深く理解することができます。

><名著から学ぶ>業務改善研修~カイゼンの本質を知り、
仕事の効率と安全性を高める『トヨタ生産方式』

真実の瞬間―SASのサービス戦略はなぜ成功したか―

真実の瞬間

サービス業の方、BtoCの事業を行っている方には特に読んで欲しい書籍です。「お客さま第一」という言葉を現場で聞くことが多いかと思いますが、その本質と、そういった組織への変革・風土醸成など、経営レベルでこの言葉について深く考えることができます。

顧客サービスを製品本位から顧客本位へ変革する時代を創った、ヤン・カールソンの経営哲学・経営手腕を学ぶことが出来ます。

><名著から学ぶ>リーダーシップ研修~顧客と現場を軸にして、
組織の価値を高める『真実の瞬間』

セットでおすすめの研修・サービス

神戸大学MBA教授陣に学ぶ~経営学の実践知【インソース×RIAMビジネススクール】

神戸大学MBA教授陣に学ぶ~経営学の実践知

このプログラムは、経営学の幅広い分野を体系的に学びながら、自社や自身の役割に引き寄せて考えることを促します。

教授陣からの直接のフィードバックや他の受講者との議論を通じて、学びを現場に持ち帰り、組織に浸透させることで、次世代リーダーの育成や企業全体の成長力強化につながるのが大きな魅力です。経営視点を磨き、組織の未来を切り拓く一歩として、本プログラムをぜひご活用ください。

30~40代のリーダー層・管理職の方だけでなく、部長・役員クラスの方から、20代後半の次世代リーダーを目指す意欲溢れる方まで、幅広くご参加をお待ちしております。

>神戸大学MBA教授陣に学ぶ~経営学の実践知の詳細はこちら

戦略の学び方研修~次世代リーダーの参謀力を高める戦略的視点

戦略の学び方研修

組織の中核人材や次世代リーダーに求められる、「未来を創るための戦略的視点」をどのように身につけていくかを学ぶプログラムです。戦略の知識やスキルは、ビジネスにおいて極めて重要な要素である一方で、「何から学べばよいのか分からない」「すぐに身につくものではない」と感じる方も多いのが実情です。

研修では、戦略はなぜ難しいと感じるのか、戦略はどのような場面で活きてくるのか、そもそも戦略とは何か、といった疑問に一つひとつ向き合いながら、これから戦略を学び、実務で活かしていくための「思考と学びの軸」を作っていくことを目指しています。これから戦略を学ぼうとする方、また基本から学び直しをしたい方などに、おすすめの研修です。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

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